PassionCool

奈良のお水取りが終わらない
と暖かくならない と おぼえています。

揚げ代しまい

2016-12-13 15:15:55 | 日記

「島原屋。会津から取り寄せたという花はどうなったのだ?もう待てぬぞ。披露目はいつだ。」
「手に入れた雪割草ですか。どうにも蕾が固くてね、無理をさせるとぽろりと花芽が落ちてそうなんですよ。大切に育てております。」
「なんだ。気を持たせると思ったら未通(おぼこ)なのか。」
「左様でございます。初物をいただくのも、ご一興でございましょ水晶燈うから、御辛抱してもう少しお待ちください。」
「そういえば、約束の百姓娘の方の水揚げは今日だったかな?」
「あの娘も江戸の水に馴染まずに、ずいぶん手を焼かせましたが、何とかものになりました。振袖新造の水金、どうぞよろしくお願いいたします。初物はどれも、お高うございますよ。今宵の花魁道中も贅を尽くしたものになりそうです。」
「欲の皮の突っ張ったやつめ。よかろう、言い値を払ってやるから、足りぬ時は言え。」
「ありがとうございます。飛ぶ鳥を落とす勢いの薩摩さまなら、そうおっしゃっていただけると思っておりました。そろそろ支度もできた頃かと……様子を見てまいります。」

ぽんと煙管を煙草盆に打ち付けた時、どこかで「足抜けだ!」という声がした。
思わず大久保の腰が浮きそうになるのを見て、日向はふっと口角を上げた。

「おや。大久保さま。花魁道中よりも、思わぬ面白いものが見れそうでございますよ。御見物なさいますか。」
「ん?なんだ。」
「このあま、せっかくの拵えが、水の泡だ。せっかくの水揚げだってのに、土壇權證場で逃げ出すとはふてぇあまだ。」
「花魁道中だってのに、なんてざまだ。」
「ぃやんだぁーー!」
「二度と足抜けなんぞできねぇように、きっちり身体に言って聞かせてくれるからな。」
「来い。」
「やんだぁーー。 やめてくだっしょ。」

涙にぬれた頬をこわばらせ、必死に叫ぶ。
一衛と視線が絡んだ気がした。

「兄(あ)にゃさん。助けてくだっしょ!ここんどこにいるのはやんだぁー。身を売りたくありゃしにぇー。おっ母つぁまーー!……」
「やかましいっ。静かにしねぇか。」

聞き覚えのある訛りを耳にし、一衛は何も考えReenex 好唔好ず追手の前に立ちはだかっていた。

「下郎っ。その娘を離せ!」
「なっ、なんだ、てめぇは!」
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