Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

イナゴの大群-FAZを読んで

2005-05-05 | 数学・自然科学
イナゴの記事が、同じ日に三件もフランクフルター・アルゲマイネ新聞に掲載されている。度々ネタやアイデアを頂戴しているが、今回は「新聞を読んでとして」批評としたい。何故ならば構成、視点など遊び精神と批判精神に満ちていて、これに何一つ付け加える必要がないからである。ここ数ヶ月の紙面の傾向から、保守系高級紙として主要読者の経済人に対する配慮も見えて、逆に編集者の 本 気 も伺われる。お題は、「与党社会民主党首ミュンタフェリンクのイナゴ発言」である。氏曰く、


「投資家の幾ばくかは、彼らがその仕事を破壊する労働者についての配慮が無い。彼らは、無名で顔も無く、イナゴの大群のように企業に襲い掛かる。草原を裸に食べ尽くし、移動する。」



こうしてアルフォンス・カイザー記者は、イナゴ・バッタ専門家ペーター・デッツェル氏にインタヴューする。

イナゴとはそれ程の被害を与えているのでしょうか?:「最近は全くですが、戦後の猛暑の時とかはありましたです。ジャガイモ畑を荒らしたりですね。南シベリアや近東などでは、*聖書の通りです。」

聖書の災いは、我々に何らかの意味を持っているのですか?:「いいえ、嘗て孵化の巣だったルーマニアやブルガリアが肥やされてからは、大群が寄せる事はないですね。」

否定的なイメージと言うのは克服していると言う事でしょうか?:「その通りです。寧ろエコの観点から重要な要素です。沢山のイナゴがいれば、それだけの鳥がやって来て自然淘汰します。」

つまり、十分な生育環境があれば蔓延すると言う事ですが:「仰るとおり、餌が減れば、イナゴは何でも食べるようになる。人と一緒でね。菜食が肉食になってですよ。餌食の植物が減るとね、何でも食い尽くして増殖するんですわ。」

何でもと言ってもですよ:「殆んど何でもです。二種類いて、肉食性のものと、菜食性のもの。後者は見境がないですね。木の根まで食い尽くしますがな。想像すれば分かりますが、栄養の少ないものまで食べると自重がついて、それでぶくぶくと。」

去年の北アフリカの被害でも:「そうですよ。これにやられると生態系が崩れて、モノカルチャーになってしまって、昔は草原でも今は単作です。」

通常のイナゴの生態系での役割は?:「たんぱく質豊富ですから、多くの鳥がこれを餌にしてますね。二つ蜘蛛の巣があれば、一つにはこれが引っかかってますわ。哺乳類でも、そらハリネズミなんかはこれをよう食べますよ。逆にコロラド甲虫なんかは彼らがやってくれますです。食物連鎖の重要な要素ですな。」

これがいなくなるとしたら:「それでも何とかなります。代用は簡単ですね。」

それにしては、簡単に食用にされますね。飛ぶでしょ。:「はあ、でもね護らないんですね。攻撃的でないんでね。ただ略奪に生きてまして、それで、よく五センチのバッタに締め付けられてますわね。」

ハリネズミにやられるとは一体?:「ハリネズミは、哺乳動物の常温夜行性でしょ。イナゴは変温動物だから、夜は体温が下がってですね。昆虫は、草の枝に確りと引っ付いて、食べられない事を願っているだけでね。ほら、ハリネズミはそれたんまりです。」

イナゴが経済的なバランスを齎しているとして、イナゴのお陰で事業が成り立っていらっしゃるのでしょうか?:「いいえ、イナゴだけでは食っていけませんが、私どもの事業にとっては重要です。土地利用に関する貴重な情報を与えてくれます。」

農家が土地を肥やさずに草を生やすと、イナゴが押し寄せる:「仰る通り。未耕作地についてイナゴを観察すると農家がどれ程肥やしたか、それどころか遡って分かりますね。」

イナゴは、保護されている:「ドイツの90種類のイナゴで、幾つかは消滅して、幾つかは保護されてます。」

そうする事でどういう効果を齎します?:「土地計画で、土地や気候、動物の生息などを確りと定義出来ます。言うなれば、これが動植物学や生態系の研究の必要性ですよ。」

そのための企業ですか?:「勿論、公共的なですが。道路工事などの鑑定等を事業認可のためにするわけですね。」

イナゴが公共事業を変えたとか?:「ううん、避けられたらですが、新幹線や国道の事業では難しいですね。ただ、それに対して補償の処置はしなければいけません。」

ドイツでは、どこでもっともイナゴが見付かりますか?:「私の仕事机でしょ。虫かご一杯ですよ。それを除けば、食糧の無い所ほど、種類が豊富です。中山の高原など、北ドイツよりも南。スカンジナヴィアには15から20種類しか、ドイツは90種、イタリアは100種、はは、暖かければそっちの方へイナゴは行きますよ。」


愉しんで読めるように意図されているので、特別に正確に全部を訳す必要もあるまい。しかし意訳せずとも、読者が解釈するものだろう。

この記事の直ぐ上に掲載されている本記事は、ザウワーランド出身のカソリックのフランツ・ミンターフェーリンク氏が旧約聖書の言葉や響きや意味を良く理解してこのイナゴを使っていると説明している。つまり*出エジプト記(モーゼの書第二巻)10章の3-20節である。そしてカール・マルクスの 古 い 書 物 を紐解いて聖書仕立てのパロディーに仕上げている。

有名高級紙でも全く詰まらない論評を見かけた中で、開かれた形で問いかける記事の形式など秀逸である。勿論、受け取る読者によっては、真意が良く伝わらないかもしれない。しかし、選挙戦を前に啓示したトップ政治家の挑発としてだけで終わらせていない。このような高尚な話題を本当に問うて行こうと思えば、十分に地均しをする必要があるという事ではないだろうか。

意気盛んなこの政治家の顔写真を見ながら、ベットに行くと、カフカの変転ではないがイナゴになった夢を見そうである。



参照:資本主義再考-モーゼとアロン(3) [ 歴史・時事 ] / 2005-05-04
『社会』 ジャンルのランキング
コメント (8)   トラックバック (2)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 資本主義再考-モーゼとアロン... | トップ | ドイツワイン三昧 第四話 »
最近の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
勉強になりました (alice-room)
2005-05-05 14:53:49
TB有り難うございました。通り一辺倒のイナゴの大群イメージしか持っていなかったので記事はとても面白かったです。

イナゴも奥が深いですね!
はじめまして (NorthWind)
2005-05-05 15:53:00
TBを有難う御座いました。

成程、単にイナゴと言っても色々な立場と考え方などがあるものですね。

これについてはイナゴだけに限った話ではないのでしょうが。

まだまだ知らない事も多いですね。
はじめまして  (上州あられ)
2005-05-05 19:11:59
TBありがとうございます。おかげさまで、今まで害虫

というイメージしかありませんでしたが、イナゴの勉強

になりました。
新・旧訳聖書の世界、地震のような天災、歴史的・環境的な視点 (pfaelzerwein)
2005-05-06 06:38:29
alice-roomさん、皆さんが興味を持っているように新・旧訳聖書の世界が以前よりも社会の表舞台に出て来たような印象があります。10年ほど前は、こういう宗教的素材は米国と違い欧州ではより慎重に扱われて来た筈です。しかしEUの中で相対的に捉えられるようになって来て、扱いやすくなって来たようです。ドイツでは新旧教会合同の動きとユダヤ教会の再生などの背景もあると思います。







NorthWindさん、コメント有難うございます。聖書だけでなく風向きが変わって、イナゴが押し寄せるとか現実にある事で、地震のような天災に近いものでしょうね。ですから無くなるものでもないので、客観的に上手く付き合う方法を考えるという事でしょうね。







上州あられさん、コメント有難うございます。イナゴが歴史的・環境的な視点からこれほど重要な昆虫とは知りませんでした。イナゴも全く侮れませんね。

イナゴ (きゅきゅに)
2005-05-06 07:59:08
イナゴはトンボの赤ちゃんだと思ってました…



雑食の昆虫であっただけでも怖いのに、

種類も豊富であるなんて余計怖いですね。

地球温暖化でイナゴがさらに増えるかもしれないんですね。



TBありがとうございました。

こちらもこっそりTBさせていただきました。
Unknown (wata)
2005-05-07 01:58:22
TASCHEN社の1493Chroronicleという本を

持っていますが、内容はまだ10ページも読んで

いませんが、画像にイナゴの大発生と思える記事が

あったように思います。本当にいろいろとためになるブログで感心することばかりです。 
きゅきゅにさん! wataさん! (pfaelzerwein)
2005-05-07 14:07:56
きゅきゅにさん、コメント有難うございます。トンボの幼虫ヤゴとイナゴ、音が似ています。初めて気がつきました。



地球温暖化でと言うのは有り得そうな感じですね。該当の映画は内容を知らないのでコメントを避けさせていただきましたが、イナゴの大群のシーンで色々な事を表現している可能性が予想出来ます。イナゴの大群シーン映画解説など如何ですか?



お返しTB有難うございました。







wataさん、コメント有難うございました。早速、該当の本を調べてみました。



オリジナルは、Nuremberg Chronicleと云われているとか。創世記のシーンの版画のようですね。コピーが20万ユーロは凄く高いですね。関連らしき、リンクを貼っておきます。



http://www.philobiblon.com/examples/nuremberg.htm



http://www.taschen.com/pages/en/catalogue/books/art/all/facts/01644.htm



http://www.kcl.ac.uk/iss/library/speccoll/bomarch/bomaug.html



こちらこそ大変勉強になりました。

THANKS (wata)
2005-05-12 01:57:04
こちらこそ、恐縮です。

Calligraphy が趣味・道楽でして。

そかも、写本にもはまりまして、いろいろな資料を追求して、日々勉強しているのですが、難しい世界でなかなか進展しません。大変参考になるサイト紹介有難うございます。

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

2 トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。
『オーシャン・オブ・ファイア』 (きゅきゅに@ぶろぐ)
ヴィゴ・モーテンセンを観るための映画のはずでした。 馬なんてさっぱり興味なかったのです。 内容は… アメリカ先住民とのハーフであるフランク。 馬に乗って速達だか伝達だかをする仕事をしていたが、 インディアン虐殺の事件があったりして、 ちょっとやさぐれていた。
エクソシスト2(1977年) ジョン・ブアマン監督 (叡智の禁書図書館)
なんで今頃こんな古いの見てるのって言われそうですが、見たことなかったんですよねぇ~。ホラーもんそこそこ好きなのに。で、こないだヴァン・ヘルシング見てホラー系のものを観たかった時にちょうど目に入ったりしたわけです。 さて、いまや古典としての観さえあった最初.