Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

ユダヤ啓蒙主義者の社会活動

2010-08-25 | 文化一般
クリストフ・シュリンゲンジーフの話題と共に伝えられていたのが、メンデルスゾーン・バルトロディーの未知の手紙の発見である。サザビーで三十二万ユーロで落とされたのが、今まで知られていなかった作曲家の手紙のその下書きであった。

1839年9月に、ライプチッヒ市の参事に宛てられた其れには、当時世界的な名声を獲得していたゲヴァントハウスオーケストラの楽団の報酬の賃上げ要求が書かれており、同時代の作曲家本人も移動を目指していたドレスデンのそれとの給料格差が社会背景にあるようだ。

ゲヴァントハウスのそれは作曲家が1835年にカペルマイスターとして指導者になってから急速に実力を高めていたが、給与面ではオペラの座付きや教会での演奏を兼ねて生計を立てている状況で、ドレスデンのクラリネット・ファゴット・ホルンの給与が管弦楽団全体の給与に相当するというからその格差は甚だしく、ゲヴァントハウスの音楽家の仕事量は増え続けていたというから尋常ではなかった。バッハの求人活動にも見られるように帝都ドレスデンと商業振興地ライプチッヒとの経済格差は我々現代人が考える程度ではなかったのであろう。さらにそれだけでは足らずにゲヴァントハウスの楽団員は旅籠でワルツやマーチなどを毎夜の如く演奏していたというから、現在の管弦楽団の演奏者が小遣い稼ぎに余興に精を出すようなものだろう。

さて、下書きの内容は五百ターラーの賃上げの他に、逝去した高等裁判長ビュルーマーの資産二万ターラーの使い道に関して、ライプッチッヒの音楽院を作るように要請するもので、アウグスト二世への直訴にも触れられている。

今回の競に共同参加した地元の博物館においても市当局の対応の裏側の事情が解析される貴重な資料となっているに拘らず、骨董的な価値の無いものとみなされ、一般からの寄付も含めて大成功裡に獲得したと言われる。

そして、音楽院の資料室にとってこの二十八ページに及ぶ下書きは、この作曲家が優れた技能を持っていただけではなくて、教育や文化をはじめとする社会活動に尽力した啓蒙主義者であることを示す今後学術的にも貴重な文献となるとされている。



参考:
Majestät, wir brauchen ein Konservatorium, Jan Brachmann, FAZ vom 24.08.10
啓蒙されたユダヤ人と大俗物 2009-11-01 | 文化一般
ワイン三昧 四話'06年I 2006-04-03 | ワイン
我々が被った受難の二百年 2010-04-04 | 音

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