Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

気の遠くなるような企業

2014-07-12 | ワイン
イエズイーテンガルテンと称するワインの地所がある。ドイツで最も高価なワインの出来上がる地所の一つで、実際にドイツで二番目に高価なリースリングを排出していた。嘗ては、恵まれた陽光と芳醇な土壌から高級甘口リースリングも造られていたが、最近はグローセスゲヴェックスの代表格で力強いながらもミネラル的には比較的素直なリースリングが排出されている。

そのような土壌の特徴から残糖以上に豊かな果実風味から甘さを感じるので、どちらかといえば厳しいリースリングよりも豊満なリースリングとなりやすい。フォン・バッサーマンヨルダン醸造所もその傾向で更に甘口も醸造している。辛口のフォン・ブール醸造所にしても、毎年栗入りのザウマーゲンと合わせるように、その栗の旨みと合うのだ。

そうした中で王者は、当然の事ながらビュルクリン・ヴォルフ醸造所のそれで殆ど倍ほどの価格である。それは、ヴァイオリンのストラディヴァリウスに匹敵するほどの鋼鉄のような明晰さが魅力であり、その価格を裏づけしていた。しかし2013年産はこれが出されなかった。記憶を辿れば刈り取られていた風景があったのだ。理由は、葡萄の状態が悪くなったということだが、特別良いことはなかったがそれほど悪いとは思わなかった。

出来上がりのリースリングを試飲しても、葡萄の実りを見てもそれほど悪いとは思わなかったので、完全に植え替えとなったのには驚いた。一本をあれほど高価に売れるならばそれほど大きくない地所としてもその売上額は可也のものである。みすみすと売り上げを切り捨ててしまう判断は、醸造所を購入して営利を追及するバッサーマンヨルダンやブールのような身売りされた醸造所では全く不可能なのである。ミッテルハールトで独自の資本でやっている大手の高級ワイン醸造所は一軒しかないのである。その規模もドイツで第二番目であるからその財力が異なる。

そうして少しでも品質が落ちれば品質改良のために土壌改良から始めて、新たに選り抜かれたクローンが植えられて、最低十年以上掛けて初めての収穫となるのである。このような気の遠くなるような企ては資本投下型企業では不可能であり、個人がその財産価値を次世代に亘って向上させて行くような営みでしかありえないのだ。

既に今後グランクリュ指定が疑問視されているルッパーツベルクの地所ライタープファッドの収穫は十五年以上なされていない。それは満足の行くリースリングとならないからであり、その品質管理の厳しさを語っている。なるほどGCからPCへの格下げの噂があるとすれば、これはその土壌の可能性への疑問であり、究極の品質管理となる。それがVDPを動かす。

テロワーを引き出すことが高級ワイン醸造所協会VDPの方針である。しかし、その土壌の差異を引き出すだけで高級ワインが出来上がると考えるのは間違いで、その土壌に魅力が無ければ価値が無いことになる。そうした品質管理を含めての最終的な高級ワインの質であり、簡単に投資して最高級ワインを排出しようとしても不可能なのはこうした事情があるからだ。



参照:
雨がちな十一月の週末 2013-11-04 | 生活
胃袋がザウマーゲンに 2012-12-27 | 料理
ひさびさのドイツ その23 (1)  (モーゼルだより)

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