※ オーストリア/ウィーン美術史美術館編 ‐ 中欧美術館絵画名作選(30)
徹底した写実性と劇的な明暗対比や感情表現で、多くの画家に大きな影響を与えたとされるバロック期最大の巨匠にして無頼の画家カラヴァッジョ(1573-1610)から美術史美術館の後半を始める。
余談だが本名はミケランジェロ・メリージ、35歳の時に喧嘩で相手を殺し、ローマからナポリに逃れた彼に似合わぬ名前だ。
余談序に小編、ローマにバロックの奇才<カラヴァッジョとベルニーニ>を訪ねる旅、その<ナポリ>まで足を延ばしたが、現在、<悔悛するマグダラのマリア>で中断、何時か再開したいと思っている。
その彼がモデナ公の注文に応じ、ナポリで着手したとされる 「ロザリオの聖母」(上)が今回の作品。
本作、<マントヴァ公>に献上された後、彼と同時代のフランドルの画家ルーベンス(1577-1640)たちが購入、<シエナの聖カタリナ>などを輩出したドミニコ修道会のアントウェルペンの聖堂に奉納されたのだとか。
主題は、清貧をモットーとするドミニコ修道会を創設した聖ドミニコが最初に行ったとされる<ロザリオ>を用いる祈り、“ ロザリオ信仰 ” を普及するためだったとされている。
画面は、天の女王たる聖母が右側のロザリオを手にする聖ドミニコに指示を与え、左側には修道会の聖人である殉教者ペトルス、その隣には修道会で最も有名な神学者聖トマス・アクイナスが配されている。
そして、彼の作品の特徴のひとつである<赤のカーテン>が、この情景の儀礼性を高めている。
ところで、この絵を見て少し首を傾げる向きもあるのでは。
画面の手前部分(下/部分)、跪いて手を差し伸べる信者たちは、なぜ聖母子じゃなく聖ドミニコ、あるいは、彼らの方をみている襟飾りのついた黒服の奉納者に腕を伸ばしているのだろうかと。
カラヴァッジョは、聖母と聖人たちが手前の信者らには “ 隠されている ” ことを示唆。
それが取りも直さず本作を前にした者に “ 恰も修道士とともに聖母子に祈りを捧げている ” かのような印象を与えることを意図、したのだとすれば面白い。
印象と言えば、ナポリの<ピオ・モンテ・デッラ・ミゼリコルディア聖堂>の正面祭壇に架かる 「<慈悲の七つのおこない>」(下)の直後に描かれたとされる本作、イメージが重なる雰囲気があって聊か紛らわしいのも面白いと言えば面白い。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1146
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