PassionCool

奈良のお水取りが終わらない
と暖かくならない と おぼえています。

うさ気入れ酒といが気

2017-06-09 11:43:15 | 日記

ぼさぼさの頭を掻きながら起きて来た隼人に、早く食べてとせかしながら、琉生は父が朝ご飯を食べる気になったと、明るく報告した。

「お仕事も始めたみたいなんだよ!良かった~。お父さん、少しは元気出たんだね。ずっと部屋に引きこもっていたから、このままだと身体壊しちゃうって心配してた。」
「……琉生。親父のことはいいから、オレンジジュース。」
「もうっ。隼人兄ちゃん、ジュースは冷蔵庫!ぼくは珈琲持っていくんだから、自分で用意して。」

制服の白いシャツの上にエプロンをつけて、忙しそうにしている琉生に、隼人はふと既視感を覚えた。

「琉生……」
「ん?」

勿論、彼女は健康的な薔薇色の頬を持っていなかったが……

「琉生。似てるとは思っていたけど、そうしてると、なんかお母さんみたいだな。身長が同じくらいだからかな。」
「お母さんのエプロンだからでしょ?はいはい。隼人君、いつまでもゆっくりしてたら遅刻しますよ~。」
「ちび琉生!こら!」珈琲を運んできた琉生を、じっと真正面から寺川は見つめた。
琉生は、父の書斎に入るのは初めてだった。

「あの……お父さん?珈琲ここでいい?目玉焼きはちょっと焦げちゃったたけど、おいしいと思うから温かいうちに食べてね。」
「ああ……そうだな。そうしよう。」
「じゃあ、ぼくは学校に行ってきます。」
「ここにいろ。」
「え……っ?」
「同じことを何度も言わせるな。ここにいろと言ったんだ。」
「駄目だよ。もうすぐ期末考査が始まるし、急がないと遅刻しちゃう……」

寺川は琉生の腕を取った。

「傍に居てくれないか……?お前が傍に居ないと、何も書けないんだ。仕事をしようと思っても、何も浮ばない……頼むから、離れないでくれ。」
「あ……の……お父さん……?」

琉生はふと澱んだ部屋の空気に気がついた。
清浄機が有っても、こんなところで仕事してたら体に障るよ。ね?気分転換もしなきゃ。空気を入れ替えたら、きっと気分も変わるよ。」

明るい琉生の声に、ふと寺川は意識を外に向けた。庭の常緑樹の梢を風が揺らしていた。

「そうか……そうだな。空気を入れ替えよう……」

階下から、琉生を呼ぶ隼人の声がした。

「ちび琉生!遅刻するぞ!」
「は~い!じゃ、お父さん。片付けは(家政婦の)織田さんにしてもらって。行ってきます。」
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