『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

『みちしるべ』**父母の残した鴎だより!!**<2015.9.&11. Vol.91>

2015年12月01日 | 山川泰宏

父母の残した鴎だより!!

2015(平成27)年9月3日

山川 泰宏

 昭和40~50年代の冬期、北海道沿岸部の漁業従事者や東北地方の農村部の人々は、関東方面に出稼ぎ(季節労務者)として、建設現場等に長期間、故郷から出ていました。東京オリンピックを控えた建設ラッシュ。影の功労者であったことを忘れないで下さい。昭和50年度、季節労働者の出稼ぎが終焉し繁栄された街が出来たのです。

 正月3ヶ日を故郷で過ごし、青森発上野駅行きの夜行急行列車は、出稼ぎや学生の群れが堅い座席にひしめいて座っています。それぞれが、故郷に家族を残し冬季の厳しい日々を案じながら、日々の糧の為に建設現場へ出かけていました。私も昭和33年から36年は東京の大学へ、青函連絡船と急行列車での函館から上野駅まで、懐かしい学割を使用した両親の住む故郷からの望郷の鉄道の旅でした。

 その時代、私の心の中に残る汽車の中の出来事の一つ。出稼ぎに向かう人々との交わりでした。東京に向かう車中、出稼ぎの人たちが“お母あー”の自慢料理を車内に持ち込み、数ヶ月味わうことのできない故郷の食べ物。素朴で無愛想な中に見せる人懐かしさに、見ず知らずの人との交流が繰り広げられたのです。時折、東北の農村部の人たちが一升瓶に入れて持ち込んだ、どぶろくの美味しさ。知らず知らずのうちに腰を抜かすほど酔い、今では遠い過去の話になります。

 一方、北海道茅部郡南茅部町古部の1月から6月頃まで、若者が出稼ぎに出かけた後の、地元に残る人や子供たちの交流の文集が発行されていました。その『鴎だより』に掲載された、私の父の文章を以下に記します。

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【鴎だより】第45号 昭和50年6月10日発行(最終号)

古部出稼援護組合

驚き!ももの木・サンショの木
 ローソクホッケキロ5円!!

出稼援護組合古部支部長 山川善司
函館中部高校32期(昭和5年卒)
[2000年1月14日逝去 享年91歳]

 出稼ぎして働いている皆様にとっては、月日の流れは遅々と感ぜられたでしょうか。留守を預かっている私達(特に私のように老人の部類に入ってる者)には全く早く思われ、かもめ便りも最後の月になってしまいました。

 たびたびお知らせしているように、今年は大雪に見舞われたので、草木はいつになったら萌え出るのかと心配しておりましたが、やはり季節が来ると、様々な山菜が食卓を賑わしてくれました。また、桜も気をもませず、例年の通り花(山桜)が咲きました。ただ、今年は桜が満開だと思ったとたん、強風にやられ、アットいうまに無残に散ってしまい、花見をしたのかどうか、わからぬ状態でした。今は全山きれいな新緑におおわれており、その中に紅の山つつじが美しく初夏の訪れを思わせています。

 婦人部と老人クラブが、それぞれ日本一といわれている青森の古牧温泉に旅行をして、今までの疲れを流し、大変楽しかったと申しております。古部の母ちゃんたちは働き者で、ちょっとの間も惜しんで働き者です。先日もアスパラの働きに出た人がいます。また五月初旬から工事が始まった古部漁港の現場にも、4~5名のお母ちゃんが元気に働いております。

 さて、漁の様子についてお知らせしなければなりません。

 今年のテンテン(鱒の一本釣り)はあまり良い漁がなかったのですが漁場の網(定置網)、特に囲(屋号=カクイ漁業)さんの定置網が建ってから、マスが獲れだし、しばらくぶりでラシャマスの姿も見え、毎日が大漁でした。網起こしのたびに相当の漁獲があり、囲漁業部の漁は木直(キナオシ)の全定置網の2倍以上の漁獲量の成績を上げています。

 マスの他にホッケも獲れたし、毎日何百箱という水揚げでした。でも最初のうちはホッケの値もよかったのですが、大漁ビンボーの名のとおり、最後にはキロ5円まで値下がりし本当にがっかりデス。それでも獲れないより、獲れたほうが活気があっていいので張り切って頑張りました。

 ただの5円という小型ホッケ(通称=ローソクホッケ)の漁獲が薄くなってきたら、囲(カクイ)の小網にマグロが7尾(全部で800キロ)入り、その翌日は大きい定置網で同じくマグロ7本(平均214キロ)の漁獲があり、久しぶりの大漁旗をなびかせ古部漁港は活気づきました。今のところホッケは薄くなっているが、モグリがありますので今後が楽しみです。

 囲漁場は現在、木直管内で一番の漁獲量なのでこれからもなんとか大漁が続き、今年こそ水揚げ億の声を聞きたいものと、強く念願しております。特に今年は前記のようにめずらしく大型のマグロ揚がりましたので何か幸先が良いように思えます。(近年この海域は大間のマグロ、戸井のマグロの漁場=平成年代) 又キ(屋号)齋藤漁場も新しく岡(陸地より)のほうに、ミニ定置網を建てており、又キ・ヤマ三(屋号)浜田漁場ともどもホッケ、モグリ等々相当の漁獲を挙げております。

 皆さん、内地はかなり暑いでしょう。でも今年は時々寒い日が来るようです。風邪は万病の元と申しますから、身体には充分気を付けて働いてください。保育所の子どもたちも毎日元気に通っていますからお母さん、お父さんご安心ください。帰郷時期が近いですから油断しないで働きになり、元気な顔でのお帰りをまっています。

追伸:北海道人(道産子)は津軽海峡から北は外地、津軽海峡から南(本州)を内地と呼びます。屯田兵の厳しい開拓時代を彷彿させているのかもしれません(私の勝手な解釈)

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