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350 白タクに乗って

2012年09月15日 | uzbekistan

ウズベキスタンの首都タシケントから列車に乗って数時間、古都サマルカンドの駅に到着した。

駅から市の中心部までは結構な距離がある。
荷物も多く、一刻も早く宿に着きたいのでタクシーを探そうと思った。
予め読んだガイドブックにはウズベクにはいわゆるタクシーが無く、全て白タクであると記されていた。
駅のゲートを出ると成るほど、放っておいても次から次へタクシーの勧誘がわらわらと寄って来るではないか。

僕はそのうちの1人と値段の交渉を始めた。
と言っても相場を全く知らないから自分の頭のイメージと懐具合によって判断するしかない。
路線バスや乗り合いバスを探すという手もあるのだが、今日は早く宿に行きたかった。
まあこれなら良かろうという値段に落ち着き、タクシー・・・もとい単なる彼の乗用車に乗り込んだ。
車はかなり旧いもので、いかにも旧ソ連製を彷彿させるなかなか味わい深い代物であった。

しかし、である。
オヤジはハンドルを握って車をゆっくり出しながら、携帯電話で誰かとしきりに何かを話していた。
携帯と言ってもイヤホンマイク型のもので、両手が塞がっていても会話に支障は無い。
しかもオヤジはゆるゆると車走らせながら、手を思いっきり伸ばして助手席側のドアロックを解除した。
と同時にアクセルをグイと踏み込んで急加速すると、ラジオの音を思いっきり上げてウズベク音楽を鳴らし始めた。

時刻は真っ昼間、外は明るい。危ない時間帯では無い。
でも気を引き締めて第1警戒体制に入る。今更という感がしないでも無いが。

ここで想像する嫌なパターンは件の電話で相棒を呼びつけ、途中で強引に助手席に乗り込んで来る。
そして後は何処か裏道に車を止めて・・・というパターンである。

思った通り車は表通りから外れて住宅地の中で止まった。
助手席に誰かが近づいて来るのが判る。
僕はやや緊張した面持ちで荷物をしっかりとホールドした。

予想に反して近づいて来たのはキレイな衣装を着た女性であった。
彼女はオヤジと二言三言会話をしながら車の扉を開けた。
そして助手席にスルリと滑り込んで来たのは、何と未だ小さな坊主ではないか。

なんだ、そういうことか。
子供を乗せたタクシーは再び音楽を鳴らしながら猛スピードで走り始めた。
怪しげな白タクというイメージが一瞬にして所帯染みた空間へと変容してしまったのである。
オヤジの会話もそんな内容になる。
「お前は結婚してるのか。子供はいるのか。子供はいいぞ、可愛いぞ」と。

そんな会話には関心も示さず、マルコメ頭の坊主はひたすら一心に車の行く手を眺め続けていた。

*白タクでは無い黄色いタクシーは駅から出てしばらく行った大通りに沢山走っていました。でもメーターは無いようです。

 

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2 コメント

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Unknown (ふくいのりすけ)
2012-10-22 11:18:07
実はソビエト時代のどうしようも無いモノは好物ですw
このタクシーも乗りたい!

Unknown (honda)
2012-10-23 21:56:06
ヘンテコな車好きにはたまらないかもしれません。ラダ、チャイカ、モスクビッチ・・・片っ端から撮影してコレクションしたくなるかも。次回は僕も車の知識を貯えていきます。

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