日経新聞 保険・年金・税金「還付申告、こんな人も該当」=年の途中退職/調整後に結婚/ローンを利用して自宅を取得・増改築=

2018年01月17日 03時56分27秒 | 保険・年金・税金
日経新聞 2018年1月13日(土) P.20 マネー&インベストメント面
『基本がわかるM&I』

『還付申告、こんな人も該当』=年の途中退職/調整後に結婚=

 会社員など確定申告する必要がない人でも、確定申告をすることによって払い過ぎた税金が戻ってくる場合がある。

これを「還付申告」という。


例年2月16日から3月15日に行われる通常の確定申告と違い、還付申告は1月1日に始まっている。

期間は5年間あるが、該当する人は税務署が混雑する前に準備をして申告を済ませたい。


 1年間のすべての所得を計算して申告し、納税する所得税額を確定させる確定申告

翌年にならないと前年の稼ぎが正確に把握できないため、確定申告は毎年2月中旬から受付が始まる。

今年の申告書の受付期間は2月16日から3月15日。
ここで2017年分(2017年1月1日~12月31日まで)の所得を申告する。

 ただ会社員、公務員は通常収入が月々の給料やボーナスに限られるので年の終わりには所得が見通せる。

給料から所得税が源泉徴収(天引き)されているが、源泉徴収額は概算なので「多くの場合、納め過ぎになっている」(ランドマーク税理士法人の清田幸弘代表税理士)。

 そこで年末に勤務先に書類を提出し、生命保険料控除などを反映した税額を計算し直すのが「年末調整」だ。

これで納め過ぎた税金が還付される。

還付申告とは年末調整に間に合わなかったり、年末調整ではできない所得控除を申告する手続きのことを指す。

「子の国民年金も」
 まず対象になるのは年末調整ができなかった人。

税理士の藤曲武美氏は「前年の途中で退職して再就職しなかったケースが代表的」と指摘する。

退職した会社での源泉税が納め過ぎになっており、生命保険料控除などを申告すれば税金が戻ってくる。

 退職金の支払いを受けるときに「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない人も該当する。

申告書を出さなかった人は退職金から税率20.42%で源泉徴収されているが、これは退職所得控除を差し引いて計算する本来の税額よりも多い。
 
 年末調整に反映できなかった控除も還付申告をしたい。

代表例は年末調整後に結婚したり大学生の子どもの国民年金保険料を支払ったりした場合、それぞれ配偶者控除、社会保険料控除を受けられる。

 年末調整では受けられず、確定申告が必要な控除がある場合も早めに還付申告しよう。

医療費控除や災害などで自宅や家財に損害を受けた人が受けられる雑損控除などの対象者だ。

住宅ローンで自宅を購入した時の住宅ローン控除も、初めての年は申告をしないと受けられない。

「投資売却損も対象」
 証券会社の特定口座で株式、投資信託などに投資し売却損が出た人も、申告分離課税を選択して還付申告をすれば税金が戻る場合がある。

別の口座で運用する株式の配当や投資信託の分配金、売却益から売却損を差し引き「損益通算」をすれば、納め過ぎの源泉税が還付される。

 還付申告の際には還付の原資となる源泉税を正確に申告するため、勤務先の源泉徴収票を用意しよう。

1月中には手に入るはずだ。
住宅ローン控除を申告するには残高証明等の書類が必要になる。

 受けたい控除の要件も確認しておこう。

年末調整後に結婚したとしても、「17年の配偶者給付収入が103万円を超えていれば配偶者控除は受けられない」(藤曲氏)。

 注意したいのはふるさと納税でワンストップ特例制度を使った人だ。

控除を受けるために17年分所得について還付申告したら、17年のワンストップ特例は無効になるので、還付申告の際にふるさと納税の寄付金控除も忘れず記入しよう。

▼還付申告の代表的なケース

・年の途中で退職し、年末調整を受けていない=(還付申告できる控除)生命保険料控除など

・退職の際に「退職所得受給に関する申告書」を出していない= 退職所得控除

・年末調整の後で結婚した= 配偶者控除

・年末調整の後で子どもの国民年金保険料を支払った= 社会保険料控除
・住宅ローンを利用して自宅を取得・増改築した= 住宅ローン控除

・年間10万円を超えるなどの多額の医療費を払った= 医療費控除
・災害などで自宅や家財に損害を受けた= 雑損控除

▼還付申告の際は忘れずに
①勤務先などから「源泉徴収票」をもらう

②住宅ローンの残高証明書などをそろえる
③所得控除の適用要件を確認

④ワンストップ特例を使った「ふるさと納税」を記載
⑤マイナンバーを記入

(M&I編集長 後藤直久)


●関連日経記事:2016年9月6日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 保険・年金・税金「個人型確定拠出年金(DC) 節税に活用」=家計の状況で掛け金を調整=』(2016年8月31日付)

◆父さんコメント:
 退職後に社会勉強のつもりで確定申告をし始めた。

普段から「税に関係する書類」は机の決まった場所に保管している「還付申告封筒」に放り込むクセをつけておく。

郵送されてくるあやしい書類は何でも迷わずに「還付申告封筒」に放り込んでおく。
それらの資料を毎年1月末に「所得」「保険」「税支払い」などの項目ごとに分けて整理する。

2月16日以前の税務署が混む前にそれらの資料をすべて持参して税務署に「税務相談」に行く。

混んでなければ税務署員は非常に親切で、必要な資料や節税の方法を説明・アドバイスしてくれる。

持参した書類をすべて確認して、「対象」「対象外」に区分してくれ、理由を聞けば「なぜ対象外か」も教えてくれる。

毎年e-taxで確定申告をしているが、実際は税務署員がほとんど同署に備えたパソコンで打ち込んでくれる親切さだ。

大事なのは、申告が終了したらその日のうちに、税務署員から教えてもらったアドバイスを整理しておき、来年の確定申告の資料整理の参考になるよう準備しておくことだ。

確定申告すればまず数万円の還付があるので面倒くさがらずに税務署に行くようにしよう。

合法的な節税は税に詳しい税務署員に相談すれば親切にアドバイスしてくれることを知っておこう。

市の市民税・住民税課なども相談に乗ってくれる。

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日経新聞 保険・年金・税金「米、自然災害の被害額最高」=昨年34兆円=

2018年01月15日 09時34分24秒 | 保険・年金・税金
日経新聞 2018年1月10日(水) P.8 国際1面
『米、自然災害の被害額最高』=昨年34兆円=

『ハリケーン相次ぐ』

 米海洋大気局(NOAA)は8日、2017年に米国内で起きた自然災害による被害総額は3060億ドル(約34兆6000億円)に達し、過去最高だったと発表した。

南部に複数の大型ハリケーンが上陸し、西部では乾燥による山火事が広がったことが主因。

18年も年明けから東部を大寒波が襲い、自然災害が市民生活や経済に与える影響が深刻化している。

 17年8月下旬~9月に、大型ハリケーンの「ハービー」「イルマ」「マリア」が相次いで米南部を直撃し、洪水被害が広がった。

251人の犠牲者を出したほか、全米有数の石油産業の集積地が暴風雨に見舞われ、ビジネスへの影響も目立った。

年間の被害総額のうち9割弱にあたる2650億ドルがハリケーンによるものだった。

 西海岸のカリフォルニア州では、10月以降大規模な山火事が相次いで起きた。
NOAAによる被害額は180億ドル、死者は54人にのぼった。

ワイン産地のナパ・ソノマ地区でも大きな山火事が起きた。
NOAAは自然災害の増加と地球温暖化の関係について、コメントは避けた。

 度重なる自然災害は、保険業界に大きな打撃を与えた。

ミュンヘン再保険によると、業界全体の保険損失額は1350億ドルで、1980年以降で過去最高となった。

米保険会社のAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)やメットライフではハリケーンによる保険金支払いが増え、17年7~9月期決算の損益が赤字に陥った。

 18年は年明け早々に米中西部と東部が大寒波に襲われ、複数の死者が出た。
鉄道や航空便にも大きな影響が出て、米インフラの老朽化が改めて浮き彫りになった。

 ハーバード大学のジェームズ・マッカーシー教授らのグル-プは「異常気象による経済的な損失は急速に増えている」と指摘している。

米トランプ政権はこのほど決まった税制改革と並んで、大規模なインフラへの投資を掲げているが、政策実現への具体的な進展はまだみえていない。

(ニューヨーク=平野麻理子記者)


●関連日経記事
:2016年2月9日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 保険・年金・税金「大災害債 マネー流入」=分散投資の受け皿、株と連動性低く=』(2016年2月8日付)

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日経新聞 保険・年金・税金「今年 パート妻働きやすく」=高齢者に負担/投資は選択肢増=

2018年01月11日 07時46分10秒 | 保険・年金・税金
日経新聞 2018年1月6日(土) P.18 マネー&インベストメント面
『今年 パート妻働きやすく』=高齢者負担/投資は選択肢増=

 2018年も家計をめぐる税制や社会保障などの制度改正は少なくない。
配偶者控除の見直しで会社員のパート妻らが働きやすくなるが、高所得層は増税。

保険財政が厳しい医療と介護は一部の高齢者の自己負担がさらに重くなる。
家計への影響が大きい制度改正のポイントをまとめた。


『高所得層は増税』

 会社員の妻がパートで働く場合、17年までは「年収103万円の壁」があり、これを超えると夫の配偶者控除が減らされた。

18年からは妻の年収が150万円までなら夫は上限いっぱい38万円の配偶者控除が認められる。

 ただし、夫の年収が1220万円超だと18年からは控除がゼロになってしまう。

このほか、妻の年収や勤務先の規模などによっては夫の被扶養者でなくなるので手取り収入はむしろ減る場合がある。

 雇用保険では、資格取得などを目指す人に支給される「教育訓練給付金」が手厚くなった。

看護師、社会福祉士といった資格取得のために専門学校などで学ぶ人に受講費用の50%を支給する。


18年以降に受講を始める人が対象で、支給率は昨年までに比べて10%上がった。
資格を取得するとさらに20%上乗せされる。

 同給付金は出産や子育てを経て再就職したい人にも門戸を大きく広げた。
離職してから最長4年だった対象者を同20年までに拡大。

大学が開講する「職業実践力育成プログラム」などを受講するきっかけになりそうだ。

『高額療養に3区分』

 医療と介護では8月から一部の保険給付が削減になる。

まず医療費の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」で、70歳以上で年収が約370万円以上ある「現役並み」の人が3つのグループに分かれ、年収の上位2グループの上限が引き上げられる。

 現役並みの人は現在、月の自己負担が8万100円を一定程度超えると同制度の対象になる。

これを年収約770万~1160万円のグループは月16万7400円、年収約1160万円以上のグループは月25万2600円に改める。

外来診療のみの自己負担の助言の特例は現役並みの人については廃止になる。

 介護保険は一部の高所得者の自己負担が2割から3割に上がる。
年金収入のみの単身者は年収344万円以上が対象だ。

介護保険サービス利用者の3%に影響が出そうだ。

 医療と介護の1年間の自己負担を合算して負担上限を決めている「高額介護合算療養費制度」も、70歳以上の高所得者への給付が削減される。

これまで自己負担の上限は年67万円だったが、年収770万~1160万円は141万円、同1160万円以上は212万円に上がる。

 給付削減をしても保険財政は厳しい。

日本総合研究所の飛田英子主任研究員は「制度の抜本改革がない限り、現役世代の保険料負担がさらに重くなるのは確実」とみる。

 投資税制では、低コストの投資信託などに毎月積み立て投資する「つみたてNISA(小額投資非課税制度)」が始まった。

非課税の投資枠を年間40万円と一般NISAの3分の1に抑える一方、非課税期間は4倍の20年とする。

 一般の住宅に旅行者を有料で宿泊させる「民泊」サービスは6月施行の住宅宿泊事業法で法律的な枠組みが整う。

年間営業日数は180日が上限。

自治体が条例でさらに規制する動きも出ているが、観光ニーズの大きい地域では、自宅の一部や相続した空き家などを民泊に転用する人が出てきそうだ。

▼2018年の家計をめぐる主な制度改正

『働い方』
・配偶者控除の見直し(1月)
 配偶者の年収上限が上がりパート主婦らが働きやすくなる。 納税者本人が高所得なら増税に

・教育訓練給付金の充実(1月)

 専門資格を取得するコースの支給率が50%に。 子育て後に再就職しやすいよう支給対象を広げる

『医療・介護』
・国民健康保険の運営主体が都道府県に(4月)
 市町村ごとに異なる保険料を統一する動きも

・高額療養費制度の上限額引き上げ(8月)
 70歳以上で現役並み所得の人は自己負担の上限額が上がる。 年収約1160万円以上は約3倍に

・介護保険の高所得者の負担増(8月)

 現役並み所得のサービス利用者の自己負担を3割引き上げ。 約12万人が対象

『資産運用・金融商品』
・つみたてNISA開始(1月)
 年間40万円を上限に低コストの投資信託に積み立て投資する。 一般NISAとどちらか一方を選択

・「標準生命表」11年ぶり改定(4月)
 生命保険の保険料の計算に影響。 定期死亡保険などの新規契約は保険料が下がる見通し

・一般NISA、初めての非課税期限(12月)
 売却するか、課税口座または翌年の一般NISAの枠に移し替える

『住まい』
・中古住宅売買で建物状況調査の情報を提供(4月)
 仲介会社が建物状況調査(インスペクション)業者のあっせんや、調査結果について買い主らに情報提供

・住宅宿泊事業法施行
 民泊の年間営業日数は180日が上限。 宿泊者名簿の作成などを義務づけ

(表悟志記者)


●関連日経記事:2018年1月9日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 開発『「戻っておいでよ!」 柔軟な復職 活力生む』=ここ掘れ! 「ニッポンの眠れる宝」=』(1月5日付)

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日経新聞 保険・年金・税金『フェイスブック 「課税逃れ」批判で納税手法を「国別処理」に変更』=EU、多国籍IT企業を締め付け強化=

2017年12月22日 00時57分05秒 | 保険・年金・税金
日経新聞 2017年12月14日(木) P.8 国際1面
『フェイスブック「課税逃れ」批判で』

『低税率国に納税 見直し』=国別処理へ=

 交流サイト(SNS)大手の米フェイスブックは12日、税率の低いアイルランドの法人で一括処理している納税手法を変更し、今後は売上高を得た国でそれぞれ税金を支払うと発表した。

欧州を中心に「課税逃れ」との指摘が出ているためで、規模拡大とともに高まるIT(情報技術)企業への反発感情に配慮したものとみられる。

(前・中段略)

 フェイスブックは7~9月期決算の売上高が103億1800万ドルと四半期ベースで初めて100億ドルの大台を超えた。

売上高のうち98%は広告収入が占める。

「今後フェイスブックは各国で生じた知的財産使用料を費用計上する」(ウォール・ストリート・ジャーナル)との指摘もあり、実際に納税額が増えるかどうかについては不透明さが残る。

 フェイスブックの売上高の地域別内訳は米国・カナダが49%を占め、欧州24%、アジア・太平洋17%と続く。

内訳の詳細は開示していないが、ファクトセットによると北米以外では日本やドイツ、英国での売り上げが多い模様だ。

同社の課税姿勢への風当たりは特に欧州で強く、実態に見合った納税をしていないとしてイタリアやフランスで批判が強い。

英国では14年にわずか4327ポンドしか税金を払っていなかったことが判明して社会問題になった。

16年にアイルランド法人から英国法人を通じて税金を支払うように改め、510万ポンドを納税した。

(ロサンゼルス=中西豊紀記者)


『EU、取り締まり強化』=多国籍で稼ぐIT企業=
 米フェイスブックが法人税の納税手法の見直しを表明した背景には欧州連合(EU)の動きがある。

経済の「デジタル化」で従来の国際課税ルールが揺らぐなか、EUはグローバルに活動する多国籍企業による「課税逃れ」の取り締まり強化や課税ルール見直しを加速させている。

 EUの執行機関である欧州委員会は10月、米アマゾン・ドット・コムに最大2.5億ユーロ(約330億円)の「違法」な税の優遇を与えていたとしてルクセンブルク当局に追徴課税を指示。

16年には米アップルを巡ってもアイルランド政府に巨額の追徴課税を求めた。

 グローバルで巨大なIT(情報技術)企業などはどこで収益を稼いでいるのか特定が難しく、税率の低い国で納税処理を一括して”節税”するケースも少なくない。

一方、そうした企業に国内市場を席巻されているのに法人税は納められていない国々では「課税逃れ」との不満が強い。

EUが課税逃れの取り締まりを強める背景となっている。

 国際的には経済協力開発機構(OECD)などを舞台に、課税逃れを防ぎ、実際に収益を生み出した場所で課税するための新たなルールづくりの模索も進む。

ただ、国際ルールの見直しは時間がかかるため、EU内ではフランスなどがEU独自の「応急措置」の要求。

課税対象を利益から各国の売上高に一時的に切り替えて課税する案などが議論されている。

(ブリュッセル=森本学記者)


●関連日経記事:2017年11月28日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 海外メディア「米にネット広告規制法を」=英FT・コラムニスト ラナ・フォルーハー氏=』(11月26日付)

●関連日経記事:2014年4月18日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 国際「スタバ欧州本社、英に移転」=課税逃れ批判対応=』(2014年4月17日付)

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日経新聞 保険・年金・税金「不都合な現実 今こそ直視」=「砂上の安心網」 2030年への責任 ④=

2017年12月14日 14時11分22秒 | 保険・年金・税金
日経新聞 2017年12月8日(金) P.1  
特集連載『砂上の安心網』=2030年への責任 ④=

『痛みは分かち合うもの』=不都合な現実 今こそ直視=

 日本の未来を探るため、取材班がこだわってきた地域がある。

人口当たりの病院や病床数、医療費が常に上位に入る高知市。
街を歩いて病院やクリニックの看板を数えるとすぐ両手に余る。

「病院が介護施設などの代わりをしていた」と岡崎誠也市長。

高齢化が全国平均の10年先を行くのに、介護で済む人を入院させていれば、医療費がどんどん膨らむのは自明だ。

『病院に変化も』
 高知の手ぬるい医療財政が破綻(はたん)を免れるのは公的保険という大きな器の一部にすぎないからだ。

だが足元で変化が始まっている。

 「病院は機能の向上を求められるようになった。 さもなくば淘汰だ」。
JR高知駅前に病院を展開する近森会の近森正幸理事長は神妙に語った。

医療保険の配分ルールがじわりと厳しくなり、治療の必要の乏しい長期入院は認められにくくなった。

業態転換を余儀なくされる病院があり、退院を促される高齢者がいる。
許されていた甘えが少しずつ通用しなくなってきた。

 では、今の高知のように日本全体で3人に1人が高齢者になると何が起きるのか。
団塊の世代が80代になる2030年の試算が衝撃を告げる。

年金や医療、介護の隠れた債務はおよそ2000兆円。
国が抱える1000兆円の借金の2倍もの負担が将来世代にのしかかる。

人類が経験したことのなり状況を迎える。

 厳しい未来予想図を前に、私たちは今どうすべきだろう。
取材班はヒントを求めてこの1年以上、現場を歩いてきた。

話を聞いたのは有識者から公務員、年金受給者や高校生まで延べ数百人。
ほとんどの人たちと「このままでは持たない」という思いを共有した。

『刻々と財政悪化』
 今必要なのは世代や立場を超えた痛みの分担だ。

公的サービスである「公助」の領域が小さくなり、不便を感じる人も出てくるはずだ。

その分皆が自己責任の「自助」に努め、周囲が手を差し伸べ合う「共助」を広げる地道な取り組みが求められている。

ところが目の前の政治には厳しい未来への責任が感じられない。
高齢者に偏る社会保障を全世代に広げるという掛け声で進むのは保育所や幼稚園の無償化。

2兆円もの税金を使って公的サービスの範囲を広げる。

 03~04年に厚生労働次官を務めた大塚義春氏が今日と似た風景に接したのは若手官僚だった1970年代。

老人医療費が無料化された。

「医療費が大爆発し財政が大変なことになった。 30年余りの仕事の大部分は高齢化対策だった」。

退官から13年、財政は今も刻々と厳しさを増す。

 医療と介護、生活保護や福祉。
安心網の柱をなす諸制度が2018年春から同時に改まる。

一斉点検は30年に1度しか来ない。
不都合な現実から目をそらさず、厳しい選択に向き合う。

私たち一人ひとりがそう思うところから始めるしかない。

(おわり)


●関連日経記事:2017年12月11日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 保険・年金・税金『「自助ありき」綻び繕う=「砂上の安心網」 20130年への責任 ②=』』(12月6日付)

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日経新聞 保険・年金・税金『「自助ありき」綻び繕う=「砂上の安心網」 20130年への責任 ②=』

2017年12月11日 12時04分21秒 | 保険・年金・税金
日経新聞 2017年12月6日(水) P.1  
特集連載『砂上の安心網』=2030年への責任 ②=

『甘やかされた時代を卒業』=自助ありき=

 あまりにも簡単に援助が得られませんか。

お金がかかりすぎませんか。
社会が整えたもので私たちは過度に甘やかされていませんか。

 スウェーデンの中学教科書「あなた自身の社会」(邦題)。
社会保障の章にある問いかけだ。

福祉国家のこの国は経済活力をそがぬよう社会保障給付の一部を制限する厳しい顔も持つ。

 取材班は感じた。

スウェーデンの子どもたちへのこの問題提起は、社会保障費が膨張する日本でこそ、議論すべきなのでは?

『健康「大使」育む』
 戦後間もない1950年。

社会保障制度の出発点となった文書が吉田茂首相に渡された。
社会保障制度審議会がまとめた勧告だ。

 自ら働き生活を支え、健康を維持する「自助」を基本に、高齢や病気などのリスクは「共助」で支える。

それでも対応できない貧困などは「公助」がカバーする。
社会保障の魂は、まず自助ありきの精神だった。

 67年後の今、現場ではこの原点が移ろいでいる。
大病院への安易な受診を抑えるため、紹介状なしで受診すると定額負担を求める制度。


2016年に義務化したが半年後の調査では紹介状なしの患者数は微減にとどまった、
14%の病院が患者の同意が得られず負担金を徴収できなかった。

 福祉元年・1973年の老人医療費無料化を機に、社会保障は拡充と膨張を続けた。

大盤振る舞いを支えた高度成長と人口増加はとうに終わりを告げたのに、私たちの意識は公助への適度な依存から抜き切れていないのではないか。

 社会保障制度が危機にある今、原点に立ち返り、自助を育む。
そんな「応援団」が登場したと聞き、新潟県見附市を訪ねた。

 同市の見立てでは市民の65%は健康に無関心。
そこでボランティア「健康アドバイザー(大使)」の養成を始めた。

「筋肉は40代から年に1%ずつ減るわよ」。

健康づくりの大切さを口コミで広めてもらい、市内の運動相談拠点「健康スポーツ駅」に誘導。

運動に無関心な層を掘り起こす。

『年10万円の差』

 筑波大大学院の久野譜也教授によると、健康づくりをするしないで医療費に年約10万円の差が出る。

仮に500万人が健康増進に励めば医療費を5千億円削れる計算だ。
国が財政健全化のため社会保障費の伸びを抑える目安額に相当する。

 4月に連載で紹介した秋田県八峰町の伊勢キミエさん(90)。
特別養護老人ホーム「海光苑」で努力を重ね、寝たきりで要介護4から2に改善。

歩行器で歩けるようになった。
今も1日約2.1リットルの水を飲むなど自立へと奮闘中だ。

 病気で自立が難しい。
仕事や生活に追われ、健康づくりの余裕がない。

事情は人それぞれ。
それでも可能な限り、何歳であろうと、できるだけ医療や介護の世話にならずに生きる。

 人口3分の1が高齢者になる2030年。

支えが要る人が激増する危機的な未来に向け、甘えを断つ私たちの覚悟こそが綻んだ安心網を紡ぎ直す糸となる。


●関連日経記事
:2017年12月10日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 保険・年金・税金「皆保険 守るための取捨」=「砂上の安心網」 2030年への責任 ①=』(12月5日付)

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日経新聞 保険・年金・税金「皆保険 守るための取捨」=「砂上の安心網」 2030年への責任 ①=

2017年12月10日 02時36分47秒 | 保険・年金・税金
日経新聞 2017年12月5日(火) P.1
特集連載『砂上の安心網』=2030年への責任 ①=

『皆保険 守るための取捨』=将来にツケ もう回さぬ=

 病気やけがをしても実際の治療費に1~3割のお金を支払えば誰でも治療を受けられる。

取材班も「当たり前」と思っていた国民皆(かい)保険制度は瀕死(ひんし)の状態に陥っている。

 「3万円の高級スキンケアより効果あり!?」「最強の保湿剤が格安で手に入る」という情報がインターネットなどで流布(るふ)している。

「ヒルドイド」というアトピー性皮膚炎などの薬だが、ネットでは「医師に処方してもらえば300円程度で入手可能」と進める。

「湿布に1300億円」
 最近の処方量を分析した健康保険組合連合会は「化粧品代わりに処方してもらうことが流行している可能性が高い」とみている。

 湿布(しっぷ)も大量に医療機関で処方されている。
取材班が調べたところ、2015年度に53億枚以上が処方され、金額は約1300億円。

原則1割負担で入手できる75歳以上への処方が半数を占めていた。

 格安なのは健康保険から9~7割が支払われているから。
「少し多めに処方してほしい」。

薬局で買うより圧倒的に安いため、軽い気持ちでお願いした覚えはないだろうか。

 そんな「当たり前」はもう通じない。

 15年度に健康保険の対象となった医療費は年約42兆円。

このうち患者の負担は1割強で済んでいるが、残りは主に働き手が負担する保険料と国や地方の税金で賄っている。


年数千億~1兆円近く増え続けており働き手の負担増や国などの税収増には限りがある。

 1年間連載を続けた取材班は「国民皆保険は守るべきだ」という思いをさらに強くしている。

「自分の家族が重い病気になる」と考えている人は少ない。

予想外の事態を前に皆保険で救われた人を取材し、さらに記者本人や家族も安心して治療を受けられた経験があるからだ。

 どうすればいいのか。
厚生労働省は薬剤費の毎年改定で最大年2900億円の削減効果があると試算。

それでも医療費の急増に対して薬剤費の価格を下げるだけでは焼け石に水だ。

『「当たり前」限界』

 診療報酬の配分を決める厚労省の審議会で公益委員を務めた慶應義塾大学の印南一路教授は「『何かを削る』のではなく、公的な保障として『何を守るのか』と発想を転換すべきだ」と説く。

そして守るものとして生命と自由を挙げる。

 印南教授らは現在の医療費から試算し、生命を守るため致命的な病気を治す「救命医療」は24.4兆円、自由を守るため重症化を防ぐなど「自立医療」は11.8兆円が必要とはじく。

現状との差額の数兆円分については「湿布などを含め保険対象から外すことを議論すべきだ」とする。

 これまでの「当たり前」はすでに将来世代への借金で支えられている。

団塊の世代が80歳以上となる2030年でも皆保険を守るためには痛みを伴う選択肢しかない。

将来にツケを回さないように国民皆保険の線引きを決めるのは今だ。

    ◆

 今の選択が未来をつくる。
最終章は私たち一人ひとりの責任を問いかける。


●関連日経記事:2017年7月17日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 保険・年金・税金「健保 4分の1解散危機」=高齢者「支援金」増で=』(7月15日付)

●関連日経記事:2017年10月12日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 保険・年金・税金「命の値段 どう決める」=国民皆保険制度を支える財源には限界がある!=』(10月9日付)

●関連日経記事:2017年12月10日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 安心・安全『「在宅」のあり方 患者と探る』=「砂上の安心網」 ルポ2030年へ ①=』(12月5日付)

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日経新聞 保険・年金・税金「国税、富裕層に厳しい目」=税逃れ対策 全国にPT=

2017年12月07日 09時19分37秒 | 保険・年金・税金
日経新聞 2017年12月1日(金) P.2 総合1面
連載コラム『真相深層』

『国税、富裕層に厳しい目』=税逃れ対策 全国にPT=
「海外口座情報すぐ入手」 


 国税当局が国内外に多額の資産を持つ富裕層の税逃れを監視する体制を強化している。

今夏から富裕層調査を担うプロジェクトチーム(富裕層PT)を全国に配置し、人員も約4倍に増やした。

タックスヘイブン(租税回避地)の利用実態を暴いたパナマ文書などを機に国民の関心が高まるなか、資産隠しや国際的な租税回避への対応力を高める狙いという。

「2万人超いる」

 富裕層PTは2014年、東京、大阪、名古屋の3国税局に設置された。

ノウハウを蓄積し17年夏から全国12の国税局・事務所に拡大。

メンバーは約200人で、国税庁内に司令塔役として「国際課税企画官」のポストも新設された。

 国税当局は近年、富裕層への課税体制を強化。

16事務年度(16年7月~17年6月)の富裕層への調査は4188件あり、約441億円の申告漏れが見つかった。

国の借金が1千兆円を超え「取れるところから取る」という姿勢がうかがえる。

 国税当局の富裕層の基準とは。

関係者によると、数年前の基準は「経常所得の合計金額1億円以上」「相続(遺贈)財産5億円以上」など。

人数の統計はないが、15年の国税庁の申告所得税標本調査によると、所得1億円超は約1万7千人で、高額財産を相続した人を含めれば「2万人超はいる」(国税OB)。

 国税庁は富裕層PTが手掛けた案件を明らかにしていないが、内部資料から一端が判明した。

同庁には全国の国税局・事務所が手掛けた課税処分などから「複雑困難な事案や創意工夫した事案」を選んで長官が表彰する制度がある。

 日本経済新聞は情報公開請求で16年度の表彰関係資料を入手。

黒塗り部分が多く処分対象者などは不明だが、大阪国税局の表彰事案には「富裕層による租税回避に厳しい目が向けられる中、厳正な課税処理を行った」との記載があった。

 関係者によると、この事案は電子機器会社の創業者親族による贈与税約1500億円の申告漏れ。

創業者らは、電子機器会社の筆頭株主である資産管理会社(非上場)の新株予約権付社債(転換社債)などを利用した出資で、資産管理会社を傘下に持つ新会社(非上場)を設立し、新会社株を親族に贈与した。


 当局は非上場の新会社株の評価が実態とかけ離れていると判断し、約300億円を追徴した。

転換社債を使って相続税や贈与税を減らす節税策は「抜け穴」とされていたが、今後は封じられる見通しになった。

 国際的な租税回避への対応では、東京国税局の表彰事案に「意図的な国際的租税回避を把握」との記載があった。

事案は海運業者への課税処分。

当局は租税回避地のパナマで実質的な子会社として管理する関係会社の所得を意図的に申告しなかったと判断し、約3億円を追徴した。

 国際化、複雑化する富裕層の資産を捕捉するため、国税当局は18年9月までに各国の税務当局間で「CRS(Common Reporting Standard=共通報告基準)」を始める。

CRSは各国の税務当局が金融機関から名前や住所、口座残高、利子・配当の年間受取額などの報告を受け、自動的に交換する仕組み。

「節税目的で移住」

 こうした国税当局の課税体制強化に対し、節税目的で海外に資産を移して移住する富裕層も目立つ。

「数十億円規模の資産家から海外移住を希望する相談が毎月2件ほどある」(国際税務に詳しい弁護士)

 例えば、シンガポールは相続税や贈与税がかからず、投資で儲けた分は非課税で法人税率も20%未満。

外務省の統計によると、日本人の長期滞在者は16年10月時点で約3万5千人と4年前と比べ約3割増えており、節税目的の富裕層も含まれているとみられる。

 国税当局の幹部は「富裕層は日本経済をけん引する人材も多く、狙い撃ちにしているつもりはないが、富裕層だけができる手法で税を回避するのは不公平だ」と強調する。

一方、富裕層を顧客に持つプライベートバンカーは「稼いでも結局は徴税されるだけという意識になれば、結果的にイノベーションを阻害し経済の活力をそぐのでは」と話す。

当局と富裕層のつばぜり合いは続く。

▼国税当局による富裕層の主な選考基準

①有価証券の年間配当4000万円以上

②所有株式800万株(口)以上
③資金の貸し付け元本1億円以上

④貸家などの不動産所得1億円以上
⑤所得合計額が1億円以上

⑥譲渡所得及び山林所得の収入金額10億円以上
⑦取得資産4億円以上

⑧相続など取得財産5億円以上

⑨非上場株式の譲渡収入10億円以上、または上場株式の譲渡所得1億円以上かつ45歳以上の者

⑩継続的または大口の海外取引があるもの、または①~⑨の該当者で海外取引がある者

(注)取材に基づいて作成

(川瀬智浄記者)


●関連日経記事:2017年11月11日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 国際「世界の首脳や閣僚ら120人がタックスヘイブンに関与」=ICIJ、「パラダイス文書」で報告=』(11月7日付)

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日経新聞 保険・年金・税金「相続節税、抜け道封じ」=社団経由で資産承継=相続人が自宅を贈与贈与=

2017年12月05日 07時50分08秒 | 保険・年金・税金
日経新聞 2017年11月30日(木) P.3 総合2面
『税・予算』=2018=

『相続節税、抜け道封じ』=社団経由で資産承継=相続人が自宅を贈与=

 政府・与党は相続税の過度な節税防止に乗り出す。

一般社団法人を設立して相続税の課税を逃れたり、住宅を贈与して宅地にかかる相続税を減らしたりする節税策が広がっており、2018年度税制改革で具体的な対策を講じる。

相続税は15年から始まった増税で課税対象となる人が増えており、節税策を封じて課税の公平性を確保する。


 「一般社団法人の問題は放置できない」。
自民党税制調査会の宮沢洋一会長は社団法人を使った節税を問題視する。

 社団法人は08年から営利目的でも設立できるようになったが、株式会社と違って相続税はかからない制度となっている。

企業の株式にあたる持ち分が存在しないからだ。
役員の人数や親族の割合に関する定めもなく、比較的容易に設立できる面がある。

 この仕組みを悪用して節税に使うケースが増えている。
まず親が代表者となって法人を設立し、資産を移す。

その後に子供を代表に就かせ、法人の支配権を継承すると、資産には相続税がかからない。

この仕組みを使えば、子供ばかりか、孫やその先の代まで、延々と非課税で資産を相続できる。

 しかも、法人設立にかかる費用は登記の6万円しかない。

国も設立要件について「公序良俗に反しない限り全ての事業が対象」(法務省)としている。

16年は6075件が設立されており、この5年で1.5倍という急増ぶりだ。
登記だけで簡単に設立できる点が節税対策として活用される一因になっている。

政府・与党は親族が代表者を継いだ場合、非課税の対象と見なさず、課税対象とする方向で検討を進める。

 政府・与党が問題視するもうひとつの節税策は、小規模宅地の特例を悪用するケースだ。

 相続税には亡くなった人の住まいを、同居していた配偶者や親族が手放さずに済むよう、負担を軽くする仕組みがある。

さらに転勤や貸家住まいなどの事情を考慮し、過去3年間、持ち家がなければ減税してもらえる特例も設けている。

土地の評価額を330平方メートルまでは8割減らして相続の負担を軽くする。

 悪用とも言える税逃れはどのようなケースが該当するのか。

 40代男性を例に具体的に考えてみると、まずこの男性が所有するマイホームを20代の長女に贈与し、自分は持ち家を持たない人になる。

いわゆる「家なき子」として3年以上過ごす。

その段階で男性の80代の父親が亡くなると、父親の宅地を相続する場合に税負担が軽く済む。

 このような形で特例を使う人が増えているとみられ特例適用による減収見込み額は16年度で1350億円と3年で実に3倍近く伸びた。


 政府・与党は相続時に住む家がもともとは自分で保有しているものだったり、3等身以内の親族が所有する家に住んでいたりすれば、優遇の対象外とする方針だ。

課税逃れに備えている動きと判断する。

 年間の相続税収は2兆円ほど。
相続税は基礎控除の見直しに伴い、税を納める人が増えている。

年間死亡者数に占める課税件数をみると、15年に3.6ポイント上昇し8%にのぼった。

このため、納税者の間で相続税の負担感が急激に増しており、政府・与党も相続税で公平に課税する姿勢を前面に打ち出す必要があるとみている。

 17年度税制改正でも節税防止策は論点のひとつに浮上し、高層マンションの上層階の固定資産税の負担を重くした。

だが、新たな節税策は相次いでおり、国と納税者の間でいたちごっこになっている面もある。

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日経新聞 保険・年金・税金「内部留保に誤解?」=衆院選前「課税論」再び=

2017年10月27日 03時09分26秒 | 保険・年金・税金
日経新聞 2017年10月21日(土) P.15 投資情報面
『内部留保に誤解?』=衆院選前「課税論」再び=

『現預金とは一致せず』

 22日投開票の衆院選を前に、政財界で話題になった企業の内部留保に対する課税論。

内部留保を巡る議論は過去にも盛り上がった経緯があり、古くて新しいテーマだ。
そもそも内部留保とは何なのか。

誤解に基づく指摘も多く、議論を深めるために整理してみた。


 内部留保は会計上の概念で、企業が長年積み上げた利益の累積額だ。

貸借対照表(バランスシート=BS)の項目では、右下の純資産の部にある「利益剰余金」を指す。

法人税を支払い、企業の所有者である株主に配当した後の「もうけ」の蓄積のため、内部留保と呼ばれる。

 好業績を続ける上場企業の内部留保は、2016年度末時点で約251兆6000億円と、過去最大になった。

存在感が大きいためか折りに触れて注目されるが、内部留保は企業が保管する現金そのものではない。

その多くは事業に使われ、生産設備などになっている。

 架空の事業会社Xの事例(下表)を見てみよう。
利益の累積である利益剰余金は、BSでお金の調達先を示す右側(=負債の部)にある。

その額は90億円。

お金の使い道を示す左側(=資産の部)には、工場や店舗などの有形固定資産などと並び「現金・預金」の項目がある。

稼いだ利益の一部を設備投資に使ったため、手元に残ったお金は50億円。
90億円ではない。

  内部留保と手元資金は一致しない。

内部留保に課税すると、X社のように生産設備へお金を使ってしまった企業は資産の売却を迫られる可能性がある。

二重課税になるとの批判もある。

 ただ、多額の現金を手元に残す企業が多いのも事実。

上場企業の持つ現預金は初めて100兆円を超え、1年間で6兆円、07年度から43兆円増えた。

必要以上に現金をため込む企業も多く、何度も課税論が浮上する背景にある。

▼内部留保は設備投資などに活用されている
(X社のバランスシート)
【資産の部】~(BSの左側に記され)お金を何に使ったかを示す
・現金・預金(手元資金) 50億円

・有形固定資産(工場や店舗設備など) 150億円
・無形固定資産(営業権など) 50億円
ーーーーーーーーーーー
・資産合計 250億円

【負債の部】~(BSの右側に記され)お金の調達先を示す
・有利子負債(銀行からの借り入れなど) 150億円

【純資産の部】~(BSの右側に記され)お金の調達先を示す
・資本金 10億円

・利益剰余金(内部留保) 90億円
ーーーーーーーーーーーーーー
負債純資産合計 250億円

『「リーマン」で関心高く』
 会計上の概念のため、一般にはなじみが乏しかった内部留保。

世間の関心を高めるきっかけになったのは、2008年秋に発生した「リーマン・ショック」だった。

 当時は自動車産業などで非正規従業員の削減が広がり、共産党が「内部留保を取り崩して雇用を守れ」と主張。

国会でも与謝野肇経済財政担当相(当時)が、相次いだ「派遣切り」について「何兆円にも及ぶ内部留保を持っている企業が、時給千円足らずの方の職を簡単に奪うということは本当に正しいのか」と発言した。

自由に使えるお金であるような前提に立った議論が展開された。

 その後の民主党政権でも、鳩山由紀夫首相(当時)が大企業の内部留保への課税を検討する意向を表明。

政権交代後の自民・公明政権も官民対話で内部留保を投資拡大に振り向けるよう求めてきた。

足元では金融庁が企業統治改革の会議を開き、内部留保を成長投資に振り向ける指針の作成に動いている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『米では「懲罰」で課税』
 利益の累積である貸借対照表上の「利益剰余金(内部留保)」への課税は先進国ではみられない。

ただ毎期に稼いだ利益のうち、税金や配当を支払ってなお手元に残った単年度の「もうけ」への課税は海外で例がある。

 米国の「留保金税」が一例だ。
配当に回されず、事業上の必要も認められない資金に課される。

1950年代から存在し、富裕層の資産管理会社などの課税逃れへの懲罰がもともとの狙い。

現在の税率は20%だ。

 制度上は株主数や企業規模を問わないが、EY米国の秦正彦パートナーによると上場企業への適用例はほぼない。

「内部留保を抑制し、配当を促す一定の効果はある」(白鳳大学の石村耕治教授)との声もある。

 台湾は98年から企業の留保金に10%の税金を課し、企業は成長投資に動きにくくなったとの指摘がある。

3年の時限措置で同様の制度を始めた韓国では20年まで延長する案が出ている。

 日本で同様の制度が導入されれば、配当政策などに影響を与えそうだ。

ただ資金の活用を規律付けるためには「市場のチェック機能を支援する措置の方が有効」(秦氏)との意見もある。


●関連日経記事
:2017年10月6日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 経営「割安株価是正へ第2の波」=ROE改善、投資家が主導=アサツーDK買収劇に見る=』(10月4日付)

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