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安倍首相所感「和解の力」全文 (NHK NEWSWEB)

2016年12月28日 | 日米同盟と日本の安全保障
安倍首相所感「和解の力」全文
NHK NEWSWEB 12月28日 7時26分

 オバマ大統領、ハリス司令官、ご列席の皆さま、そして、すべての、アメリカ国民の皆さま。
 パールハーバー、真珠湾に、いま私は、日本国総理大臣として立っています。
 耳を澄ますと、寄せては返す、波の音が聞こえてきます。
 降り注ぐ陽の、やわらかな光に照らされた、青い、静かな入り江。
 私のうしろ、海の上の、白い、アリゾナ・メモリアル。
 あの、慰霊の場を、オバマ大統領とともに訪れました。
 そこは、私に、沈黙をうながす場所でした。
 亡くなった、軍人たちの名が、しるされています。

 祖国を守る崇高な任務のため、カリフォルニア、ミシガン、ニューヨーク、テキサス、さまざまな地から来て、乗り組んでいた兵士たち  が、あの日、爆撃が戦艦アリゾナを二つに切り裂いたとき、紅蓮の炎の中で、死んでいった。
 75年が経ったいまも、海底に横たわるアリゾナには、数知れぬ兵士たちが眠っています。
 耳を澄まして心を研ぎ澄ますと、風と、波の音とともに、兵士たちの声が聞こえてきます。

 あの日、日曜の朝の、明るく寛いだ、弾む会話の声。自分の未来を、そして夢を語り合う、若い兵士たちの声。最後の瞬間、愛する人の名 を叫ぶ声。
 生まれてくる子の、幸せを祈る声。
 一人、ひとりの兵士に、その身を案じる母がいて、父がいた。
 愛する妻や、恋人がいた。
 成長を楽しみにしている、子どもたちがいたでしょう。
 それら、すべての思いが断たれてしまった。
 その厳粛な事実を思うとき、私は、言葉を失います。
 その御霊よ、安らかなれー。
 思いを込め、私は日本国民を代表して、兵士たちが眠る海に、花を投じました。



 オバマ大統領、アメリカ国民の皆さん、世界の、さまざまな国の皆さま。
 私は日本国総理大臣として、この地で命を落とした人々の御霊に、ここから始まった戦いが奪った、すべての勇者たちの命に、戦争の犠牲 となった、数知れぬ、無辜の民の魂に、永劫の、哀悼の誠を捧げます。
 戦争の惨禍は、二度と、繰り返してはならない。
 私たちは、そう誓いました。

 そして戦後、自由で民主的な国を創り上げ、法の支配を重んじ、ひたすら、不戦の誓いを貫いてまいりました。
 戦後70年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たち日本人は、静かな誇りを感じながら、この不動の方針を、これからも貫いてまいります。
 この場で、戦艦アリゾナに眠る兵士たちに、アメリカ国民の皆さまに、世界の人々に、固い、その決意を、日本国総理大臣として、表明いたします。



 昨日、私は、カネオへの海兵隊基地に、一人の日本帝国海軍士官の碑(いしぶみ)を訪れました。
 その人物とは、真珠湾攻撃中に被弾し、母艦に帰るのをあきらめ、引き返し、戦死した、戦闘機パイロット、飯田房太中佐です。
 彼の墜落地点に碑を建てたのは、日本人ではありません。
 攻撃を受けた側にいた、米軍の人々です。
 死者の、勇気を称え、石碑を建ててくれた。
 碑には、祖国のため命を捧げた軍人への敬意を込め、「日本帝国海軍大尉」と、当時の階級を刻んであります。 


 The brave respect the brave.
 「勇者は、勇者を敬う」

 アンブローズ・ビアスの、詩(うた)は言います。
 戦い合った敵であっても、敬意を表する。
 憎しみ合った敵であっても、理解しようとする。
 そこにあるのは、アメリカ国民の、寛容の心です。
 戦争が終わり、日本が、見渡す限りの焼け野原、貧しさのどん底の中で苦しんでいた時、食べるもの、着るものを惜しみなく送ってくれた のは、米国であり、アメリカ国民でありました。
 皆さんが送ってくれたセーターで、ミルクで、日本人は、未来へと、命をつなぐことができました。
 そして米国は、日本が、戦後再び、国際社会へと復帰する道を開いてくれた。
 米国のリーダーシップの下、自由世界の一員として、私たちは、平和と繁栄を享受することができました。
 敵として熾烈に戦った、私たち日本人に差しのべられた、こうした皆さんの善意と支援の手、その大いなる寛容の心は、祖父たち、母たち の胸に深く刻まれています。
 私たちも、覚えています。
 子や、孫たちも語り継ぎ、決して忘れることはないでしょう。



 オバマ大統領とともに訪れた、ワシントンのリンカーン・メモリアル。
 その壁に刻まれた言葉が、私の心に去来します。

 「誰に対しても、悪意を抱かず、慈悲の心で向き合う」。
 「永続する平和を、われわれすべてのあいだに打ち立て、大切に守る任務を、やりとげる」。
 
 エイブラハム・リンカーン大統領の、言葉です。
 私は日本国民を代表し、米国が、世界が、日本に示してくれた寛容に、改めて、ここに、心からの感謝を申し上げます。



 あの「パールハーバー」から75年。
 歴史に残る激しい戦争を戦った日本と米国は、歴史にまれな、深く、強く結ばれた同盟国となりました。
 それは、いままでにもまして、世界を覆う幾多の困難に、ともに立ち向かう同盟です。
 明日を拓く、「希望の同盟」です。
 私たちを結びつけたものは、寛容の心がもたらした、the power of reconciliation、「和解の力」です。
 私が、ここパールハーバーで、オバマ大統領とともに、世界の人々に対して訴えたいもの。
 それは、この、和解の力です。
 戦争の惨禍は、いまだに世界から消えない。
 憎悪が憎悪を招く連鎖は、なくなろうとしない。
 寛容の心、和解の力を、世界はいま、いまこそ、必要としています。
 憎悪を消し去り、共通の価値のもと、友情と、信頼を育てた日米は、いま、いまこそ、寛容の大切さと、和解の力を、世界に向かって訴え 続けていく、任務を帯びています。
 日本と米国の同盟は、だからこそ「希望の同盟」なのです。




 私たちを見守ってくれている入り江は、どこまでも静かです。パールハーバー。
 真珠の輝きに満ちた、この美しい入り江こそ、寛容と、そして和解の象徴である。
 私たち日本人の子どもたち、そしてオバマ大統領、皆さんアメリカ人の子どもたちが、またその子どもたち、孫たちが、そして世界中の  人々が、パールハーバーを和解の象徴として記憶し続けてくれる事を私は願います。
 そのための努力を、私たちはこれからも、惜しみなく続けていく。オバマ大統領とともに、ここに、固く、誓います。
 ありがとうございました。
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