ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
カタリナと歩いた街、優しい人たちとの折々の出会い・・・
それは、想い出という名の心の糧 

続・カラヴァッジョ ‐ 美術史美術館(13)

2016年06月22日 |  ∟オーストリアの美術館

 ※ オーストリア/ウィーン美術史美術館編 ‐ 中欧美術館絵画名作選(31)

 バロック絵画最大の巨匠にして無頼の画家カラヴァッジョ(1573-1610 /イタリア)。
 ドイツ・ルネサンス期に活躍した<クラナハ>(1472-1553)まではいかないが、彼もまた同じモチーフで多くの作品を描いている。

 その彼の  「ゴリアテの首を持つダヴィデ」(左)が今回の作品。

 主題は、旧約聖書・サムエル記(上/17章)を典拠とする “ ダヴィデとゴリアテの戦い ”。
 ベツレヘムの<ルツとボアズ>の孫のエッサイ、そのエッサイの八人の息子の末子で士師サムエルより香油を塗られた<青年ダヴィデ>、敵対していたペリシテ軍の屈強な闘士ゴリアテの額を投石によって打ち、俯けに倒れたゴリアテの首を刎ねる場面。

    

 彼は、これをモチーフに本作の他に 「ダヴィデとゴリアテ」(中/プラド美術館蔵)、「ゴリアテの首を持つダヴィデ」(右/ボルゲーゼ美術館蔵)と、知る範囲では二作を描いている。

 ところで、カラヴァッジョの絶筆が何れの作品であったかは判っていないのだそうだ。
 が、ボルゲーゼ美術館収蔵版は彼が没した1610年頃に描かれた可能性が高く、作品が有する陰鬱な雰囲気は凄惨な場面性とも相俟って、彼の最晩年の陰鬱な思想に叶うものともされているようだ。

 加えて青年のさも嫌そうな表情は、切り取られた首に自分の顔を写すことによって、青年に自らの稚児を写したものなのだとか。

 この趣向は、盛期ルネサンスの巨人ミケランジェロ(1475-1564)が 「<最後の晩餐>」(システィーナ礼拝堂)で、聖バルトロメオの<剥がれた皮膚>に自分の苦悩に満ちた容貌を重ね合わせたことを想起させ、最晩年のカラヴァッジョが絶望に近い状況にあったことを窺わせるのだともされている。

     

 嬉しいことに、その彼の 「荊の冠を被ったキリスト」(左)も架かっていた。

 主題の “ 荊冠を被ったキリスト ” をモチーフにする作品、これも知る範囲のことだが 「<キリストの笞打ち>」(中左/カポティモンティ美術館蔵&中右/ルーアン美術館蔵)、「この人を見よ」(右/ジェノヴァ美術館蔵)の四作を描いている。

 ちなみに本作、真贋論争が長い間続いていたらしいが、展示されているということは決着がついたのだろう。
 で、カラヴァッジョのフアンのカタリナ、「嬉しい!」と喜んだのだが、貸出中でがっかりしたり、予期せぬ作品に出会えたり、それもまた一期一会というものなのかも知れない。
 Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1148

 ※ 「美術史美術館(12) ‐ カラヴァッジョ」へは、<コチラ>からも入れます。


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