Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

鍵の架けられた法王執務室

2005-04-04 | 生活
昨晩遅く、ローマ法王ヨハンネス・パウロ二世の死が伝えられた。金曜日の最後の塗油の儀式の報道に従って、土曜日は朝から一部の放送が差し替えられていたようだった。TVを点ける習慣がないので報道を追うことは出来なかったが、車の中で付けたラジオの文化放送波では盛んにレクイエムの歴史とミサ典礼の説明がなされていた。しかしこれが予め制作してあったものかどうかは確認出来なかった。平素は如何してもプロテスタントの影響が大きい放送の現場であるが、同波の支局が大司教区マインツに位置してその放送域の半分はカトリック教徒だろうからこれは当然だろう。

事後の報道は未明になってから少し観たが、独TV第一・二放送ならびに第三放送は全て現地中継を含めて、特別番組が放送された。民放報道系も、CNNを含めてヴァチカンからの中継を交えた体制が取られた。フランスの第二放送も同様であった。その反面、民放娯楽番組等は予定通りの通俗番組を流して著しいコントラストを示した。

公共放送の立場からすると、カトリック教徒の視聴者への配慮を十分に示す事になる。街頭インタヴューなどもある程度フィルターがかかっている事は否めないが、概ね基調は変わらなかった。カトリック信者からは仲介者法王への精神的繋がりが吐露される。全世界のカトリック信者の数を考えると、この精神的繋がりから教会権力の構造を超えて、改めてその影響力の大きさが計り知れる。最も印象深かった現地中継は、法王が大司教を勤めたポーランド南部の古都クラコウでの様子であった。ここでは、仲介者としての法王である以上にポーランド人アイドルの法王が偲ばれていた。イタリアでは、特にローマではディスコや商店が閉められて喪に伏した。カトリックの圧倒的多数を改めて印象付ける。

中継の合間に各局で一晩中絶えず放送された映像から法王が偲ばれ、その業績が纏められる。空飛ぶ法王と言われた開かれた内部の宗教的改革と並んで、他宗派や他宗教との宗教交流などが挙げられる。特にアシシでの世界宗教会議の様子は今見ても圧巻である。

東西ドイツの統合に演じた役割は当然の事ながら強調される。特にゴルヴァチョフ氏との会談や共産圏下のポーランドへの里帰り風景は、歴史的なクライマックスであったろう。しかしドイツカトリック教会における法王との確執は、女性聖職者の扱いや避妊、中絶等の問題で大きかった事も指摘される。改革的な法王の飽くまでも護った最後の一線が浮き彫りにされる。二度のドイツ訪問、それも二度目の青年達との席で、現実に即したカトリック教会のあり方を問われると、腰掛けたまま下を向いて目を閉じてしまうのが印象的である。このような意見に対しては、決してその場では答えなかったという。それらは、ローマ教会が宗教的、道徳的権威を保つために決して譲れなかったのだろう。また、トルコ人司祭の起こした暗殺未遂事件での恩赦風景は、今日映像で振り返って見ても重要なエピソードとなっている。

結局録画でしか観れなかったが、最後の復活祭の声の出ない祝福も大宗教の最高聖職者としての面目躍如たるものであった。聖人へ名を連ねるとの噂もあり、その政治的な成果とは別に、青少年への働きかけ、メディアでの露出と合わせ現代における聖職者としての評価は高い。

ドイツ連邦政府は半旗を掲げた。フランクフルトでは直後に鐘が鳴ったというがここでは何も聞いていない。我が町は、カトリックが少数派なので現在のところ半旗は掲げられていない。3キロ先のカトリックの隣町とは幾分違った対応となるのだろうか。これから、27年前のあの日のように、確かヴァチカンの何処からか烽火が昇るまでは法王不在となる。


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13 コメント

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TBありがとうございました (makiko kuzuha)
2005-04-05 11:55:53
バチカンの広場を埋め尽くす多くの信者たちをテレビ報道で見ていますと、シンボルである教皇の不在は彼らにとって重大事なのだろうなどと考えてしまいます。

白い烽火が上がるはいつになるのでしょうか・・・
誰がなっても (pfaelzerwein)
2005-04-05 13:22:50
makiko kuzuhaさん、コメントありがとうございました。烽火ですが、ネットで見るとご本人が改定された教会規約で今後無いだろうという事です。これも記録として訂正せずに置きたいと思います。確か10日から二週間以内となっていた筈です。誰がなっても前任者の影に隠れてしまうだろうというのが大方の見方ですね。正式な葬儀などは未だこれからですが。
トラックバック有難う御座いました。 (神弥 燐)
2005-04-05 14:59:12
ローマ法王のご逝去は、正式なクリスチャンでない私にとっても衝撃的なものでありました。

生前の彼の偉大なる働きが、今後もしっかりと受け継がれていかれることを心より願っています。

葬儀は8日らしいですね。ああ、参列したい・・・ぇ
Unknown (ANN)
2005-04-05 15:12:27
TBありがとうございます。

今はドイツからのレポートなんですね。

また楽しみに見させていただきます。



カトリック教徒の友人たちはミサに出向いたりと逝去の影響を多分に受けてるようですが、ヨーロッパでもほぼ日常生活を続けている友人のほうが多いようです。

TVにも象徴されているようですね。



世界から集まる観光客にも荘厳な威厳をもってたたずんでいるサンピエトロ寺院も、さらに厳粛な雰囲気に包まれるんでしょうね。
TBを通じて来ました (mariya)
2005-04-05 16:47:28
TBありがとうございます。

「フィレンツェからのつれづれに日記」のmariyaです。

他のヨーロッパの国の様子おもしろいです。

ドイツのことあまり知らないので、これからも拝見させていただきます。

ドイツワインに関しても興味あります。

トラックバックありがとうございました (Takeuchi)
2005-04-05 18:57:32
実は先代教皇がたった33日で逝去したというのは、今回の現教皇逝去で知りました。

年二度目のコンクラーベでの教皇継承は、おそらく本人も青天の霹靂だったはず。

その地位に甘んじることなく、文字通りグローバルな行動力は確かに偉大なものと思ったものでした。
TBありがとう!! (サンシン)
2005-04-05 23:22:30
キリスト教、特にカトリック信者には偉大な父を無くしたのは大きなことでしょうが、キリスト教を偶像崇拝の邪教とばっさり切っているイスラム教の人々はどう感じているのでしょう。アラビックの友達が今近くに居ないので何を考えているかは分かりません。



イギリスでは次のPopeはアフリカ出身の黒人ではないかとの予想もされています。イスラム世界に精通しているらしく、ムスリムとの友好が期待されるし、黒人のシンボルとしても有効に機能しそうです。



サンシン
ポーランド人、政教分離、教会の鐘、グローバル、ノストラダムス (pfaelzerwein)
2005-04-06 03:37:34
神弥 燐さん、コメントありがとうございます。そうですか、理解出来ます。政策的に大きく変える事が出来る人材は居ないようなので継承されるでしょう。只個人的な魅力が無いと影響力が限られるでしょうね。その辺の感じをポーランド人気質を軸に纏めてみましたので読んで見てください。







ANNさん、コメントありがとうございます。TVなどドイツ(フランスも)に関しては不思議に思うだけで、これで良いと言う気がします。何処までも法王は宗教者あって、その死を視聴者がどの様に受け止めるかは最高にプライヴェートな事ですね。勿論、イタリアやポーランドは違います。これについては新記事を読んでください。きっと分かって頂けると思います。だからフランスの政教分離は凄いと思います。



参照:キッパ坊やとヒジャブ嬢ちゃん [ 歴史・時事 ] / 2004-11-06







mariyaさん、コメントありがとうございます。フィレンチェ、ただ羨ましい。響きが違う。恐らく教会の鐘も。イタリアワインは、ここでは比較的評価が高くないですが、これは有余る太陽への僻みもあります。宜しく。







Takeuchiさん、コメント有難うございます。前回の事は私もうる覚えだったです。そのこともノストラダムスの予言に適合するという事を言う人も居ます。予言などよりも、法王が「二度も選出するとは思っていなかった、それが最後と思っていた。」。そして選ばれた時に、「不安で堪らなかった。」というところがとても人間味がありますね。それだからこその影響力です。そしてグローバルと言う言葉が叫ばれる前から、法王は主張しいていたというのがこちらのマスコミです。ある意味これはカトリックの宿命なのでしょうけど。







サンシンさん、コメント有難うございます。私も詳しく報道を追っているわけではありませんが、英国国教会と同様に法王が蒔いた種は確実に実っています。少なくともローマではモスクで特別な礼拝が行われています。モスリムもご存知のように全く一枚岩ではありません。それどころか宗教学的な論争は今週もプロテスタントの「本山」ドイツでは盛んです。だからこれは寧ろ芽が出ているとだけ言った方が良いかもしれません。



アフリカ人の枢機卿は一人居るという事です。この話はノストラダムスの予言から来ているようです。ドイツの枢機卿もこれを尋ねられていました。少なくとも人種地域を度外視して有力候補ではないということでしょう。

TBありがとうございます (大ねえちゃん)
2005-04-06 11:19:06
TBいただき、ありがとうございました。



私はキリスト教徒ではないのですが、ローマ法王のお姿を近くで拝見したときには、柔和でありながら力強いものを感じました。これまで精力的に活動された内容をみても、素晴らしい方だったと思います。

こちらからTBさせていただいた際に、エラーが出たので2度送信してしまいました、すみません。お手数をおかけして申し訳ありませんが、1つ削除をお願いいたします。
TBありがとうござました (rakurakuonsen)
2005-04-06 23:24:12
こんばんは。TBどうもありがとうございました。

淡々と、でも、じわっと染み込んでくる素晴らしい文章だなぁと感じました。この後のエントリーも拝読しました。

「神の器官の痛みを分けて」の中にある『彼の宗教』という言葉。そうなんだ、ローマ法王である「彼」ではなく、宗教者であった「彼」の氏を悼んでいるんだ、と改めて感じさせる表現でした。

生涯を全うすることの意味。この出来事が語りかけているのはそれなのかもしれないと感じたりしました。

素敵な文章、ありがとうございます。また、お邪魔します。





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