スウェーデンの教育って?!

スウェーデンの特別支援学校で教員をしています。日々、目にして、耳にしているスウェーデンの教育の実態。

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スウェーデンの学校選択自由化が招いた悲劇

2012年05月20日 10時42分54秒 | 教育一般

 スウェーデンでは、1990年代「学校選択の自由化」が行われました。1992年からは、公立と私立の学校の両方で選択の自由ができるようになりました。2012年の今、あれから20年がたち、これに対する批判が多く聞かれるようになりました。5月に入り、Skolverketという学校関係を扱っている機関も、学校選択の自由化のレポートを出し、それを批判したので、新聞でも大きくかかれるようになりました。

 学校を自由に選択できることは、民主的であり、聞こえはとてもよいのです。この問題は、ここ数年よく聞かれるようになり、学校選択自由化に対する調査を行うべきだという声があったのです。政治家がこれを阻止しようとしたらしいのですが、結局調査は行われることになり、その結果が出できたのかなと思っています。

 スウェーデンの学校選択自由化での問題をまとめてみたいと思います。

1.学校間の差が大きくなった。スウェーデンの学校の均等性がなくなった。

 学校が自由に選べることになり、保護者の教育レベル、教育的関心が大きな意味を持つようになり、また、保護者が外国人であるかないかも大きな意味を持つようになりました。関心の高い親は、子どもが生まれた時点で小学校の順番待ちに並ばせるくらいの気合の入った方もおり、そこまでいかなくても、より良い学校に入れるためにがんばります。学校に入学してからも、クラスの雰囲気や教員、移民の子どもの人数などなどを理由に、学校を変わっていく子どもが大変たくさんいます。

 私が聞いた例などは、こんな感じ。ストックホルム郊外の学校。スウェーデン人の子どもが多く通っている比較的落ち着いた学校だったそうです。それを聞いた移民の保護者が自分の子どもを通わせます。数名のうちはいいのですが、だんだんと増えてくると、スウェーデン人の親たちが自分の子どもを違う学校に変えていくと。たいていの場合は、ストックホルム市内の有名な学校などへ転入させるらしい。一人学校を変わると、それに伴って、数人のお友達たちが一緒に学校を変わっていく。

 こういった話はよく聞くもので、学期途中でもお構いなしで席さえあけば、次々と生徒が転出転入してくるという現状に、教員は困ってしまう。上記では、スウェーデン人の親と書きましたが、これは、移民の親も同様で、熱心な移民の親も、自分の子どもをより多くのスウェーデン人の子どもがいる学校に次々と変えていくために、同様の問題が起きてきます。

 こうして親の熱心さや背景などによって子どもが学校を選ぶようになり、学校間の差が広がっていきました。

2.登下校に時間がかかる

 上記のように学校を変わるため、だんだんと遠い学校に通うようになり、子どもたちは登下校に時間をかけるようになります。家の近くの学校に通い、友達が近くにいて、一緒に遊ぶというような感覚がへってきているようです。

3.不均等な子どものグループ、クラスができあがる

 この学校選択は、どちらかというと、成績のよい子どもがうまく利用しているようで、頭のいい子どもたちがより良い学校へと移っていきます。そういう子どもたちが集まる学校は、それなりに問題があるかもしれないけれど、それ以上に問題なのが、

そういった子どもたちが去っていったクラス、学校

なのです。学校の教育は、ある程度の均等性をもったグループで行われることによって効果が上がります。なのに、やる気のある子ども、よくできることもがどんどんと学校を変わっていってしまい、クラスに残った子どもたちへの教育がしにくくなるという問題です。これは、大きな問題だと思います。集団で学習する場合、やる気のある子ども、周りをひっぱっていってくれる子どもなど、大変大きな意味があり、集団での学習には欠かせないものです。それが、不均等になると、教師は、今までのやり方と大きく方向転換をする必要が出て、それができる方ならいいですが、できない場合は、そのクラスの子どもたちの成長にも大きな影響を及ぼすことになります。

 たいていの場合、公立学校などで、近くの子どもが通う場合、いろんなタイプの子どもが集まり、問題はないのですが、選択の自由化で移動が激しくなったことにより、大きな問題となってきているようです。

4.学校を変わると脅すような保護者が現れた

 スウェーデンの学校は子ども一人当たりによって、お金をもらい運営しています。そのため、ある程度の生徒が集まることが運営上大変重要になります。学校選択が自由になり、親たちは、学校に何か問題が起きると、その問題を直視し、何とかしようとするのではなく、学校を変わることで問題を解決したり、果ては、学校を変わると脅すようにまでなったということで、これは問題です。

 保護者がすることによって、教員たちが、子どもたちのとってよいと思えることができなくなっていく教育では問題だと思います。

5.学校選択の自由は、障害を持った子どもには適応されていない

 統計の出所をすっかり忘れてしまったのですが、障害を持った子どもの親の実に70%が学校選択の自由がないと答えています。学校選択ができるのは、健常な子どものみというのは、問題です。

 

 このほかにもいろんな問題があるのではないかと思います。学校局が出してくるレポート、大変興味があるので、ぜひ、読みたいと思っています。

 ツイッターでスウェーデンの政治家をフォローしているのですが、ある政治家がこれに関して今日のツイッターで、話し合いはうまくいかなかったというようなことを書き込んでいました。難しい問題なんだろうと思います。

 

 この問題、スウェーデンらしいといえば、スウェーデンらしいと思います。スウェーデンでは、

平等であること、同じであること

がきわめて重要です。男女平等にも見て取れます。だから、不平等であり、分離がすすむ学校社会を非難する声が多いのでしょう。

この問題、他にもいろいろあります。特に、じゃあ、何で自由化したんだという部分が気になります。そんなとことろをまた書こうと思います。

 

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2 コメント

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グッドタイミング! (eco)
2012-05-20 20:58:49
ちょうど2.3日前に、東京都(区)では学校選択制を見直す動きがあり、逆に大阪市では導入する動きがあるというニュースをヤフーで読んで、それについて旦那と話をしていたところです。

私たちが住む地域では、子どもたちが学校に通う為には、基本その校区内に住んでいる事が条件(優先事項)となります。
でも実際には、私の娘が通う学校にはかなりの外国人がいて、その為に学校側は主に英語に力を入れているのですが、逆に英語に問題がない子どもたちにとってはそれでは物足りなくなり、次第に学校を移っていくようです。なので子どもたちの入れ替わりが激しいと、学校側も保護者側も問題視をしているようです。

親であれば自分の子どもを少しでもより良い学校に入れたいと願うのは当たり前の事だと思います。娘はまだナーサリーなので、そこまで気にしていませんが、年齢が上がるにつれていずれは真剣に考える事になるだろうと思っています。

学校選択制によってもたらされるメリット、学校間の競争によって教育の質が向上するという方向に向かうのは、なかなか難しいようですね。

いつもながら興味深く、また勉強になる記事をありがとう!ばんばんの記事は物事を客観的に捉える勉強となり、とても読み応えがあります(^^)
返事がおそくなりました。 (Pedagogiskamagasinet)
2012-05-25 04:04:26
ECOさん、こんばんは!

返事が遅くなりごめんなさい。いろいろ忙しくしており、返信を見逃しました。東京都大阪でそういう動きがあるのですね。導入する前に調査をしてみると、大阪はよりよいシステムが導入できると思うのですが、どうなんでしょうね。

子どもの入れ替わりについてですが、スウェーデンの先生も悩んでいらっしゃいました。私のような田舎の学校だとそんなにないのですけど、ストックホルムの中心街の学校だと学期途中でもお構いなしで出たりはいったり。。。そうなると、勉強に差が出てしまい大変なようです。

年齢が学齢期になるとこういう話は大変重要ですよね。これから大変かなと想像しています。

学校選択による教育の質向上は難しいかもしれないと私も思います。教育は経済活動ではないので、資本主義的な考えが有効なのだろうかと疑問に思います。

うれしい言葉をありがとうございます。これからも、興味をもったものだけですが、、、書いていこうと思います。コメントありがとうございました。

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