地震・噴火・気象災害への対応 文学・文化論攷

地震・噴火・気象災害への対応 文学・文化論攷、副題( 森鴎外と福沢諭吉、三田文学における その後 ・・・ )

IFRSについて-IFRSの基本を理解するために-

2017年06月15日 | 日米安保条約
IFRSについて-IFRSの基本を理解するために-

議事録

IASBの基準作成の歴史

IASB(国際会計基準審議会)は2001年に設立されました。2005年にEUおよびオーストラリアがIFRS(国際財務報告基準)を採用した後、2007年には中国とニュージーランドでも採用され、まだ採用していない米国、日本、インドの動向は、世界の注目を集めています。

ASBは、一組の国際的に適用される質の高い会計基準(IFRS)を作成することを存続目的としています。日本は、IASBの活動費の9%弱を拠出していますので、IFRSを採用しないのはもったいない状況といえます。

2000年当時、IASBの組織体制については、FASB(米国財務会計基準審議会)型モデル(限られた数の独立した会計専門家による基準設定)と各国代表型モデル(25カ国程度の各国代表による討議と採決を通した基準設定)の2つの考え方がありました。そして、より会計理論に基づいた高品質の会計基準作りが志向され、FASB型モデルが採用されました。

FASB型モデルは成功し、現在では100カ国以上がIFRSを採用しています。それに伴い、米国基準の影響力は相対的に低下してきました。FASBがIFRSの採用を躊躇している1つの理由として、自らの影響力を思ったほど行使できないIASBになってしまったことが挙げられます。

IASBの活動に関連する歴史として、2001年4月にIASBが設立されてから、2002年10月にFASBとは今後の協力関係を約束したノーウォーク合意を締結し、それ以降、良好な関係が続いていました。ところがFASBは、2010年辺りから急速に内向き志向となり、両者は現在、一緒に同一テーマについて議論はしますが、同じ結論には至らないという状態にあります。

IASBが設立され、EUがIFRSの導入を準備していた2004年ころから、米国はIFRSを取り込もうとする意欲が強く(特に、2005年4月にはSEC(米国証券取引委員会)のロードマップを公表して将来IFRSを米国が採用する可能性を示唆した)、米国基準とIFRSとのコンバージェンスを通じてIASBの基準設定にSECが一定の影響力を行使できると考えていた節があります。しかし、David Tweedie議長(当時)の下でIASBは、必ずしも米国に追随するのではない基準作りをしてきました。そのようにして作成されたIFRSの採用国が徐々に増え、米国基準ないしFASBの存在感は、当初SECが期待したほどではなくなってきました。

2007年8月には、IASBとASBJ(企業会計基準委員会)との間で「東京合意」が公表されました。これは中長期的に、日本の会計基準とIFRSとの大きな差異をなくすための合意です。その後、日本の会計基準はIFRSに近づいてきたわけです。

また同年11月、米国では、SECに登録する外国企業の財務報告にIFRSを用いることを許容するための規則の変更をSECが承認しています。これによって、2007年11月16日以降に終了する事業年度においてIFRSに基づく財務諸表を作成する外国企業に対しては、米国会計基準との差異調整表の作成が不要となりました。現在、これを400~500社が利用しているといわれています。一方で、米国籍の上場企業にIFRS第9号の適用を認めるかどうかに関しては、2011年12月になって、SECは、2011年中の意思決定が困難である旨を表明しました(したがって、現在米国企業は、米国基準に代えてIFRSを用いることはできません)。

IASBとFASBとの関係および米国のIFRS受入の可能性

IASBとFASBは、2002年10月から両者の基準の内容を同じものとするために、収益認識、リース、金融商品(減損、ヘッジ会計、分類および測定の限定的見直し)および保険会計などのプロジェクトを行ってきました。しかし、2010年前後から関係がこじれ始め、共同で議論は行うものの、同じ結論に至らなくなるという状況が現在まで続いています(同じ内容となっている基準は、企業結合と収益認識に関する基準の2つのみです)。

SECは、すでに触れたロードマップを受けて、2010年から多くのスタッフ・ペーパーを公表し、IFRSを米国に受け入れる際の影響および受入方法について検討を重ねてきましたが、先に述べたように、2011年中にIFRS採用の結論を出さず、世界中を失望させました。

米国がIFRSを受け入れる可能性として、4つの方法があります。そのうちの2つ、すなわち、米国基準を捨ててIFRSを採用する「Adoption」や、Convergence(移行期間)とEndorsement(IFRS適用後)を組み合わせた造語である「Condorsement」という方法を採用することは、ほぼあり得ないでしょう。

可能性があるのは、「任意適用」と「米国会計基準財務諸表に対する『補足資料』としてIFRSに基づく財務諸表を公表する」という2つの方法ですが、後者の場合は、実質的に2つの財務諸表を作成するという負担が生じます。それゆえ、私は、任意適用が一番現実的な方法であると思いますが、米国が、このままIFRS採用の方向性を示さずにいれば、SECの存在感は一層低下してしまうため、この「任意適用」と「補足資料」をベースに、どのようにIFRSを米国で受け入れるかについてSECが考え始めたというのが現状だと思います。

原則主義に基づくIFRSとは
よく、IFRSは原則ベースの会計基準だといわれます。世界中の上場企業への適用を前提としているIFRSは、特定国の法制度を踏まえた会計基準としてつくることはできません。したがって、各IFRSでは、その基準の基礎にあるコア原則を明確化し、例外を認めない(例外を設ける場合には類推適用を回避する)、そして、細かい規定をつくらないというアプローチをとっています。

数値基準や解釈指針の設定をできるだけ少なくする(問題があればIFRSそのものを改訂する)ようにもしており、こうすることで、多くの詳細な規定を作成することを回避できます。また、概念フレームワークおよびコア原則の範囲であれば、経営者の判断を柔軟に会計処理に反映することができ、企業の経済実態をより適切に反映することができます。

リース会計基準の見直し
リース会計基準の見直しは、2013年5月に公開草案が出され、2015年中に最終基準になる予定です。その後、IFRSとしての適用は2017年以降となり、日本の企業では2018年3月期辺りから適用となる可能性があります。

この見直しは、とくに借り手に大きな影響を及ぼし、オペレーティング・リースについても資産(利用権)および負債を認識することになります。これには不動産の賃借も含まれるため、オフィスビルを借りている会社は資産負債を計上しなければなりません。このような考え方は、契約しただけでは資産負債が認識されない未履行契約(たとえば、オフィスの3年間の清掃契約は、契約しただけでは資産負債は認識されない)に対して例外を設け、リース取引に限って、リース物件を借り手が使えるような状況になった時点で、未履行契約ではないと扱うことによってリース取引に係る資産および負債を認識しようとするものです。

リース取引に対してのみ例外を設けるので、サービス要素を含むリース契約では、サービス要素とリース要素を分け、サービス要素には、IFRS第15号「収益認識」の基準が適用されます。具体的には、メンテナンス付の自動車リース契約の場合、メンテナンス契約はリース取引ではないので、未履行契約として扱われますが、自動車のリース取引部分は未履行契約ではないと扱うので、両者を区別して会計処理する必要があります。

日本におけるIFRSの採用
日本では、IFRSは任意適用という形をとっており、任意適用企業は増加しつつありますが、まだ十分ではありません。IFRSを既に適用している企業数は28社あり、今後適用予定の企業数も28社となっています。のれんを償却せずに済むことからIFRSを導入している企業も多いのですが、採用理由はさまざまです。

今後、業界の1番手、2番手がIFRSを導入するようになると、3番手以降も続かざるを得なくなるという事態が起こることが想定されますので、間もなく急速にIFRS採用企業数が拡大してくるものと思われます。監査法人でも、IFRS導入に関する企業からの相談が増加しています。

今後の課題として、修正国際基準(JMIS)というものがあります。このJMIS自体は日本基準であり、IFRS適用企業数にはカウントされません。JMISの目的は、日本が考えるあるべき会計基準の姿を示すことにあり、採用企業数は問題ではないのです。

IFRSには、IFRSを採用すると、土地や製造設備などの有形固定資産すべてが公正価値で測定されるようになるという誤解がありますが、それは間違いです。製造設備は取得原価で計上し、投資の回収が見込まれる減価償却期間に配分するというのが基本的な考え方です。IFRSには有形固定資産の時価評価を選定できるという規定があるため、誤解されることがあるようです(時価評価の規定は、英国のように数百年も存在している建物などに対して長期にわたる物価の変動の影響を建物に反映させるために設けられています)。

また、IFRSではのれんは償却されないため、不健全な処理である(のれんの効果は永久に続かないので定期的にのれん償却をすべきである)という考え方が、日本では多くの経営者などから支持されています。のれん償却に関しては、償却する、償却しない(のれん代を払っても相手企業を買収する価値があると判断し、その後実際に想定通りのキャッシュ・フローを回収できている場合、そのような成功した企業買収からどうして損失を認識しなければならないのか)という考え方のどちらにも根拠があるわけで、いわば、基準設定を行う人々の判断で決まってしまうという一面があります。

持合株式の公正価値の変動については、保有期間中は「その他の包括利益」という当期純利益以外で損益として認識するという会計処理の選択をすることができます。この処理を採用した場合には、売却しても、売却益を当期純利益で認識することができません。これに対して、日本の多くの経営者は、売却してキャッシュ・フローが実現したときには、その売却時点で、売却益は当期純利益で認識すべきである(リサイクリング)とと考えています。

無形資産の開発費の資産計上に関しては、1)完成させることの技術上の実効可能性、2)完成させ、使用又は売却するという企業の意図、3)使用又は売却できる能力、4)将来の経済的便益を創出する方法、5)完成、使用又は売却を可能とするために必要な技術上、財務上およびその他の資源の利用可能性、6)開発期間中の支出を信頼を持って測定できる能力、という6つの要件を立証した場合に限り、資産計上が強制されます。ただ、この要件は比較的容易に満たすことができ、多くの場合で資産計上が必要となります。

しかし、日本の多くの経営者は、開発費は費用とすべきと考えているため、IFRSがこのように開発費を資産計上することに対しては、懐疑的に受け止められています。

質疑応答

Q:
日本の企業が心情的にIFRSに納得できないとしても、国際的な潮流を拒絶することはできないと思います。今後、一気に導入企業が増加した場合、監査法人は対応しきれるのでしょうか。
A:
監査法人としては、IFRSに通暁する人員に限りがあることから、IFRS採用企業が徐々に増加することが望ましいところです。現在でも、IFRSを導入する企業に対応できる人材は払底しています。IFRSのさまざまな規定を理解し、導入指導ができる会計士が限られているためです。少なくとも大手監査法人は同様の状況で、中小規模の監査法人にも引き合いが来ているようです。IFRSのわかる会計士を育てるには、最低でも2年はかかりますので、急に増やすのは難しい状況です。
Q:
IFRSは連結ベースの財務諸表に適用されているわけですが、単体の財務諸表については、どのようになっているのでしょうか。
A:
日本では、有価証券報告書に連結・単体の財務諸表が載っていますが、海外では、アニュアルレポートに単体の財務諸表が載っている会社はありません。簡素化されてはいるものの、単体の開示が必要かどうかは疑問といえるでしょう。

海外の考え方では、単体の財務諸表は主に税務のために作成しているものであって、投資家の意思決定における役割は期待されていません。しかし、だからといって、日本の有価証券報告書から単体の財務諸表が完全に除かれることはないと思います。
Q:
日本の場合、IFRSを強制適用はしないということですが、たとえば新聞などで「企業の利益ランキング」を見た時に、のれんを償却している会社、していない会社が混在していては、見る側にとって実態がわかりにくいと思います。なぜ任意適用になったのでしょうか。
A:
数字自体の比較可能性がなくなるというのは、ご指摘の通りです。現在、日本には同じ業界でもIFRS任意適用の会社と日本基準の会社がありますので、単純に比較できません。IASBは、世界中でバラバラな会計基準を理解し、差異を調整するという負担を投資家に要求するのは酷であると考え、基準を統一するためにIFRSを提唱しているわけです。

日本では、2009年頃に多くの企業がIFRSを推進する部署を設置したのですが、政権交代によって梯子が外された状態になってしまいました。その後、再び政権が変わり、徐々に動き出しているのですが、一旦冷え込んでしまった経営者のマインドが、まだ温まっていない状況だと思います。
Q:
企業の実証分析をする際、IFRSを適用している企業は、ROAが低めに出るという理解でいいでしょうか。
A:
そうなります。とくにリース会計基準の見直しによって、これまでオフバランスだったものがオンバランスになるため、総資産が増加してROAは低下します。
モデレータ:
見直しの背景には、リースをした会社と自前で設備を調達した会社にROAで差が生じるのはおかしいのでは、という考え方があると思います。
Q:
なぜ米国、インド、日本の3カ国がIFRSを採用していないのでしょうか。
A:
インドは、2001年にIASBが活動を始めた頃から「来年は採用したい」と言い続けていたのですが、政治の状況が難しく、なかなか進まないようです。現在も「今回は本当に採用したい」と言っているのですが、インドに合わない部分を除外する考えのようで、ピュアなIFRSという意味では疑念があります。ちなみに中国もIFRSを採用しており、ほとんどピュアだと言っているのですが、通達などを見ると大きく異なるようです。

米国は、2002年頃からSECがロードマップをつくるなどして前向きだったのですが、いよいよ採用となったときに、米国市場のみでビジネスをしている会社にとっては、現状で問題がないのに、なぜIFRSに変えなければいけないのかという反対が強くなりました。そしてIASBとFASBの間でリースや金融商品などの会計処理についての考え方に相違が生じ、共同プロジェクトも終焉したまま現在に至っています。

しかし最近、このままIFRSに背を向けていてはSECの影響力が低下するため、IFRSの導入について検討を進めざるを得ない状況になってきました。おそらく今年中に、一歩踏み込んだメッセージが出されるものと思っています。
Q:
公正価値について、ご説明いただきたいと思います。
A:
公正価値は、入口価値ではなく、出口価値(保有資産を売却して得られるキャッシュ・フロー)で測るものと定義されています。公正価値を測定する際には、評価技法には3つのレベルがあります。レベル1は、活発な市場における建値であり、修正することはできません。レベル2は、観察できる建値で、レベル1に該当するものを除いたものです。これは調整することができます。

よく批判されるのが、レベル3です。観察できないインプットであり、経営者の見積りをベースにできるため、恣意性が強く反映されることになるおそれがあるというものです。しかし、経営者が見積もりを行う際には、市場参加者が用いるであろう前提を用いなければならないとされており、企業のみが知っている情報を用いることはできない、という制限がついていますので、どのような経営者の見積もりも認めるということにはなっておりません。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。・・・ 独立行政法人経済産業研究所 配信 より

私のコメント : IASBは、一組の国際的に適用される質の高い会計基準(IFRS)を作成することを存続目的としています。日本は、IASBの活動費の9%弱を拠出しています。

無形資産の開発費の資産計上に関しては、

1)完成させることの技術上の実効可能性、

2)完成させ、使用又は売却するという企業の意図、

3)使用又は売却できる能力、

4)将来の経済的便益を創出する方法、

5)完成、使用又は売却を可能とするために必要な技術上、財務上およびその他の資源の利用可能性、

6)開発期間中の支出を信頼を持って測定できる能力、 

という6つの要件を立証した場合に限り、資産計上が強制されます。ただ、この要件は比較的容易に満たすことができ、多くの場合で資産計上が必要となります。しかし、日本の多くの経営者は、開発費は費用とすべきと考えているため、IFRSが、開発費を資産計上することに対しては、懐疑的に受け止められています。



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