11/06/07 松ケン×妻夫木の映画「マイ・バック・ページ」は苦過ぎた


松山ケンイチは「デスノート」のL役以来のご贔屓若手俳優。出演した映画も全て観ているわけではないが、「カムイ外伝」以来なので少々欠乏症気味(笑)
チラシをGETしてずっと気にしていた「マイ・バック・ページ」だが、近くのシネコンで早々に上映回数が一日一回になってしまいそうなことがわかったので、早く帰れる7日(火)にすっとんでいって観てきた。18:10からの上映会だったが、客数はかなり少ない。

Movie Walkerの作品情報が一番わかりやすかったので、以下に引用。
「川本三郎による同名ノンフィクション小説を基に、1960年代後半という激動の時代に2人の青年が出会い、理想と現実の狭間で揺れ動く姿を描く社会派青春ドラマ。妻夫木聡がジャーリストを松山ケンイチが革命家に扮して初共演。『リンダ リンダ リンダ』の山下敦弘監督が、革命熱の強まる時代を生きた人間の強さと脆さを映し出す。」
ストーリーも同様に引用。
「1969年。理想に燃えながら新聞社で週刊誌記者として働く沢田雅巳(妻夫木聡)は、激動する“今”と葛藤しながら、日々活動家たちを追いかけていた。それから2年、取材を続ける沢田は、先輩記者・中平武弘(古舘寛治)とともに梅山(松山ケンイチ)と名乗る男からの接触を受ける。「銃を奪取し武器を揃えて、われわれは4月に行動を起こす」沢田は、その男に疑念を抱きながらも、不思議な親近感を覚え、魅かれていく。やがて、「駐屯地で自衛官殺害」のニュースが沢田のもとに届いた……。」

川本三郎のノンフィクションを下敷きにしながら、梅山の人物像などは脚本の向井康介と監督の山下敦弘とでずいぶんと膨らませていったらしい。
ベトナム反戦運動が盛り上がり、反米・反独占の気分が高揚した時代、既成の左派とは一線を画した「新左翼」とマスコミがもてはやした学生運動が華々しく盛り上がった。全共闘による東大の安田講堂占拠が機動隊によって排除される様子がTVに映し出されたのは私も覚えている。小学生だったが、馬鹿な人たちだと思いながら見ていたものだ。

妻夫木演じる沢田は東大の学生で、傍観者ではあったが、心情的には先鋭的な彼らの闘いにシンパシーを抱いていた。新聞記者になっても常に社会の陽の当たらない所に身分を明かさずに潜入し、そこに生きる人々の中に混ざりこんで思いを引き出したルポなどを書いていた。
その沢田の前に梅山と名乗って片桐が近づく。当初は警戒していたものの不思議な魅力がある。運動に入る前は音楽をやっていたといって、アメリカのCCRというグループの曲を共に口ずさむ中で人間としての興味を持ってしまったのが沢田の運の尽きだった。
松山ケンイチがギターをかき鳴らすといえば「デトロイト・メタル・シティ」。だからギターを弾く姿も実に自然。妻夫木が報道用カメラを使う場面では「闇の子供たち」を彷彿とするが、それからすると大人になっている。当然か(^^ゞ

それにしても、梅山というヤツはずいぶんとひどい男だ。学生時代に時代を論じ合う研究会をつくるも、お話にならないレベルの論戦しかできていない。それでも時代の夢を追っかけたいという同志たちのリーダーとなったのは、やはり人を引きつけるものがあったからのようだ。少し前の運動の高揚を追う中でいっぱしの存在になることが彼の目標(=本物になる)であり、同志たちは梅山に感謝の言葉をかけられ、「俺を本物にしてくれよ」と囁かれればその呪縛の通りに動いてしまう。彼の女になっている重子(石橋杏奈)も「お前のために世界を変えたいんだよ」と囁かれれば、疑いも打ち消して身を任せてしまっている。その情事の隣の部屋でヘルメットを赤いペンキで塗っている作業をしている同志の男女はラジオの音でごまかして作業を続行。おいおい、まともな感覚をなくしているぞよ。

まるで、オウム真理教の麻原彰晃ではないか?!
沢田に近づいたのも、偽情報でも派手な行動の予告ならマスコミは飛びついて自分たちのことを書くだろうと踏んでのこと。さらには中平や沢田の仲介で京大全共闘議長の前園勇(山内圭哉)と対談させてもらうと、そのツテを頼ろうとするし、最後には彼を犯罪の首謀者にして責任をなすりつけようとまでする。

だまされる沢田は、梅山を「信じた」のに裏切られ、会社を辞めざるを得なくなる。引導を渡す社会部長役の三浦友和は、ほんの一場面だったが、顔中を無精髭でいっぱいにしていて、激務をこなす幹部としての存在感。いい人イメージを払拭しての熱演だった「沈まぬ太陽」を彷彿。
ジャーナル誌の表紙のカバーガールの高校生、倉田眞子(忽那汐里)は、可愛いだけかと思ったら実に感性豊かな少女。一緒に観た映画の登場人物で「泣ける男が好き」だというひとことがキーワードになっていた。

ほぼ10年後、映画評論など仕事をしている沢田。仕事をくれる出版社の編集部の飲み会に誘われてもいつも参加しない。一匹狼を通しているらしい。
ふらりと立ち寄った飲み屋。その主人は潜入ルポをしていた時に親切にしてくれた男で再会を喜んでくれた。境遇も明かさずにふらりといなくなった自分を気にかけてくれていた様子に、沢田は泣くのだ。
うちのめされてしまったような気がして映画館をあとにしてきた。私には苦すぎた。

だます方もだまされる方も革命というムードに乗っていた。かたや自己満足を求めて、かたや社会正義の実現という夢を描いて。
最近の野田秀樹の「信」シリーズ3部作に通じるものを感じた。感覚的に信じてしまうことで身を滅ぼす悲劇。愚かなのだ。
今回の映画は、だます方もだまされる方もいずれの若者も愚かしい。2人ともが魅力を感じる京大全共闘議長の話す内容にしたって、感覚的すぎてこんな考え方でよくもまぁ社会を変えられると思っていたなぁと思ってしまった。大多数の国民の意識をこんなことで目覚めさせることができると本気で思っていたのだろうか?そうであれば幼稚なインテリの革命ごっことしかいいようがない。そんな風潮をもてはやしたマスコミも幼稚だったように思える。
溜息しか出なかった。

他の主要キャスト:長塚圭史、中村蒼、韓英恵、あがた森魚

ちょうどの川本三郎の文章を読んだ直後の鑑賞だった。乙川優三郎の『冬の標』の巻末の解説を書いていた。時代の制約の中で自分を貫く生き方にたどりつく女性の物語で、実によい解説文だった。その氏の朝日新聞社の記者時代に経験した日々をつづった原作の映画化だったが、真摯に生きる人間への共感が通底しているように思えた。その視点については共感しきりである。
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コメント
 
 
 
Unknown (hitomi)
2011-06-18 21:33:58
友人が前から川本ファンなのでお付き合いに見てきましたがもう,後半は体調のせいもあるのか、早く終わってと思うぐらいイラついてしまいました。
前にこの話は遠くなった県の図書館までいって調べたのです。
確かにひどい詐欺師のような男ですが(松山の方が得な役かな。仲間も彼を止められない、日本的なんでしょうか。)上司にやめろとアドバイスされていたのに甘ちゃんとしか思えなくて困ります。友人もいつまでも引きずっていて奥さんなくなったらもっと‥だと。
あのキーワードになることを言った若い女優さんは自殺だったようです。
 
 
 
皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2011-06-19 02:38:22
TBをいただける際は、できればコメントもいただけると有難く存じますm(_ _)m
国会をデモ隊を取り巻いた1960年の安保闘争は国民的な盛り上がりを見せましたが、70年の安保改定に向けては学生を中心にした運動でした。ベトナム反戦運動が世界的に広がったこともあり、反米反独占のスローガンで世の中を変えようという学生運動にある程度の共感が集まったことも理解ができます。
片桐はその運動の中でいっぱしの存在になることに憧れて、そのために周囲の人間を巻き込んでいった人間だと思います。片桐の描く夢に向かって信じてついていった人々。沢田もやはり信じたかったのでしょう。現状を変えたい気持ちを持った人たちのエネルギーが間違った方向に導かれてしまった時の悲劇。
間違ったものを「信じて」しまった幼稚さ、愚かしさが苦いです。私には苦すぎた映画でした。
★hitomiさま
>早く終わってと思うぐらいイラついてしまいました......私は2人の男の幼稚さ愚かさが実に哀れに思え、重苦しさでいっぱいになってしまいました。
>甘ちゃんとしか思えなくて困ります。友人もいつまでも引きずっていて奥さんなくなったらもっと‥だと......映画のプログラムに川本さんが寄せた原稿にも奥様を亡くしたことが書いてありました。
自分の慙愧に堪えない体験をこの映画をつくってもらったことで、もういつ死んでもいいと思われているように受け取りました。この時代を知らない若い世代にここまで理解してもらって、後に残るものとして映画をつくってもらったことで、この過ちが繰り返されないようにすることにつながると思えたのではないかと推測しました。
ただし、当時の状況をしっかりつかもうとしない限り、理解してはもらえないと思います。そういう視点がもてない人が多いというのが今の現実だと思っています。
 
 
 
Unknown (hitomi)
2011-06-27 07:07:41
映画ブログの方はTB送りっぱなしという方が楽天ではよくありました。ちょっと寂しいですね。

間違ったものを「信じて」しまった幼稚さ、愚かしさが苦い、です。


追記です。重複しますがすいません。
友人が川本三郎のファンなので以前,図書館でこの事件の新聞や著作を何冊か読みました。キネ旬も読んでそのうち香川照之さんのエッセイのほうが面白くなってしまいました。
川本さんの映画評論は好きです。
映画は疲れているときに観たので上司に諭されてもわからない甘い主人公にちょっと。
これが映画になるとはその頃は思いもしませんでした。
川本さんは奥様をなくされがっくりされて、友人も歯がゆいと。
松山君はどうしようもない人物の役なのですが、魅力的に観えてしまいました(苦笑)隣の部屋で睦言聞きながらヘルメット塗っている二人、なぜそんな犯罪を止められないのか、ここが日本的でしょうか、連合赤軍にしても、お役所不祥事も、上には反対できない体質、しくみ?で悲劇が生まれるような気がします。
 
 
 
はじめまして (KUMA0504)
2011-07-02 21:58:37
いいたいことはTBの中の記事の話で尽きているのですが、あの当時の「社会を変えなければならない」という情熱の基本方針自体は間違っていなかったと思うのです。曰く。安保反対。産学協同の大学批判。けれどもそのための方法論は決定的に間違っていた。そして、新左翼を「怖いものだ」、「つまらない運動だ」と切って棄てて、大学をしらけ世代の単なる通過点にした我々の世代も、結果のところ現代の日本を作ったという意味で責任があると、思うのです。
 
 
 
皆様、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2011-07-03 23:54:56
★hitomiさま
>間違ったものを「信じて」しまった幼稚さ、愚かしさが苦い......全く同感です。
>上司に諭されてもわからない甘い主人公......私も見ていて実にイライラしました。
>連合赤軍にしても、お役所不祥事も、上には反対できない体質、しくみ?で悲劇が生まれる......集団の中に安住してしまうとリーダーのすることがおかしいと思った時も異論を唱えると居心地が悪くなってしまうことが多く(リーダーの狭量、独裁)、黙って従ってしのぐ人が多いように思います。以前の職場で「上が間違ったら上が責任をとるのだからいいのよ」という同僚もいて、猛反発したこともあります。私は言いたいことを言ってきたことを後悔はしていません。まぁ、けっこう辛いですけどね。
★「再出発日記」のKUMA様
KUMA様のことはどなたかのブログで存じておりました。TBがうまく届いていないのですが、お名前のURLからたどって拝読させていただきました。もう一度試していただきたいですが、念のため、みつけた記事のURLを以下に書かせていただきます。
http://heiwaokayama.blog.fc2.com/blog-entry-21.html
>あの当時の「社会を変えなければならない」という情熱の基本方針自体は間違っていなかったと思う・・・・・・方法論は決定的に間違っていた......私も同感です。
結局は社会変革の方法論をきちんと指し示す勢力が大きく育たず、権力を握っている勢力の支配の方が巧妙でそれに負けていったということだろうと思っています。それから40年後の今年の原発の大事故!原発推進勢力は、情報操作力を駆使ししてなんとか彼らの危機を乗り切ろうとするでしょう。そこを打ち破って社会の大改造を進める勢力がつくれるかどうか、冷静に考えながらあきらめずにやれることを続けていけるかどうかにかかっているように思えます。
私も発信し続けるつもりです。
 
 
 
再送付 (KUMA0504)
2011-07-05 00:11:44
TBとどかなかったそうで、すみません。
TB再送付しました。どうでしょうか。

ご丁寧なコメントありがとうごいます。
あの後、川本さんの原作を買って今読みかけているのですが、川本さん自身が、90年代の時点で社会変革の展望を何一つ持っていないでそのことに反省の色がなかったことに、私は驚いています。

一番いい方法は、目的は非常に似ているのだから、私は全学連と共産党の共闘が生まれていたならば、局面は大きく変わっていたと思うのです。もっとも、政府財界はそれを表裏で阻止したでしょう。創共の共闘が潰されていったように。

現在、成功している戦略は「九条の会」と「貧困運動」のみです。この二つに私は注目しています。
 
 
 
★KUMA0504さま (ぴかちゅう)
2011-07-05 00:50:50
TB、やっぱりうまく届きませんね。もしなんでしたら、今後はお名前のURL欄に該当記事のURLを入れてコメントもしてみていただけるとありがたいです(KUMA0504さまの記事への二回目のコメントにそのようにしています)。
>全学連と共産党の共闘......いわゆる反代々木系全学連のことですか(笑)うーん、彼らは既成左翼も全面否定していたようですから無理だったんじゃないでしょうか?全共闘運動についての私の印象は実に「感覚的」な運動だったように思います。言葉も実に地に足のついていない青臭い感覚的な論理展開だったような・・・・・・。主人公の沢田が覆面取材をして世の中の底辺の人々の中に入っていってましたが、それも結局は感覚的なレポートを書いて終わっていたから、最後の再会の場面での相手が実に人間臭く自分に接してくれていたことで、自分が如何に頭でっかちの幼稚で感覚的な問題意識のみで接していたことに気が付いたのではないかと推測しています。
大陸ヨーロッパの左翼戦線との違いは、いかに多くの労働者が参加しているかということだと思います。日本は大企業と労使協調の労組とで労働者を左翼から切り離すことに成功してしまったのです。
いまだにトヨタの城下町などでは市役所にも労組がなく、人権感覚の欠如した行政がなされているという話を聞いて妙に納得してしまいました。
敵の支配力は強大なのです。そこに草の根の運動がくさびを打ち込めるかどうか?他人事ではいけないのですが、どのように連帯したらよいか、模索中です。
 
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