地球散歩

地球は広いようで狭い。言葉は違うようで似ている。人生は長いようで短い。一度しかない人生面白おかしく歩いてしまおう。

パン

2007-10-21 22:31:55 | ペルシャ語

نان(ナーン)

ナーンと言えばインド料理のそれで有名だが、実はこの言葉、もともとはペルシャ語である。
そして、朝夕ともにイランの食卓に欠かせないもの、それはやはりナーンである。

ナーンは家庭で作るものではなく、ナーン屋(نانوايیナーンヴァーイー)で購入するのが普通。
イランの朝は早い。早朝からナーン屋の前に長い列を作って、人々は朝の食事を買い求める。朝食には、塩分の多いヤギのチーズ、ハーブ、ナツメヤシの実などを、一片のナーンでくるっと巻いて、チャーイー(紅茶)と共に頂く。これがなかなかの絶品!

そして夕方。やはりナーン屋の前には長い列が出来ている。店の奥にある竈からは、焼きたてのナーンの芳ばしい香りが漂ってきて、仕事帰りの空腹な胃袋を刺激する。イランの食事は昼間に重点を置くため、夕食は軽めの食事と共にナーンが食卓に並ぶことになる。

一口にナーンと言っても、いくつも種類がある。例えば、日本でも「ナーン」として一般に知られている厚めで細長い三角形のものは、ナーネ・サンギャク(نان سنگک)。米料理のおこげを作るために鍋底に敷く、ごく薄いナーンは、ナーネ・ラヴァーシュ(نان لواش)。円形で、模様の付いたお盆のような形のものは、ナーネ・ターフトゥン(نان تافتون)(写真)。そして、もともとはイラン北部に多く住むアゼルバイジャン系の人々が食べていたナーネ・バルバリー(نان بربری)。細長い形のバルバリーの表面には、白胡麻が塗されていて、焼きたてのものは胡麻の匂がとても芳ばしい。ちなみに、この「バルバリー」という語は、ギリシャ語由来の英単語[barbarian](未開人・異邦人)と同じ意味である。ペルシャの中心地から見て、辺境の地に生きる民族に起源を持つパンを、このように呼ぶのは興味深い。ナーンひとつ取ってみても、歴史の一端が垣間見られるのが、多民族国家イランの魅力のひとつではないか。

おもしろいのは、バゲッドやホットドッグ用のパンなど、西洋風のパンをナーネ・ファーンタジー(نان فانتزی)と呼ぶこと。「ファンタジー」とは、なんとも魅惑的な名前のパンである。どういう経緯でこの名前が採用されたのか、ぜひ知りたいと思っている。[m]

*各ナーンの名称が、「ナーネ」と表記されているのは、ペルシャ語の文法上後ろから修飾語を受ける時に、単語の最後に[e]の音が付加されるため。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
驚き! (マーク)
2007-10-22 13:19:00
久しぶりにMixiから流れてきました。。。

ナーンがペルシャ語だったとは驚きました
さらに続く話もとても面白いです
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ナーンも奥深い~ (yuu)
2007-10-22 22:04:27
私も大好き!!とゆーことで
インド人が開いているカレー屋さんでは
かならず食べまする~
といっても、本当に歴史が深い!!
言葉、食べ物、歴史…
全てが入り交ざって、そして今も
手軽に食べられる♪人々に愛されてきた
食べ物なのですね^^
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こんにちは (yokocan21)
2007-10-23 06:09:06
私の住むトルコ南東部地方では、イランのナーンにそっくりなものが多くあります。トルコ語ではナーンとは言わず、「ピデ」になるんですけど、薄いピデは「ラワシュ」です。なんともペルシャ文化の影響を感じます。
主食だけあって、色々な種類のナーンがあって、興味深いです。さすが、歴史の国だけありますね。
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マークさん (mitra)
2007-10-23 21:30:12
マークさん、初めまして!
ナーンは、インドの言葉でもご存知のとおり「ナーン」ですが、ペルシャから渡っていったものだと思われます。本文中にも書いた言葉の繰り返しになってしまいますが、食べ物ひとつ取ってみても、民族が動いた軌跡や民族交流の跡が見られるのは楽しいですよね♪今後もよろしくお願いいたします。
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yuuさん (mitra)
2007-10-23 21:36:30
yuuさん、いつもコメントありがとうございます。
私もナーンが大好きで、カレーがなくてナーンだけ
でも十分食べられます。インドもそうですが、
イランのナーンも種類が多くて、それぞれに歯ごたえ
や味が違い、ナーンを食べるのが毎日楽しみなんです。
基本的に食いしん坊なので、食べ物の話ではつい
盛り上がってしまうのですが、食べ物って、
文化や歴史、その国の日常が背景に見られて
興味深いですよね。手軽に食べられる主食・日常の
食事にこそ、ぎゅっと凝縮された文化が詰まって
いる気がします。
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yokocan21さん (mitra)
2007-10-23 21:43:05
yokocan21さん、初めまして!
トルコにお住まいなのですね。場所が近いだけに
親近感を覚えてしまいました。
トルコのピデも美味しいですよね~。というか、
トルコは何を食べても美味しいけれど。
トルコとイランの食事(勿論食事だけではないですが)は、歴史上互いに影響を与え合っていた時代が
長いと思われますし、料理の名前も同じ語源のもの
が多いですよね。薄いピデが、やはり「ラヴァーシュ」と同じ語源の単語で呼ばれいてるというのも
興味深いです。またいろいろ教えてくださいね。
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