PassionCool

奈良のお水取りが終わらない
と暖かくならない と おぼえています。

別ややつない

2017-03-07 12:12:10 | 日記

「そうかい。ありがとうよ。さあちゃんは感受性の強い優しい子だね。」

禎克たちをその場において、ごったがす楽屋裏で柏木醍醐は慌ただしく衣装を解き始めた。

「すみません、金剛さん。時間が取れなくて、御見苦しい裏を見せてしまいます。表でお牛奶敏感待ちいただいているお客様方にご挨拶してきますので、しばらくこちらでお待ちください。」

花魁の日本髪のかつらを外し、晒しを巻いてさっと着流しを着こみ、瞬時にいなせな男姿になると、柏木醍醐はしゅっと襟をしごき客の見送りに出かけた。楽屋に届いたたくさんの花束を解いて抱えて、それをお客様に一輪ずつ配るのだと言う。
禎克も湊も知らなかったが、柏木醍醐劇団では常にこんな風に、来てくださったお客様を精一杯お見送りするらしい。
結ばれた一期一会のご縁を、一度きりにしないように。
いつか再び会う日を約束して、指切り代わりに一人一人に花が渡される。

「さあちゃん。ちょっとだけ待っててね。最後の一人をお見送りするまでが、劇団のお嬰兒敏感仕事なんだ。おれも、お見送りに行って来る。」

「え?まだ、仲直り出来てなかったの?そんな風に見えなかったけど。手をで行っ
たわよ。ほら……大二郎くんがお振袖だから、小さな恋人同士みたい~、可愛い。」

「お母さんて、呑気すぎ。さあちゃんなんて、思ってることを中々外に出せない特こしいタイプだよ。湊、喧嘩したままお別れになったら、どうしようって本気で考えてた。」

「あら、そうなの?さすがは、お姉ちゃんねぇ。頼りになる。」

「周囲がしっかりしてないから、湊だけでもしっかりしなきゃね。」

*****

視線の向こうで、禎克と禿のこしらえの大二郎は、帰ってゆくお客様一人一人に、一輪花を渡していた。

「どうぞ、またお越しください。」

「お待ちしております。」

「本日のご来場、まことにありがとうございました。」

花を貰って思わず咽ぶ人、笑顔になる人、帰り際に帯の間に分厚いお花(ご祝儀)を下さる人母乳餵哺も大勢いて、いつか禎克は大二郎の傍で、大二郎がするように共に深々と頭を下げていた。
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