日経新聞 経済教室「転勤はもう時代に合わない」=リクルートワークス研究所 大久保所長=

2017年04月21日 07時10分34秒 | 経済教室
日経新聞 2017年4月20日(木) P.29 経済教室面
連載コラム『私見卓見』

『転勤はもう時代に合わない』=リクルートワークス研究所所長 大久保幸男=

 1年間に転勤を言い渡される人は約40万人もいる。

リクルートワークス研究所が全国4万9000人を対象に行った調査から明らかになった推計だ。

転勤という慣行は日本独特のもので、終身雇用を背景に、転勤命令権として広く認められている。

 企業が転勤を行う理由は大きく3つある。

全国に展開する拠点の人員の需給調整のため、人材育成のため、そして単なるマンネリ防止のためである。

しかしこの仕組みはすでに制度疲労を起こしているのではないか。

 転勤の理由は崩れ始めている。
採用難の現状では転勤がないことを売りにした方が人材は集まりやすい。

高速交通やモバイルツールの普及も転勤しなくてよい環境を作っている。

人材はそれぞれの地域で採用することを基本にすべきで、余人をもって代えがたい人材(管理職以上の幹部社員)だけを送り込めばよい。

 人材育成なら担当職務の変更やプロジェクト任用などで十分だ。

マンネリ防止には「単身赴任で羽を伸ばす」という古い価値観が含まれているのではないか。

長い間勤務すると取引先との癒着(ゆちゃく)・不正が生じるというならば、不正が見つかるように(海外企業で一般化している「業務監査」を目的に=)長期休暇を取らせれば済む。

 共働き世帯は全世帯の6割を超え、働く夫と専業主婦の妻という高度成長期の家庭像は崩れてきている。

夫の転勤についていけば妻のキャリアが阻害される。
単身赴任すればワークライフバランスが崩れる。

どちらも働く個人にとってはマイナスが大きい。

 転勤する人には手当や転居費用の補助などで年間100万~150万円程度の経費が掛かるとされる。

わざわざそのような出資をするほど転勤は必要なのだろうか。

 厚生労働省は先月発表した「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」の中で、適正配置や人材育成などが転勤という手法でなければ果たせないのか検討すべきとしてる。

一歩前進だが、さらに進めて転勤を廃止する企業が出てきてほしい。
転勤は個人が希望または合意したときのみ。

企業から転勤命令を出すのは一部の管理職だけにするのだ。

 これは勤務地、職務、労働時間を限定しない正社員のあり方を根本から変えることにつながる。

本来、雇用とはローカルなものである。
地域限定社員をつくるのではなく、地域限定社員を普通の正社員にする。

先んじて実行した企業は働き方改革の先進企業という名声を得るはずだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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●関連日経記事
:2015年1月5日グー・ブログ「息子たちに読んでほしい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 経営「多様な勤務体系、競争力に」=働きかた NEXT ①=』(2015年1月1日付)

●関連日経記事
:2016年12月30日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 経営『中高年社員を変える「学びほぐし」』=日本みらいキャピタル社長 安嶋 明氏=』(2016年12月29日付)

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日経新聞 経済教室『貨幣には「元帳型」と「トークン型」』=仮想通貨とブロックチェーン ③=

2016年09月15日 21時21分34秒 | 経済教室
日経新聞 2016年9月14日(水) P.26 経済教室面
連載『やさしい経済学』=国立情報学研究所准教授 岡田 仁志=

『貨幣には「元帳型」と「トークン型」』

 分散型仮想通貨の代表であるビットコインは、発行主体を持たず中心がないことを特徴とします。

発行主体が存在しないお金というのは、歴史的にも恐らくまれなことでしょう。
仮想通貨は貨幣の歴史にどのように位置づけられるのでしょうか。

 英イングランド銀行の開催した勉強会で、貨幣史に仮想通貨を位置づけようとする意欲的な考察が報告されました。

貨幣の歴史を古代まで遡ってみると、貨幣というのは一冊の元帳に取引を記録するレッジャー(元帳)型と、コインのように手渡しで人から人へと移転するトークン型とに分類されます。

 古代メソポタミア文明の遺跡からは楔(くさび)型文字の刻まれた粘土板が発掘されています。

これには貸し借りの記録も刻まれており、レッジャー型の貨幣が存在したことを示唆します。

やがて小アジアのリディアで琥珀(こはく)金の貨幣が鋳造され、トークン型の貨幣が登場します。

ギリシャ・ローマ文明では、希少金属を鋳造した貨幣が流通しました。

 中世ヨーロッパでは鋳造貨幣も一部で流通しますが、経済の大半は元帳の記録や割り符で管理していました。

レッジャー型の貨幣へと逆戻りしたのです。

 絶対王政の時代を迎えるころには銀行制度が発達し、ヨーロッパ域内の取引は主に元帳で管理されますが、大航海時代の幕開けと同時に新世界では鋳造貨幣が流通します。

レッジャー型とトークン型が並存した時代と言えます。

 第2次世界大戦後の世界では銀行の機械化が進み、まもなく登場するコンピューターが世界中の取引を記録するようになります。

この時代には金属貨幣と紙幣も流通していますが、取引量の圧倒的な部分は銀行の元帳で管理されています。

イングランド銀行の考察によると、現代はレッジャー型の貨幣の時代に分類されます。

 ここで新たに登場したのが仮想通貨です。
果たして仮想通貨はレッジャー型あるいはトークン型のいずれに分類されるのでしょうか。

意外なことにイングランド銀行の答えは、仮想通貨はトークン型に分類するというものでした。


●関連日経記事:2016年9月15日グー・ブログ「息子たちに読んでほしい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 経済教室「汎用性と転々流通性を備える」=仮想通貨とブロックチェーン ②=』(9月13日付)

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日経新聞 経済教室「汎用性と転々流通性を備える」=仮想通貨とブロックチェーン ②=

2016年09月15日 20時55分24秒 | 経済教室
日経新聞 2016年9月13日(火) P.30 経済教室面
連載『やさしい経済学』=国立情報学研究所准教授 岡田 仁志=

『仮想通貨とブロックチェーン ②』=汎用性と転々流通性を備える=

 仮想通貨という用語に確たる定義はありません。

代表例であるビットコインは法定通貨のように強制通用力のある貨幣ではありませんが、あたかもお金のように流通しています。

日本では貨幣に代わるものとして電子マネーが普及しています。
そこで、電子マネーの性質と比較しながら仮想通貨の定義を考察してみましょう。

 電子マネーは全国のあらゆる店舗で利用できる汎用性を備えています。

これに比べてビットコインを受け取る店舗はまだ少数ですが、パソコンとインターネットがあれば簡単に受け取ることができます。

すると、あらゆる店舗で使えるという汎用性は、電子マネーと仮想通貨に共通した性質であると言えます。

 仮想通貨に固有の性質は個人から個人へと送金できる転々流通性です

電子マネーの加盟店は専用端末を設置する必要がありますが、ビットコインは特別な装置を必要としません。

店舗と消費者という明確な区分さえ存在せず、電子メールを送受信するように、誰もが送金人にも受取人にもなり得ます。

 電子マネーは日本円を対価として発行されますから、「前払式支払手段」としての性質を有します。

発行主体には未使用残高の半分を供託することが義務付けられています。
では、仮想通貨には発行主体が存在するのでしょうか。

 実は、仮想通貨には2種類あります。

一つはビットコインのように発行主体が存在せず、利用者全員が取引の正しさを検証するための計算を分担するタイプです。

これを分散型仮想通貨と呼びます。

 もう一つは発行主体が存在して、1人または複数の発行主体が計算を担うタイプです。
これを中央型仮想通貨と呼びます。

一見すると中央型仮想通貨は従来の電子マネーと類似していますが、個人から個人への転々流通性を有するところが異なります。

 これらをまとめると、仮想通貨とは、どこでも利用できる汎用性と、誰にでも送金できる転々流通性とを備えた金銭的価値であって、中央型仮想通貨と分散型仮想通貨の2種類からなるものであると定義することができます


●関連日経記事:2016年9月12日グー・ブログ「息子たちに読んでほしい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 経済教室「ビットコインは発行主体が不在」=仮想通貨とブロックチェーン ①=』(9月9日付)

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日経新聞 経済教室「ビットコインは発行主体が不在」=仮想通貨とブロックチェーン ①=

2016年09月12日 05時40分51秒 | 経済教室
日経新聞 2016年9月9日(金) P.29 経済教室面
連載『やさしい経済学』=国立情報学研究所准教授 岡田仁志=

『仮想通貨とブロックチェーン ①』=ビットコインは発行主体が不在=

 仮想通貨は2008年に発明された新しいお金です。

サトシ・ナカモトが考案したビットコインは、09年1月に流通し始めました。
インターネットを自由自在に駆け回るお金として今や世界中で利用されています。

時価総額は、最も高値を付けたときには1兆円ほどに達しました。
国境を越えて流通する金銭的価値として、もはや無視できない存在になっています。

 ビットコインの最大の特徴は発行主体が存在しないことです。
中央銀行が発行する紙幣は金融政策の方針に従って発行量が調整されます。

政府の財政政策によってインフレに誘導されることもあります。
もし通貨に発行者が存在しなければ、誰の意思にも影響されません。

ビットコインは一定の間隔で、一定量が半自動的に発行されます。

 国家に左右されない中立性が好感され、投資家の注目を集めます。
13年に財政危機に陥ったキプロスでは、銀行預金を封鎖する措置がとられます。

このとき金融資産の避難先として選ばれたのがビットコインでした。
国家からの独立性が評価されたのです。

大量の資金が流れ込んだことによって、ビットコインの市場価格は上昇しました。

 インターネットから購入できる仮想通貨は、外国投資の規制された国や地域で投機の対象となります。

中国や香港では、ビットコインは「比特幣」と呼ばれています。
13年末には中国で投資ブームが起こり、ビットコインの価格が急騰しました。

影響を懸念した中国人民銀行は、仮想通貨ブームは実体を伴わない虚像であるとして警鐘を鳴らしました。

 ビットコインの価格は半額にまで下落し、仮想通貨ブームは終了したかに思われました。
ところがビットコインへの投資はやむことがなく、市場価格は乱高下を続けます。

こうした市場の流れに終止符を打ったのが、日本にあった取引所の破綻(はたん)でした。

この14年2月を境として、ビットコインの価格変動は一旦緩(ゆる)やかになり、投機的な金融商品から文字通りの仮想通貨へと性質を変えていきます。

▼おかだ・ひとし
 大阪大博士(国際公共政策)。

専門は電子通貨体制論。


●関連日経記事:2016年9月12日グー・ブログ「息子たちに読んでほしい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 開発「IT、地殻変動の足音」=広がるブロックチェーン ①=』(9月11日付)

●関連日経記事:2013年3月24日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 国際「キプロス預金課税で混乱」=「裏金庫」炎上 焦るロシア=』(2013年3月23日付)

●関連日経記事:2016年9月15日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 経済教室「汎用性と転々流通性を備える」=仮想通貨とブロックチェーン ②=』(9月13日付)

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日経新聞 経済教室「ドイツ国家を破壊したハイパーインフレ」』(2012年8月6日付)

2016年08月16日 08時06分50秒 | 経済教室
日経新聞 2012年8月6日(月) P.17 経済教室面
連載『経済教室』=青山大学院大学特任教授 猪木武徳=

『歴史と思想に学ぶ』=インフレの惨禍忘れるな= 


 (前段略)

 ハイパーインフレは歴史の教科書の中だけの話ではない。 

現代でも1970年代から90年代にかけて、ブラジルやアルゼンチンなどラテンアメリカ諸国で1000%を越えるインフレが相次いだ。 

 93~94年に発生したユーゴスラビアの例も異常の一語に尽きる。 
アフリカ・ジンバブエの10の21乗%を越えるインフレも日本で報道され記憶に新しい。  

 一般にインフレは、政府が大量に紙幣を印刷して資金を調達し続けることによって発生する。 

見方を変えると、インフレの背景には減価していく通貨を持つ国民の(貯金の減価という損失の)犠牲において政府が(借金の減価という)利益を得るという構図がある。 

国民から政府への「富の強制移転」があり、(通貨の減価という形で行われる)税金(=インフレ税)を課すのと同じ効果を生むのだ。   

 インフレは年金など固定収入で生活する者や債権者に巨大な損失と苦痛を与え、(=政府など借金を抱える負債者に負債額の実質減額を与えるというインフレの)その富と所得の再配分効果は実に大きい。 

 だがそのために発行され続けた(政府発行の=)国債を(通貨の番人である=)中央銀行が引き受ける(=政府国債を買い取り、引き換えに通貨を発行する)と、通貨供給量の増加に歯止めが掛からなくなり悪性インフレが発生する。 

国民の所得と富が(通貨の減価という形で)政府に強制的に奪われ、増税よりもさらに悲惨な事態になるのだ。 

(中段略) 

 ハイパーインフレは戦争や革命といった国家権力にとっての非常事態を契機に発生することがある。 

巨額の政府支出が必要なのに国家の徴税機能が極端に弱まり、財政の大部分が紙幣増発で賄われることになるからだ。

国債を発行しても資本市場が機能していないため市中で消化されず、結局中央銀行が引き受け手となり、銀行券(=紙幣)の増発という形で通貨量が膨張するのだ。   

 戦争の場合、多くの生産設備が破壊され、国民経済の供給能力が低下しているところへ、終戦後、抑えられていた総需要(国民の購買力)の圧力が市場を襲うので、諸物価が上昇するのは当然だ。  

 ナチス台頭の一因にもなった1922~23年のドイツのインフレは、戦後4年以上経ってから発生している。 

ドイツが第1次世界大戦に敗れて領土の一部と多くの工業資源を失う中、フランス・ベルギー両軍は23年1月、賠償の現物支払い(10万本の電信柱)の停滞を理由にドイツ工業の中心地のひとつ、ルール地方を占領する。 

この時の連合国側が要求した賠償額が不当・不公平で実行不可能なものであることは経済学者のケインズも激しく非難していたが、関税権が極度に制約されていたドイツは、賠償の前提となる大幅な輸出超過を生み出すことがますます困難になった。 

復興に必要な産業の基盤の根本を奪われたのである。    

その半年後の23年6月までにドイツの通貨供給量は対戦前に比べ2000倍に増加していたが、一般諸物価水準の上昇は既に2万5000倍を超えていた。 

この変化は国内の卸物価指数でみても、生計費指数でみても、ほぼ同じ数字になる。 

通貨マルクの対外的な購買力は、14年時点で1ドル=4.2マルクであったが、23年11月には4.2兆マルクに跳ね上がっていた。 

この1兆分の1を越える通貨の下落は23年度の後半に加速した。  

ドイツのハイパーインフレを終焉(しゅうえん)させるには「通貨改革」という政治判断を必要とした。 

23年11月政府は、新1レンテルマルク=1兆旧マルクの比率で回収するとともに新レンテルマルクの発行額自体も制限することで旧マルクを市場から強制的に追放した。 

この政策によってインフレは終焉する。 いわゆる「レンテルマルクの奇跡」である。   

 ただ「通貨改革」だけが功を奏したのではない。 

紙幣発行による赤字財政を停止し、(政府が発行する)国債を中央銀行が引き受けないという政府の決意が国民の間で信用されたからこそ、インフレは止まったのだ。 

(後段略) 


 ◆父さんコメント

 今日でもドイツ政府が世界中で一番インフレに敏感な政策を取り続けているのは、「第1次世界大戦後のドイツマルクのハイパーインフレ」がいかにドイツ国民を苦難に陥れたか の苦い経験という歴史に学んで、ドイツ国民とドイツ政府が保守的な経済政策を取り続けていることが背景にある。

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日経新聞 経済教室「① 冷戦下のドミノゲーム」=米国の中東政策=

2015年11月29日 06時16分48秒 | 経済教室
日経新聞 2015年10月12日(月) P.15 経済教室面
特集連載『時事解析』=米国の中東政策=

『① 冷戦下のドミノゲーム』=ソ連と影響力を競う=

 今年7月、米国など6カ国がイランと核開発をめぐる合意に達した。

米国の中東政策の変化を象徴する動きだ。
この機をとらえ曲折に富む米国と中東の関係史を振り返る。


 米国が中東に接近し始めたのはアラビア半島の石油確保のためだ。
第2次大戦中、ルーズベルト政権が調査団を派遣。

「世界の石油生産の重心は、メキシコ湾ーカリブ海から、中東へーーペルシャ湾岸へ移ろうとしている」(ダニエル・ヤーギン著「探究・エネルギーの世紀」)と判断、サウジアラビア接近を加速した。

 大戦後、中東の英仏植民地では独立の動きが相次ぎ、アラブ民族主義が高まりをみせた。

中心にいたエジプト・ナセル政権は当初、米に近づくがアスワンハイダム建設の融資を断られ、一転ソ連に接近。

米ソが中東で影響力を競う時代に入る

 米国は湾岸産油国のほか、欧州からのユダヤ移民が建国したイスラエルを支援。

ソ連はエジプトなど軍人出身者が率いる共和制国家に武器を供給し、アラブ・イスラエルの中東戦争が激化する。 

 米ソのドミノゲームでは策略が渦巻いた。

1950年代にサウジがヨルダンを親米陣営に誘うが、同国では親米のフセイン国王(当時)の意に反し政府がソ連に接近。

米は第6艦隊を地中海に派遣し威嚇(いかく)で親米陣営に引き込むといった具合だ(田村秀治著「アラブ外交55年」)。

 80年代に軍拡競争でソ連経済が傾くにつれて、米国の影響力が増す。
米は「和平の配当」として資金援助をテコに、イスラエルやアラブ陣営を懐柔。

域内諸国と投資・貿易交流も強めていく。

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日経新聞 経済教室「③ 通貨切り下げ競争の懸念」=揺れるアジア金融=

2015年11月27日 06時59分01秒 | 経済教室
日経新聞 2015年11月25日(水) P.32 経済教室面
特集連載『時事解析』=経済解説部 太田康夫=

『揺れるアジア金融』=③ 通貨切り下げ競争の懸念=
「迫られる構造改革」

 アジアで通貨切り下げ競争が懸念されている。

 きっかけは、日銀の量的・質的金融緩和とそれに伴う円安だ。
中国は8月、人民元の変動幅を拡大し、事実上、元を切り下げた。

インドは9月末に、政策金利を市場予想を上回る0.5%も引き下げた。

 各国とも金融緩和は国内景気刺激が目的としている。

ただ利下げは結果的に通貨安に作用しやすく、それによって輸出ドライブをかけたい思惑も透けて見える。

 1997年の危機後各国が通貨安政策を取るなか、中国が元切り下げを回避し、危機は終息した。

しかし今回は中国がアンカーになるかは不透明だ。

 スイス金融大手UBSのダーク・エッフェンベルガー氏は「アジアが通貨切り下げ競争に入るリスクが強まった。 今後元がさらに下がり、ほかのアジア通貨は平均6%程度下がる」と予測する。

 副作用は小さくない。
通貨安を狙った金融緩和は国内バブルを生んだり、借金依存を強めたりする恐れがある。

各国が通貨安に走れば、国際金融が混乱しかねない。

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は19日、「通貨の競争的切り下げを回避し、あらゆる形の保護主義に対抗する」ことを確認。

米財務省は10月の為替報告書で韓国に「ウォン高防止のための為替介入を続けるべきではない」と警告した。

 アジアは多くの国が輸出依存で成長を図っているが、パイの争奪戦に限界があるのは明らかだ。

持続的な成長を続けるには、各国が内需中心の経済構造への転換に真剣に取り組む必要がある。


日経新聞 2015年11月26日(木) P.31 経済教室面
特集連載『時事解析』=経済解説部 太田康夫=

『④ デフレリスク台頭』=高齢化も不安材料=

 2015年はシンガポール、台湾、タイで消費者物価上昇率がマイナスとなる公算が大きい。

日本以外のアジアで物価下落が起きるのは珍しい。

 中国経済減速の影響で輸出需要が低迷し、対中依存度が高い韓国、台湾などでデフレ圧力が強まっている。

また原油・商品価格の下落は1次産品輸出が多いインドネシア、マレーシア、タイなどの経済を直撃した。

 すでに卸売物価は台湾、シンガポール、フィリピンなどで前年比5%以上下がっている。
それを反映した製品輸出でデフレ圧力がアジア全体に広がりつつある。

 高度成長期に顕著だった賃金上昇圧力も、成長減速とともに鈍ってきた。

「弱い雇用・賃金の伸びが消費を抑えている」(英HSBCのジョセフ・インカルカテッラ氏)ため、需要は高まりにくい。

 構造的な問題も影を落とす。
アジアではインドなど一部を除き急速に高齢化が進む。

現在、シンガポール、マカオ、台湾、香港、韓国の出生率が日本より低く、50年の65歳以上人口の比率は台湾、香港、韓国が日本とほぼ同じ約35%、タイでも30%に達する見通しだ。

 しかもアジアでは年金など社会保障制度の整備が必ずしも十分でない。
社会保障制度の改善と高齢化対応が同時に到来するため、財政負担が急激に増す。

 英調査会社オックスフォード・エコノミクスのアダム・スレーター氏は「さらなる外的ショックが加わればデフレリスクは飛躍的に高まる」と警告している。

債務が膨張したアジアにとって、債務負担が増えるデフレは危機に直結しかねない。


●関連日経記事:2015年11月27日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 『日経新聞 経済教室「② 膨らむ家計債務 不良債権予備軍に」=揺れるアジア金融=』(11月24日付)

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日経新聞 経済教室「② 膨らむ家計債務 不良債権予備軍に」=揺れるアジア金融=

2015年11月27日 06時41分43秒 | 経済教室
日経新聞 2015年11月24日(火) P.11 経済教室面
特集連載『時事解析』=経済解説部 太田康夫=

『揺れるアジア金融』=② 膨らむ家計債務=
「不良債権予備軍に」


 家計の所得はアジアの成長とともに増えたが、より豊かな生活の追求で債務も膨らんでいる。

 家計債務の国内総生産(GDP)比率はシンガポール、香港、韓国、台湾、マレーシア、タイで日本よりも高い。

特に、韓国は同比率が84%と主要新興国で最も高い。

 家計債務増加の一因となっているのが住宅ローンだ。

個人所得の増加とともに住宅支出も増え、マレーシアでは住宅ローンは2008年の金融危機前の約2倍になった。

 シンガポールや香港では債務の多くが不動産担保を設定しているが、シンガポールでは不動産価格が下がり始めている。

韓国やマレーシアでは無担保融資も多い。

 家計債務に関連して注目されているのが国内銀行の不良債権の動向だ。
タイ、インド、インドネシアなどで銀行の不良債権比率が上昇傾向にある。

とりわけ消費者金融関連と中小企業向けで上昇が著しい。

 またインドやタイでは不良債権に分類されない要注意先債権が少なくない。
景気が悪化すれば回収に問題が出かねない不良債権予備軍だ。

タイの大手銀では不良債権比率は約3%だが、要注意先を加えた比率は約6%になる。

 通貨危機で金融不安が起きたこともあり、多くの国は銀行に自己資本を厚めに積ませている。

すぐに銀行破綻(はたん)が相次ぐ状況にはないが、銀行の融資余力が低下する公算が大きい。

 米JPモルガンのジョシュ・クラクセック氏は「債務環境は1997年の通貨危機前と似た不安定な状況にある」と警鐘を鳴らしている。

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日経新聞 経済教室「懸念、中国にとどまらず」=バブルの歴史 ①②=

2015年09月25日 10時19分14秒 | 経済教室
日経新聞 2015年9月3日(木) 経済教室面
特集連載『ゼミナール』

『バブルの歴史』=① 懸念、中国にとどまらず=

 6月中旬以降の中国株価の急落は、世界の金融市場を動揺させた、

 中国の代表的な株価指数である上海総合指数の構成銘柄の時価総額は、過去10年間で約10倍に膨らんだ。

特に直近1年で時価総額は2.7倍に膨張。
ところが6月中旬以降、バブル懸念の高まりから株価が急落した。

 中国当局は投げ売りの広がりを憂慮。

証券会社による上場投資信託(ETF)の買い入れや、大株主による保有株売却を6カ月間禁止するなど、大胆な株価対策を連日発表した。

企業も、個別に株式市場での売買を停止できる制度を利用。
7月上旬までに上場銘柄の4割程度が取引停止となる緊急事態に発展した。

株価はその後、小幅に反転。
しかし、8月下旬以降、景気が減速するとの懸念から、再度急落した。

 バブル懸念は他の国でもくすぶる。

例えば5月には、米国の連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が「株価は概して割高に評価されている」と言及。

金融政策の正常化に向けた準備を市場に意識させつつも、株式市場の抱える「潜在的な危険」に注意を促した。

 2008年のリーマン・ショック後、多くの国で、利下げや市場での潤沢な資金供給など金融緩和政策が取られた。

金融市場であふれた資金が住宅市場に流れ込み、ノルウェーなど北欧や、シンガポールや台湾などアジアでも住宅バブルの懸念が指摘されている。

 バブルの歴史は古く、世界は幾多のバブルの発生・崩壊を経験した。

本稿では「バブル」とはどうのような事象なのかをひもときつつ歴史を振り返り、望ましい政策対応の方向性について考える。

(三菱総合研究所)


●関連日経記事:2015年9月25日付グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 『日経新聞 海外メディア「株価の変動、なぜ激しく」=金融緩和が招いた増幅=』(9月16日付)


日経新聞 2015年9月4日(金)  経済教室面
特集連載『ゼミナール』

『バブルの歴史』=② 価格上昇の理由は何か=

 「バブル」とは何か。

一般的には「金融資産と不動産など実物資産の価格が、適正な価格より高い状態が続くこと」だ。

 では適正な価格とは何か。

基準となるのが「ファンダメンタルズ」、つまり資産を持っていれば将来手に入るはずの利益の価値だ。

具体的には、株式なら将来の配当、土地なら将来の地代や賃貸料を、現在の価値に引き直して合計したものを指す。

いずれ手に入るはずの利益から大きくかけ離れて価格が上がり続けるのが「バブル」だ。

 実体経済が好調なら、資産が生む将来の利益も増えるだろう。
それが価格にすぐ反映されれば利益の現在価値に見合って値上がりする。

株価高騰が続いてもファンダメンタルズの裏付けがあればバブルとは言わない。
 
 バブルには「合理的」な場合と「非合理的」な場合がある。

 「合理的」である前提は、ずべての投資家が同じ情報を把握し、適切な判断を下すこと。

資産価格が将来の利益の価値を上回っても、まだ上昇する見込みがあると説明できるなら、一時的に、将来の利益の現在価値を上回るだろう。

これが「合理的バブル」だ。

 一方「非合理的」なバブルは、人々の思惑で値上がりする。

根拠がない噂などをきっかけに「投資家の大勢が資産価格の上昇を見込むだろう」と考える人がたくさんいるときに起きる。

将来の利益の現在価値と無関係に価格が上昇する状態だ。

 投資家の立場が違えば入手できる情報が違い、投資判断も異なる。

市場が活況になり様々立場の投資家が参入し、合理的だったバブルが非合理的になることもある。

▲合理的か非合理的か
      (合理的バブル)   :       (非合理的バブル)
【投資家】
  投資家層は均質。感情に左右されない   :  幅広く多様な投資家。 感情に左右される人も

【情報】
  事実に基づく         :   根拠のない噂もある

【価格上昇】
  理由を説明できる       : 投資家の思惑が重要な役割を果たす

(三菱総合研究所)

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日経新聞 経済教室「国有企業、過剰債務が重荷」=中国金融不安の構図 ①=

2015年09月08日 09時28分38秒 | 経済教室
日経新聞 2015年8月31日(月) P.19 経済教室面
連載『時事解析』=経済解説部 太田康夫=

『中国金融不安の構図』=① 動き出す国有企業改革=
「過剰債務が重荷」


 中国で株価が大幅に下落した。
経済成長の鈍化が背景で、金融不安が懸念されている。

 リーマン危機後、中国は4兆元の景気対策を実施した。
インフラや基幹産業に関わる企業への銀行融資を拡大し、設備投資主導で高成長を維持した。

しかし2012年には成長が鈍化し、2桁成長を当てにした設備の稼働率は低下。

「企業は債務が膨らむ一方、人件費高騰の影響も加わり純利益率が低下した」(HSBCの張之明氏)。

 中国企業の債務(借入と社債)は08年から6年で2.8倍の80兆元(1500兆円)強と、米国の企業債務を上回る。

1990年代後半に日本企業が経験したような過剰債務の状況だ。

 中国政府は国有企業改革の方針を示している。
民間資本の受け入れ拡大と企業統治改善で収益性を高める狙いだ。

米ゴールドマン・サックスは「改革が円滑に進めば企業効率と収益性は改善する」と指摘。
そうした期待が金融緩和と相まって、6月初めまでの1年間で株価が2倍以上になった。

 ただ本格的な企業改革には資本増強や資産売却、リストラが不可欠だ。
低収益・高負債業種は資本調達が難しく、整理淘汰も必要になる。

90年代の日本では過剰債務企業が相次ぎ破綻し、株価が下がったいきさつがある。

 中国人民銀行(中央銀行)は先週、株価対策もあって利下げを実施。
企業の利払い負担は軽くなるが、過剰債務がすぐ解消されるわけではない。

時間をかけて企業改革に取り組むしかなく、経済には中期的に下押し圧力がかかる公算が大きい。


●関連日経記事:2015年9月7日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 『日経新聞 経済教室「信用膨張のツケ、不良債権が増加」=中国金融不安の構図 ②=』(9月1日付)

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