ベルリンでのオバマ候補を伝える報道の幾つかに目を通した。ベルリンに残された外交的な宿題やそれ以上にベルリンの政治の行方は益々容易ならざる舵取りが必要になってくるようである。
緑の党のトリティン元大臣のように、「オバマは決して聖人ではないから」と、死刑を含む人権や銃規制に不満を示すが、それはオバマ候補の演説の中に十分な回答があった。
必ずしも完璧ではない二百年の米国を認め、世界のあらゆる問題の例を挙げ、協力関係の中で解決して行くとする基本姿勢は米国大統領として、もしくは言われるように世界大統領としての支持を受けるに十分であったろう。
ロンドンで働いた祖父からの結びつきを導入として、自由主義経済の中での「幸福」を追求、それに立ち憚るあらゆる「壁」を取り払うためには、必ずしも軍事的な影響力のみならず冷戦下のエアーブルッジでを例示して爆弾ではなく食料やお菓子が投下された様にとする作文は大変よく出来ている。
次期米国大統領にとっては、先ずは何よりもブッシュ政権で四面楚歌となった信用の回復がなによりもの国際協調関係再建のための基礎となるに違いない。
いづれにしてもドイツの首相候補もフランスのそれも選挙戦前にその人脈を示すために主要同盟国に伺いをたてに行くのは普通であったが、今回こうして米国大統領候補がベルリンを訪れた意味はその選挙戦におけるイメージ戦略以上に大きいと考えても良いだろう。
その意味から、戦勝塔の前に集まった群衆も話し手の選挙戦の出汁にされたとは全く思わせない内容で、内容に熱心に聞き入っていた様子は、如何に反ブッシュ意識が強かったかを示していた。
ドイツの政治に戻れば、海外派兵や自由主義に関して特にベルリンあたりでは、三割以上がオバマの政治姿勢とは相容れないことも事実であり、「トランスアトランティックな政治」にEUの枠内で十分にベルリン政権が対応出来るかどうかは、今回の受け入れに距離をおいた首相府の反応をみてもその不透明さが示されていた。
オバマ候補が解決していかなければいけない同性愛者や母子家庭に関する国内政策と同じく、EU内での差異と同様に大西洋の両側では、今後より一層の意見の交換や活発な議論がなされる事が望ましい。環境問題においてもオバマ大統領が十二分に解決出来るかどうかは、本人の言う通り協力関係に依存しているのも間違いないだろう。
兎に角、最近はニッチェに端を発するような政治学上の定理である「権力構造への執着」とは一風変わった修辞法を有力政治家が使うようになったと言われて、「希望への演説」を繰り返すオバマ候補のあり方も、ブッシュ政権時代の反動とも思えなくはない。演台の感じもなんとなく教会臭く、飛行機の「チャレンジ」の意匠もなかなか笑わせてくれる。
今回も閲兵を除いては実質的に国賓並みの扱いだったと言われるが、可能性のあった世界最大米軍ベースのラムシュタインへの立ち寄りはなかった。それよりは、大統領になってからハムバッハー城を訪れるのが彼には似合いそうである。
We are Obama we can believe in.
参照:
Obama in Berlin (ZDF)
オバマ、ベルリンに降臨、ドイツ大陶酔 (虹コンのサウダージ日記)
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必ずしも完璧ではない二百年の米国を認め、世界のあらゆる問題の例を挙げ、協力関係の中で解決して行くとする基本姿勢は米国大統領として、もしくは言われるように世界大統領としての支持を受けるに十分であったろう。
ロンドンで働いた祖父からの結びつきを導入として、自由主義経済の中での「幸福」を追求、それに立ち憚るあらゆる「壁」を取り払うためには、必ずしも軍事的な影響力のみならず冷戦下のエアーブルッジでを例示して爆弾ではなく食料やお菓子が投下された様にとする作文は大変よく出来ている。
次期米国大統領にとっては、先ずは何よりもブッシュ政権で四面楚歌となった信用の回復がなによりもの国際協調関係再建のための基礎となるに違いない。
いづれにしてもドイツの首相候補もフランスのそれも選挙戦前にその人脈を示すために主要同盟国に伺いをたてに行くのは普通であったが、今回こうして米国大統領候補がベルリンを訪れた意味はその選挙戦におけるイメージ戦略以上に大きいと考えても良いだろう。
その意味から、戦勝塔の前に集まった群衆も話し手の選挙戦の出汁にされたとは全く思わせない内容で、内容に熱心に聞き入っていた様子は、如何に反ブッシュ意識が強かったかを示していた。
ドイツの政治に戻れば、海外派兵や自由主義に関して特にベルリンあたりでは、三割以上がオバマの政治姿勢とは相容れないことも事実であり、「トランスアトランティックな政治」にEUの枠内で十分にベルリン政権が対応出来るかどうかは、今回の受け入れに距離をおいた首相府の反応をみてもその不透明さが示されていた。
オバマ候補が解決していかなければいけない同性愛者や母子家庭に関する国内政策と同じく、EU内での差異と同様に大西洋の両側では、今後より一層の意見の交換や活発な議論がなされる事が望ましい。環境問題においてもオバマ大統領が十二分に解決出来るかどうかは、本人の言う通り協力関係に依存しているのも間違いないだろう。
兎に角、最近はニッチェに端を発するような政治学上の定理である「権力構造への執着」とは一風変わった修辞法を有力政治家が使うようになったと言われて、「希望への演説」を繰り返すオバマ候補のあり方も、ブッシュ政権時代の反動とも思えなくはない。演台の感じもなんとなく教会臭く、飛行機の「チャレンジ」の意匠もなかなか笑わせてくれる。
今回も閲兵を除いては実質的に国賓並みの扱いだったと言われるが、可能性のあった世界最大米軍ベースのラムシュタインへの立ち寄りはなかった。それよりは、大統領になってからハムバッハー城を訪れるのが彼には似合いそうである。
We are Obama we can believe in.
参照:
Obama in Berlin (ZDF)
オバマ、ベルリンに降臨、ドイツ大陶酔 (虹コンのサウダージ日記)
受け継がれるモラール [ 文学・思想 ] / 2008-07-23
オバマ候補が演説する所 [ 歴史・時事 ] / 2008-07-12
誤りの自覚と認識 [ マスメディア批評 ] / 2008-06-29
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希望へ誘うオバマ候補 [ 雑感 ] / 2008-01-15
やはり欧州遊説となれば英独仏となるから、オバマがブッシュ後の米欧間和解を演出したいなら、米に近すぎる英ではなく反ブッシュ意識の強い独か仏、その2国の間では、米世論を意識して「事あるごとにたてつくヘンな同盟国」フランスより、「より控えめな同盟国」であるドイツに重点を置くのは当然の選択ですね。
もちろん訪問首都としてはケネディ演説やレーガン演説の記憶がなお鮮やかで、空輸や壁崩壊など冷戦下の米の対欧州政策の最前線だったベルリンの方が、パリやロンドンより象徴性は高い。
戦前・戦中の米の対ファシズム戦闘の欧州前線になったノルマンディーやシチリアを訪れても、2国間外交というより、戦勝記念式典みたいになっちゃいますしね。
米の対欧外交にとっては英独仏いずれも劣らず重要でしょうが、選挙向け「ショー」の場としては、首都ベルリンが米欧関係に関して持つ歴史喚起力はパリやロンドンをはるかに圧している事実に改めて思い当たりました。
パリやロンドンにはブランデンブルク門に比肩する20世紀史の象徴力を持つ場所は存在してない。
これはベルリンやドイツにとってはバカにならぬ外交財産かもしれません。
メルケルは米共和党政権への配慮からオバマへのブランデンブルク門提供を断ったようだけど、サルコジは大得意でオバマをエリゼに国賓級扱いで迎えてました。仏保守にとっても多国間主義に近いオバマの方が
マケインよりも歓迎というのが本音だからです。この辺にも「身勝手な同盟国」と「控えめな同盟国」の仏独のニュアンスの差が現れてるのかも知れません。
オバマから相手にされなかった仏社会党はムクれてますが。
後は、確かにオバマがゴルバチョフやワレサみたいな国外での方が受けがよいタイプに陥るリスクは否定できない気もします。
仏は、社会党だって黒人・アラブ系議員は極小で、左右両政党とも内部では選挙リストのしんがりにしかい入れてもらえない有色党員の不満は強いようです。
有権者のホンネに対応してるわけですが、そうした点に秘かな後ろめたさを感じている仏有権者にとっては、「対岸の」オバマを歓呼することは真に好都合な機会という面もあるような気がします。
なるほど仰るように、独仏では反イラク介入の意味合いが大きく異なりますね。それゆえか、とても面白いのは、SPDは右派は殆どオバマを同志として共感している様です。首相候補でもありえるシュタイマイヤー外相や外務省のスタッフが心躍らせた様は少々滑稽でもあります。
しかし、実際にはフランスとは事情は異なるものの社会主義国民政党の先行きは見えません。少なくともオバマ政権が成立しないと、その後のあり方も定まらないのではないかと思われます。
一方、保守政党の方は、良きパートナーへの期待をしつつ、直ぐに首相外交ブレーンのヴィルヘルム氏が、「アフガン増兵は無い、アフガンの自主を尊重」とオバマの希望を否定しました。
このあたり、色々な政治的配慮が見え隠れするのですが、左派党がオバマに対して一定の評価をしているのをみても興味深いです。
ただし、オバマの政策の具体性がまだまだ欠けるのは指摘されてますね。
人種問題や移民問題で言うと、オバマの存在や政策は、大きな影響を与えるとは思います。此方でも米国の話が出ると、やはりどうしても黒人問題となってしまうのですね。ZDFのインタヴューに答えた米国からの眼鏡をかけた留学生とそれを見上げる黒人の女友達の表情が印象的でした。
それにしてもオバマ候補の訪問は、欧州の政治にとても影響力があるんですね。仏大統領がオバマと並んでまるでアルベリッヒのような小醜男なので驚きました。それかマフィア映画の『Good Fellas』のトミーかと思いました。フランスというモードの文化で、あんだけ悪いルックスの指導者が出るという意匠も笑わせてくれます。あのモデルとの結婚も、オバマへの接近も、イメージの悪い保守主義と結びつくルックスの悪さを相殺しようと躍起になってるとしか思えません。ロワイヤルだったら、もっとウケはよかったはずです。しかし
「オバマが勝てばフランスは嬉しい、しかし、そうならなかったら、それでもフランスはアメリカの友だちだ」
というオバマ擁護の言葉は、サルコジに対する印象が一気に良くしました。
たしかに、オバマの演説は、預言者的なものです。イベントあるごとに家々に訪問するたびに見るポスターは、すべて精神指導者的な肖像画です。写実的な絵がないのが逆に妙です。
オバマのムーブメントは私たちのムーブメントですから、We are Obamaというのは、的を得てますね!「私たち」が、アメリカ人だけでなく、世界の人々、しかもそれがベルリンで証明されたわけですね。
兎も角、欧州では、過去八年間十分に酷かったとするのが米国の印象なので、サルコジでさえ良い格好が出来るのです。
サルコジが階段で一つ上段のいたとか。ヒットラーとムッソ-リーニの背比べを思い出しますね。
ブッシュなき後は、彼が悪役を一手に引き受けるのでしょうか。