科学絵本

国立科学博物館認定サイエンスコミュニケータたちが楽しい科学絵本を企画&ご紹介します!

科学絵本の制作現場リポート! 遊べる出版社「仮説社」編

2016-02-12 09:00:28 | 出版社

こんにちは☆愛子です

このブログではいつも絵本を紹介していますが、今回は科学絵本の出版社の制作現場リポートをお伝えします

私たちは2016年1月、東京・巣鴨にある「仮説社」へ訪問させていただき、

編集者 川崎 浩さんに科学絵本についてのお話や想いを直接伺うことができました

このような機会に恵まれたことは幸運であり、お話させていただけたことをとても感謝しています

 

「出版社」というと、デスクがあって、本や書類、原稿が山積みになっている・・・というイメージでしたが、入ってみてびっくり

なんと小さな本屋さんのようなところでした

部屋の半分が本屋さん、もう半分がイメージしていた出版社という感じだったのです

そこでは仮説社の本、実験器具や教材、おもちゃ、ミジンコ(!)などが販売されていました。

私たちがお伺いした時も、お買い物をしているお客さんがいらっしゃいました

私は最初、「仮説社」という出版社名を聞き、「仮説」という言葉がとても印象に残りました

普段、本を読む時は出版社名まで意識しないのですが、出版名にはどのような想いがあるのだろうかと興味がとても湧いたのです!

それもそのはず、仮説社には出版に至る色々な想いがあることを川崎さんからお聞きしました

仮説社の社名の「仮説」の元となったのは「仮説実験授業」という教育理論で、

その生みの親である板倉聖宣さんは、もともと科学史や認識論を専門としていた方で、

自身の戦争体験から、「自分の頭で考える子どもを育てたい」という想いをお持ちになったそうです。

そして、学校の先生向けの月刊誌である「たのしい授業」は、毎月違うトピックで30年以上、発行し続けているのだそうです。

そんなにも長い間、発行が続いているのは本当に凄いことですね!

とても印象に残ったことは、どれくらい売れたか、どれくらい世の中に受け入れられたかを知る研究材料にするために、

本の最後のページの奥付に発行した部数も印字していらっしゃるところです

 

編集者の出版への想い

「自分で考える人」になってほしい。

「間違えてもいいから考える」、「問題意識を持って世界を眺める」、「仮説を考える」ことの重要性を感じてもらいたい。

わかりやすく楽しい科学の現象を提示するだけでなく、「科学の法則性の奥にある哲学」を子どもたちにきちんと伝えたい。

 

テストでは「正しい答え」を求められますが、「間違えてもいいから考える」時間を持てることはとてもいいことだなぁと思います

物を「見る」ということは、問題意識を持って見るということで、そうしなければ「見ていない」のと同じという言葉にもハッとさせられました

身の回りのことや当たり前にあるものに対して、問題意識を持つことも視野を広げるためには大切で、

出版への想いを色々とお聞きし、ジーンと心に響きました

 

仮説社は、理科の先生や講演参加者など現場の話を聞くこともしていらっしゃるそうです

夏と冬に数百人規模の仮説研究会が催され、授業の案を出し合い、それを学校の授業にかけて、子供たちにアンケートをとるそうです。

子供たちへの愛情がとても伝わり、大事にしたい想いがひしひしと伝わりました

 

今、世の中には多数の科学の絵本が出版されていますね

昔に比べると、今は多くの種類の本があります

その中でも、編集者の方にとって素敵な絵本はどのようなものか川崎さんに教えていただきました。

 

素敵な科学絵本とは?

世界が広がり、独創性が高いこと。

大人が読んで心から納得できること。

現代ではありとあらゆる自然科学のテーマが取り上げられ尽くした?と思えても、こうした本を読むと「こんなテーマがあったか!」と実感することができること。

「ぜひこれを伝えたい!」という情熱を持てるテーマが大事であること。

 

想いというのはとても大切なことで、

著者が本当に書きたいと思っているものやどうしてもみんなに知ってほしいと思っているものを考える大切さを改めて感じました

類書のないオリジナリティもポイントで、その為には頭で考えるだけでは難しく、

いろんな人たちとお話をして、アイディアやひらめきを膨らませることも良いと思いました。

 

実際の出版エピソードもお聞きしました☆

微生物観察への強い情熱から出版に至った事例をご紹介します♪

 出版エピソード

小さな生き物けんさくブック

池や川など水中にいる小さな生き物を「うごく/うごかない」、「色」、「形」で検索できる写真豊富なハンドブックです。

この本の良いところは、子供たちが自分一人で調べられるところです

各ページの右下には、室木おすしさんによる微生物(アメーバやミジンコ)たちのシュールなイラストたちがマメ知識を披露しています。

元々は杉並科学館職員や教員の方たちがお手製で制作を行い、

貸し出しをしていた「微生物けんさくカード」をハンドブックとして出版したものだそうです。

実際の顕微鏡でどんなサイズに見えるかなど実践的な情報がわかりやすくまとまっています。

パラパラ~っと眺めているだけで、

「池の水をとってきたい!顕微鏡でのぞいてみたい!空き瓶持って川に行こうかな☆」という気持ちになります

このハンドブックが生まれた杉並科学館(当時)で、

子どもたちがワイワイと顕微鏡を囲んで盛り上がっている様子がジーンと伝わってきます。

 

今回の訪問では、『煮干しの解剖教室』(仮説社)を見ながら、実際に煮干し(カタクチイワシ)を全員で解剖させていただきました

 あっ☆手前の煮干しも美味しそうだけれど、奥にいるお二人も笑顔で楽しそう

 

最後に、仮説社で人気のある科学絵本をいくつか紹介いたします☆

いずれも類書と呼べるような本がなく、オリジナリティが非常に高いものだそうです。

ぜひお手にとってご覧下さいね♪

「もしも原子がみえたなら」 

板倉聖宣 著 さかたしげゆき 絵

「煮干しの解剖教室」 

小林眞理子 文  泉田謙 写真  こばやしちひろ 絵

「小さな生き物けんさくブック」  

水中の小さな生き物けんさくブック』編集委員会 編著

清水龍郎 監修/室木おすし イラスト

 

今回私たちが訪問した仮説社は誰でも足を運ぶことができます。

気になった方、お近くまで行かれた方は是非立ち寄ってみてください!

とっても楽しいひと時が過ごせると思います♪

 

株式会社 仮説社

〒170-0002

東京都豊島区巣鴨1-14-5 第一松岡ビル3階

営業日・営業時間:10時~18時 (金曜は20時まで 日曜・祝日はお休み)

http://www.kasetu.co.jp

 

最後に…☆

このような素晴らしい機会を与えて下さった仮説社の川崎さんと皆様に心より御礼申し上げます。

どうもありがとうございました!

 

国立科学博物館サイエンスコミュニケータ・アソシエーション(科博SCA)

科学絵本分科会

サイエンスコミュニケータ  愛子、ゆうきよしなり、はる、蓑田裕美


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