Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

確認するまでと主張する横着

2011-08-03 | 雑感
小出裕章 (京大助教) 非公式まとめサイト」で知って、オランダの報道番組の一部を観た。福島の人達がもはや誰にも頼ることなく自らの判断でできるだけのことをしている姿は、とても平静ではいられないほど痛々しいとともに、観る者に勇気を与えるような生命力をそこに感じさせるのではないだろうか。恐らく日本のマスメディアでは映されていないような赤裸々な姿がそこにあるように思われる。正しい情報が共有されていないことは如何に恐ろしいことか。そして事故分析はそれが確認される前に安全優先で必要な処置などが講じられるのが航空業界などでの常識なのである。

エールフランス447便の南米での墜落事故の分析報告が出ていた。二年以上前の行方不明からブラックボックスが見つかりそれを分析した結果である。機長に対して二人の若い操縦士がトレーニングのために操縦していたのだが、赤道特有の積雷雲の悪天候時に起きた人為的な事故とされる。

機長が二人の副操縦士に対してなんら指示を与えずに休みに入ってから、積乱雲の中に入ったA330 は対空速度を量るゾンデが凍り付いて、速度が落ちたことで自動操縦から手動に切り替えられた。A330におけるこの計器の不良はA340ほど頻繁ではないが起こることが知られているようだ。ベルヌイの法則を利用した所謂ピトー管と呼ばれるもので既に該当のターレス社製のAAタイプはABもしくは殆ど他の旅客機のようにはグッドリッチのものに2009年に全て交換されているようだ。

手動に切り替えてから機長がコックピットに戻ってくるまでに、高度飛行の経験のない副操縦士は、手動での操縦のなすすべがなく、頭下げて降下し続けた - 安定巡航が乱気流によって妨げられた。速度計で275ノットから60ノットへとつまり時速500KMから110KMへと急減速したからである。それに対して機長は頭を上げて体勢を立て直そうとする。そこから最後まで失速注意の警報がなり続けるのであった。機長が戻ってきても結局その状況に正確に対応することなく墜落したということである。

記事によれば、頭を上げすぎても実際にはその角度が表示されないので操縦者が必要以上に角度をつけすぎて失速することがあるという。現在の飛行機はデジタル化されていて、我々が印象するようなアナログ表示の水準計のようなものが数字化されていると思っていたのだが意外であった。また急上昇のときは警告が鳴りっぱなしになることも分かるのだが、フルパワーでも経験豊かなパイロットが失速させてしまうようなことがあるのもやはり驚きである - ロイターのヴィデオを観るとストールと呼ばれる境界層剥離による失速現象が警告通り空気の薄い一万メートルを超える高高度で起きたようで、その状態から経験豊かなパイロットがなぜ体勢を立て直すことが出来なかったのだろうか?なぜそうした高高度から頭を下げて加速させなかったのか?対空速度が分らないとこうなるのだろうか?

思い起こせばエアバス社製の旅客機の処女飛行のときもミュールホーズの山に墜落させていたが、どうも高度に自動化されて完成された機械は手動で操縦しようとするとそれなりの困難が付きまとうような印象は免れない。

訓練における手動操縦や失速回避の訓練の欠如などの人為的なミスとしてこの事件は事故究明されるようであるが、実際にエールフランスの事故率や死亡者数は欧州のルフトハンザやBAと比較にならないほど多い。1981年以降だけをとっても43件の事故で351人の死亡者を出している。ドイツと英国のそれぞれは、11件二名、59件一名である。

こうしたところに一種のフランス人の横着さを感じるのは私だけではないだろう。様々な面で各々の文化の特徴が出るものである。今朝もパン屋に行くときにヘリが飛んでいたと思ったら、ヘリ部隊の者が二人道を歩いていて、いつもの森への入り口の路線バスの迂回場所にヘリを着陸させていた。自動車クラブのそれだったので急病人か怪我人だろうが、医者らしきは見えなかった。羽が動いていたのでパイロンの前を通り抜けるのに注意したが、羽は直ぐに止まった。無風で視界が効いて電線がないからにしても森の入り口の狭い敷地に自信を持って着陸させるものだと感心する。以前は自宅の前の広場にも街路樹が植えてなかったので着陸させていたのだった。

それにしても東電や政府の「まだ確認できていないので話せない」とするあの横着さに匹敵するような文化を日本ではあまり見かけない。あるとすれば所謂日本の田舎者といわれるそれの特徴なのかも知れぬ。決して文化とは言われないものなのである。確認できていないうちに次の事故が起こるのである。



参照:
Ohne Orientierung, Peter-Philipp Schmitt, FAZ vom 30.04.2011
Pitot-Sonden-Austausch an A330/340 (airliners.de)
タービンが力強く回るところ 2011-07-04 | テクニック

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