ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
カタリナと歩いた街、優しい人たちとの折々の出会い・・・
それは、想い出という名の心の糧 

マネ 「温室にて」

2017年08月17日 |  ∟ドイツの美術館

 ※ ドイツ ‐ ベルリン/アルテ・ナツィオナールガレリー編 (1) ‐ 中欧美術館絵画名作選 (83)

 ベルリンはゲマルデ・ギャラリーで、ルネサンスからバロック期辺りまでの作品を訪ねた。
 他にも訪ねたい美術館、見たい作品があって、自由ハンザ都市ハンブルグを経てフランクフルトに向かうことにした。
 が、その前に訪ねておきたい作品がこの街ベルリンにあるので、少しだけ寄り道をしたい。

 東西再編以降、目覚ましく変貌を遂げようとするベルリンの美術館群。
 そのひとつ旧国立美術館、現アルテ・ナツィオナールガレリー(上/08年秋当時)が訪ねておきたいその美術館である。

 古いを意味するこの美術館、ドイツのロマン主義を代表するフリードリヒ(1774-1840)と象徴派のベックリン(1827-1901)に加え印象派など、20世紀芸術以前の作品が並ぶ。

 前書きが長くなった、そのアルテの最初の作品は、印象派の巨匠エドゥアール・マネ(1832-1883)の 「温室にて」(1878-79年)。

 マネが晩年、というより亡くなる三年ほど前、46歳の時に描いたとされる本作、モデルは画家と親交のあったジュール・ギュメ夫妻とされている。

 異国情緒に溢れる植物が茂る温室内のベンチに腰掛ける夫人、そのベンチの向こう側から身を乗り出すギュメの姿が描かれている。

 この作品を眺めていると聊か不思議な感覚に捉われる。
 それは、ギュメは妻の方へ視線を向けているが、妻は夫を見向きもせず正面へと視線を向けていることによって、与えられるもののように思われる。

 この妻の一見無関心な態度は、当時の上流社会の女性の取るべき慎み、節度によるとされていたようだ。

 が、ふたりの関係がもたらすわざとらしさ、ぎこちなさとも取れなくもなく、何れにしても画家は、それを客観的に切り取った、と推し量ったのだが、どうだろうか?

 このすれ違ったような構図、本作の二年後に傑作 「<フォリー=ベルジェール劇場のバー>」(1881-82年/コートールド美術研究所蔵)を描いてい、そこにも顕著に見られる。
 ちなみに、この頃には壊疽のため歩行困難となったマネ、「劇場のバー」をサロンに出品した翌年に左足を切断、同年4月に死去したとされている。
 Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1361

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