積み減らす

岡本太郎は年を重ねるにつれ、
積み重ねるのではなく「積み減らす」のだと言っていた。
私はそれを「削ぎ落とす」と解釈している。

20代の頃は、彫刻に喩えたら、人物像を作るとして、
粘土で大まかな形を作っていく時期だろう。
あとで削ぎ落とすのだから、余分なものをたくさんつけておいた方がいい。

30代はそこから少しずつ削ぎ落とし始める時期だろう、と私は思っている。
これから40代、50代と時が経つにつれ、
だんだん私が彫り進める「人物像」が完成に近付いてゆくのだろう。

卑近な例になるが、20歳になったばかりの仕事仲間は
月のカードの返済が10万円近くになる、という。
ほしいものがたくさんありすぎて困るらしい。
「CDも車も家具も服も、何でもほしいんです」
確かに私にもそういう時期があった。
見るもの全部ほしくて、ちょうどその時は韓国に住んでいたので、
「日本に住んでいる人はこんなにかわいいものばかり溢れていて、
どうやって物欲を抑えているのだろう？」と真剣に思ったものだ。

時は流れ。
結婚し、使えるお金にも限度が出来た。
独身時代は今よりも自由になるお金が多かったため、
最初はどうなることか、と思ったけれど予想以上にお金を使わないので
お小遣いがキャリーオーバーされている。
そのキャリーオーバー分で洋服が買えたりするのだが。

30年以上生きてきて、体についた肉や心にあるきれいじゃないものを
削ぎ落とし、積み減らしながら、より美しい40代、50代が迎えられたら、と
随分先のことを考える私であった・・・。

白洲正子さんもこのように仰っていることですし。