ペンギンの憂鬱

日々のうだうだ~読書と映画と酒と料理~

静かな爆弾/吉田修一

2016-10-31 | 読書
テレビ局に勤める早川俊平はある日公園で耳の不自由な女性と出会う。
音のない世界で暮らす彼女に恋をする俊平だが。
「君を守りたいなんて、傲慢なことを思っているわけでもない」
「君の苦しみを理解できるとも思えない」「でも」
「何もできないかもしれないけど」「そばにいてほしい」。
静けさと恋しさとが心をゆさぶる傑作長編。
(「BOOK」データベースより)

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海の底のような、静かな小説でした。。
文章で、ここまで寂寞とした雰囲気が出せるのか!すごいぞ、修一

恋愛小説でありながら、報道の世界で仕事に追われる俊平の躍動感との
コントラストが、余計に響子の静かな世界を際立たせている。

音のありすぎる世界の怖さ、不気味さ。
健常者としては当たり前のことが、響子と一緒にいることで
恐怖という側面を帯びてくるってのが、なるほど、考えさせられました。
最後の神宮球場の場面ね…
私の中では観客全員がデスマスクをしているようなイメージに変換。
一つの事象は見る人・感じる人によって全く違うんだなぁ

あと、書きすぎてないのがよろしい!
恋愛小説なのに、クールで淡々として、何も余計なことを書いていない。
途中で、この2人は本当に恋人なんだっけ?と確認したくなるくらい
恋愛に関する描写は無い。
なのに、秋の終わりのような物悲しく寂しい時に、一枚のブランケットに
包まれるような2人の淡く暖かい優しさのようなエンディング!
なんて、なんて素敵な小説でしょう。
久しぶりにまた吉田修一をいくつか読んでみよう。
うん。


⭐︎


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