Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

源流へと戻っていく

2014-12-29 | アウトドーア・環境
承前)スキー靴の歴史的な流れを見た。もちろん私自身は肝心のアルペンスキーの技術的な流れを追うだけの知識も経験も無いので、用具から一瞥するだけである。その点、登山の技術は後追いするだけの経験もある。それでも、同じアウワー親方に見せて貰った鋲が打ってある鋲靴に関しては殆どわからない。岩登りの問題点や雪の上での問題点などは話したのだが、経験がないとこれもどうしても表面的に過去を擬えることでしかない。

スキーの場合は、滑降技術も用具とともに変化して行っているので更に難しい。少なくとも今世紀になってからはカーヴィンスキーが技術的に開発されて、嘗ての足首の操作や角付けの方法が必要なくなってきている。するとどうしても靴にも要求されることが全く変わってきていて、私の使っていたスキー靴はそれ以前のものとして過去の遺物になってしまっているのを再確認したのである。

具体的には、サイド方向の支えなのだが、これが効かないと内足に乗れないから当然であり、今回比較したフリーライドのラングの靴も長めに支えてあって、膝から下がぐらぐらしないようになっている。そのためか、こうした歩ける靴も重量が増していて、とても驚いた。昨今の工業製品で新モデルが重くなっている商品などはとても珍しいのではないか?それもスポーツ用品なのである。これを思うと、フリーライドとは聞こえが良いが、益々アウトドーアの本筋から離れて行っているのではないかという疑惑である。その歩けるというのも、ロープウェーの頂上駅から歩きだして、スノーボーダーと一緒に200Mも登れば、降りて来るというものなのだ。

まさしくその靴の重量化にも増してこうしたスポーツの在り方に疑問を徐々に強めたことから、スキーツアーへの傾倒が強くなったのであるが、こうした感覚はなにも個人的なものではないと思うようになってきた。大雑把に自然回帰とかなんとかがいえないのは、そもそもスキーと登山の源流は深く繋がっていて、更にアルピニズムと呼ばれるものが近代的な思潮であり、そうしたツーリズムと深くかかわっているからだ。それでもあまりに観光事業化されたスキーなどがその価格の上昇とともに若者の感心をますます失っていくことも事実であろう。そうした基盤が弱体化すれば、業界をリードするようなオリムピックやその他の競技への感心も減少していき、こうしたビジネスモデルも成り立たなくなるのである。

今回、アウワー親方が引退して、初めて甥御さんのところに出かけたのだが、嘗てと比べるとやはりそのアルペンスキーへの意味合いも変わってきているようで、決してツアースキーの靴などが副次的な意味を持っていないことは確認した。我々都市圏の愛好家と違って、アルプスの谷での動向は大分早く進行しているので、ハッキリとスキーと登山が分化していくその源へと戻る雰囲気は感じることが出来たのである。我々登山畠の者からすれば、決してアルペンスキーは遠い存在ではなかったのだが、あまりにもこの間スキーが独自の発展をしてきたことから遠のいてしまったのかもしれない。

そもそもオフピステにおいてどれほどの滑りができるかの議論であり、そのスキー靴の発展はやはり注目される。勿論十分な市場が発展してそれなりのスキーツアー人口を集めないといけないだろうが、軽くて硬性の高い機能的な靴が手頃な価格てどんどん発売されるようになれば、必要なだけの高速ターンなどは可能な靴が出て来るに違いない。重量では一足1000グラムぐらいになれば先ずは十分だろう。スキーツアーの競技もあるようで、そのような向きには軽く早く登れる靴が発売されている。しかしそうしたものはバックルが少ないタイプで、決して固めのスキー板を操るには不適当なものなのだ。

最後の写真は、オーストリアの歌手で2006年にトリノでスラロームと複合で銅メダルを獲得したライナー・シェーンフェルダーの靴である。大阪のレクザム靴がオリムピックの表彰台に上った最初の成果だった。その金具の錆び方などにその滑りを思い描くのだ。あのサストリエのコースは、ヴェンゲンなどに比較すると、それほど難しそうな斜面とは思わなかったが、オリムピック競技となると飛んでもない氷の斜面に難しい旗門が待ち構えているのだろう。

今回入手した靴は植物樹脂を使ったpebaxRnewと称する素材を使っている。三割ほど排出量を減らして自然に優しいのは当然として軽量化がはかられているという。数値的な資料はないので詳しくは調べられないが、これで耐久性さえあればよいのだ。



参照:
初めてのツアースキー靴 2014-12-23 | アウトドーア・環境
昔の名前、今の名前 2006-03-06 | 雑感

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