Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

先駆けの合理的判断

2014-05-24 | 文学・思想
PC遠隔操作事件を見ていて、誰でも犯罪者の心理を考えるに違いない。俗に言う愉快犯は何処にでもいるのだろうが、日本のそれらを見ていると、共通しているのはそれなりに合理的な判断が存在していない無償の犯罪が多いことだ - 所謂犯罪は割に合わないと言う損得勘定の欠如である。腹いせでも暴発でも何でもよいが、その社会自体が合理的な判断から目を背けて、場当たり的に刹那に生きているのが日本人でありその人生観と考えてもよいのか。

戦前戦中の大日本帝国の中枢部の決断過程がそのように批判されることがあるが、そうした合理的な判断をモットーとする昨今のドイツもナチドイツにおいては決して合理的な判断が支配していたわけではないだろう。

そうした非合理性が現在の日本社会の中枢部のあり方でもあるのが問題なのだが、遠隔操作事件の背後で田中龍作ジャーナルが山本太郎議員の質問としてそれを伝えている。そこでは「準内部被曝」として鼻血問題を追及しているのだが、科学的な検証を試みようとすること無しに、「考えられないと専門家が評価をしている」とする政府見解こそがまさしく非合理的な姿勢なのである。

同時に遠隔操作事件の被告は典型的な知的犯罪者であり、刑事コロムボファンにはお馴染みのように、殆ど完全犯罪が達成できたにも拘らず犯罪心理を観察することになって終焉を迎えた。更に「悪魔の経典」という作品を挙げて犯罪心理を被告が発言していることから、その映画化したものを観た。なるほど予想通りにそこでは金融市場やその心理構造が並行した現実社会として描かれているが、只単にそこにはヴァーチァルとレアルの並行関係だけでなくて、寧ろ情報とそれに伴う認知が主題になっていて、コミュニケーション理論などの考察もあるのだろう - 被告がまたしてもこのような情報を発信することで、それに伴う社会への影響を以って、本人自身の自意識を満足させるのである。

なるほど、その点からすれば、被告が八時間も掛けて登山して犯行を準備したり、観光の序に犯行を行ったりとする心理や、再収監時のシニカルな表情なども理解できるだろう。この種の認知力は、例えば三島由紀夫の作品の登場人物などにも描かれているのだが、そこでも嘘の構造などが重ね合わされていて、お馴染みのものであるかもしれない。

但し、現在の我々は、多くの学術的な解析などによって、そうした心理までを織り込むことで構造化された現実社会を生きていることが、嘗ての文芸的な示唆とは大きく異なるのであろう。恐らくコムピュータゲームなどの影響もありロールプレーなどは日常であり、その為には出来る限り自己認識などを希薄にするような作業が必要なのではなかろうか - こうした希薄化した自意識の先に、それを補う形での自己顕示欲の発露としての劇場型犯罪の動機付けが考えられる。

金融市場においても意志に基づく実体経済などよりも、市場心理こそがその実態であるように、こうして情報やその分析などから構造化された社会においても意志や合理的な判断以上に生じる場を予想すると言う作業に終始することになっている。

連邦共和国大統領ガウクの発言は、そうした場を予想した立ち振る舞いをするのではなく、正しく場に一石を投ずるような柔軟性と先駆けの必要性を説いているのだと思われる。しかしそうした合理性の追求が、実際に次期局面の場の形成に、どのような影響を与えれるのかは分らない。なるほど、脱原発の判断は大きな影響を与えているかもしれないが、大きな流れを変えたわけではなく、先駆けすることでの有利性の追求でもあるだろう。市場においても、先駆けすることでしかその有利性がないとすれば、そうした考え方はやはり合理的なのだろう。



参照:
憧れの移民国ドイツ 2014-05-23 | 歴史・時事
遠隔操作真犯人の二面性 2014-05-21 | テクニック
体を解し、頭も解す 2014-05-19 | アウトドーア・環境
活性化とは被曝すること 2014-05-11 | アウトドーア・環境
『美味しんぼ』言論弾圧事件 福島の母親たちが抗議 (田中龍作ジャーナル)

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