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週一ゲームアナリシス vol.18 - 立体視の”疲れ”と”普及”について考えてみる

2011年08月06日 11時45分11秒 | 【旧】コンテンツ集
私は、科学的根拠とかそういう方向の知識はあまりないので、Wikipediaを参照しながらお話しします。

また、今回はあくまで「立体視の疲れについて」と「立体視を普及させること」のみに焦点をあてたので、「立体視は利用したい人がすればいい」みたいな点には触れていません。
あしからずご了承下さい。


◆== 3D酔いならぬ”立体視酔い” ==◆

立体視の前に、3Dグラフィックのゲームによる「3D酔い」について話してみましょう。


3D酔いとは、耳の中の「三半規管」(画像で紫色の部分)という、体のバランスを感知する器官に異常が発生することで起こる現象だそうです。乗り物酔いが起きる原因も同じです。

カメラ視点が激しく変わるゲームをプレイしている時に、目・耳・体で得ている感覚を三半規管が処理しきれなくなる、ということなんでしょうね。
ゲームって、予期しない方向にカメラ視点が動いたりすることも多いですし、当然ですが体全体で動きを感じることはできないので、なお違和感を感じるのでしょう。
3D酔いに強いとか弱いとか言いますが、これはおそらくこの三半規管という器官の能力が影響していることになります。また、三半規管は”鍛える”こともできるそうです。

立体視酔いにも、おそらく同じ原理は存在するでしょう。
立体になって現実に近い見え方になったとはいえ、結局はバーチャルの世界。不自然な動きがあることに変わりはないわけで、それが結局は酔いを引き起こす原因となります。そして、酔いが発生しないとしても、やはり普段見慣れていない立体視を見ていると、どうしても三半規管への負担は大きくなるでしょう。

その他にも、普通の映像と比べれば立体視は”目で得る情報量”が増えることになりますし、実際に3DSなどをプレイされた人は何となく分かるかと思いますが、普通の映像とは”焦点を合わせる位置”がちょっと違います。奥行きがあれば焦点は少し奥になり、飛び出す場面なら焦点は少し手前になります。

そういう、普段とは違う様々なことが、目が疲れやすい原因になっているのでしょう。


◆== 何だかんだで一番は”慣れの問題” ==◆

上記でも説明しましたが、酔いの原因となる三半規管は、鍛えることができます。
まあ、鍛えるというよりは”慣れる”といったほうが正しいのかもしれません。

酔いって結局は、予期しない動きについていけないから発生するもの。であれば、普段から予期しない動きをしていればいいわけです。
Wikipediaにある一例としては、後ろ向きに歩く。ブランコ。マット運動。起き上がりダッシュなどです。どれも視点が目まぐるしく変わるものですね。後ろ歩きに歩くのは、普段ではあまり見ない”映像の動き”が見られるので、これも効果があるみたいです。

もちろん、わざわざこんなことを実行する必要はないと思いますが、結局これらから分かるのは、3D酔いや立体視酔いも結局は”慣れの問題”ではないか?ということです。
これは酔いだけでなく、上記で話した”目で得る情報量”についても”焦点を合わせる位置”についても同じです。


実際のところ、3DSをプレイし始めて5ヶ月以上が経過した私ですが、ずっと立体視で見てきた映像を(3Dボリュームを切って)立体視OFFで見てみると、数分くらいでなんか違和感を感じるようになりました。酔いとはまた違う感じですが、それにちょっと近い感覚です。
それは、おそらく「普段と見え方が違う」ということで、三半規管が多少混乱しているからそう感じるのかな?と考えています。慣れてきたからこそ、違和感も少なくなり、疲れも少なくなってきているというわけです。
ただし、これはあくまで”これまで立体視で見てきた映像”であって、3DSに慣れたからといってPSPに違和感を感じるようになったということは、今のところはありません。

また、目の視野の違いによって、3DSで立体視が見えないといっていた高橋名人が、片目で見る訓練によって、立体視が徐々に見えるようになってきたという情報がありました。これこそ”慣れの問題”を色濃く表している事例だと思います。
もちろん、立体に見えない人に訓練を強要するわけではないですが(笑)



◆== 3DSには”姿勢の問題”もあり ==◆

PS3の立体視については詳しく聞いたことがなく、体験もあまりしたことがないので判断できませんが、3DSの”裸眼3D”には、目自体の疲れ以外にもう1つ”姿勢による疲れ”もあると思います。

裸眼3Dは、画面の真正面でかつ一定の距離を保たないと見えません。そこで、プレイヤーは立体視がキレイに見えるようにと、無意識のうちに頭をできるだけ動かさないようにする。もしくは本体を持っている両手を動かさないようにすると思うのです。
そうなると、おのずと首や肩、両手首といったあたりに力が入ります。当然ながら、力を入れた状態が続けば…疲れちゃいますよね。
私も3DSをずっと遊んでいて思ったんですが、目の疲れよりも、首に疲れを感じることのほうが多いように思いました。おそらく、それが上記の理由からだと思うんですね。

これも結局は”慣れの問題”でしょう。
特に、普段から姿勢の悪い状態でゲームをプレイしている人はなおのこと、3DSの立体視に対して目の疲れではなく、こういうところの疲れを感じやすいのではないかと思います。
ええ。私もそうですよ(笑)


◆== ブームで終わらせないこと ==◆

出ては消え、出ては消えの立体視ブーム。
今回がどうなるかは分かりませんが、本気で根付かせたいのなら、そもそもブームという短期的な考えがダメだと思うわけです。慣れるには時間が必要なわけですから、かなり長い期間で見ていくべきでしょう。だからこそ、ブームで終わらせない力が必要になってくるわけです。

もちろん、それでも立体視を受け入れられない人は多く存在するでしょうし、そこまでくれば”仕方がない”と言えるものです。しかし、私は今”仕方がない”と言えるほどの努力をしていないと思っています。
特に映画。現状では最も多くの人が触れているであろう立体視のコンテンツですが、ほとんどの映画が「とりあえず3D版も」的な感覚で提供しているため、立体視のデメリットな部分が浮き彫りにされ、それが他の立体視のコンテンツにも大きく影響を与えています。

慣れるまでに疲れを感じてしまうわけですから、消費者には相応のメリットを感じてもらえないといけません。であれば、ただただ「迫力ある」だけを連呼する時代遅れなアピールはやめて、3DSで言われてきた「ゲームが遊びやすくなる」といった例のように、もっと違う視点で立体視に目を向けていくべきだと考えます。
テレビや映画でそういった部分があるのかどうかは分かりませんが、少なくともゲームにはそれができる可能性があることを、私は実感しています。


◆== まとめ ==◆

我々はこれまでずっと、立体視ではない”平面映像”を見てみました。それが当たり前でした。故に、立体映像を”日常的に受け入れる”のは、簡単なことではありません。その理由は今回話してきたように、疲れてしまうということが大きな要因の1つです。
我々は、立体映像を見るということに関しては「赤ちゃん」も同然ですからね。それが日常茶飯事になるのであれば、まずは慣れるところから始めないといけません。

しかし、立体映像には実用的な部分においての必要性がほとんどなく、あくまでエンターテイメントとして利用されることがほとんどなので、慣れる前にサヨナラしてしまう人が多いのです。今さら、慣れなきゃいけない世界には興味がない、と。
ボタンが増えすぎて、それに慣れる前にサヨナラ。3Dグラフィックになってゲームが難しくなり、それに慣れる前にサヨナラ。ゲーム離れが起きた原因に、なんか似ていますね。

そんな中であっても、少しでも多くの人に利用してもらえるようになりたいのであれば…立体視が与える”別の価値”をもっと発掘していく必要があります。
ゲームであれば「操作する」という概念があり、それに対して影響を与えることができるのは3DSなどで実証されました。少なくとも私は理解もしていますし、実感もしています。
他の、映画。テレビ。携帯電話でも同じです。ただただ「見た目がすごいでしょ?」なんて言っても、大抵の場合、興味をもってもらえるのは一瞬だけ。ちょっと3Dメガネを覗いてみて、それで終わりです。それでは日常に溶け込むことはありません。溶け込むには、一瞬の魅力ではなく永遠の魅力が必要なのです。


◆== 最後に素朴な疑問 ==◆

我々は長いこと平面映像を当たり前のように見てきたからこそ、立体映像の世界を受け入れられづらいところがあると思うんですが、今の子供たちはどうなんでしょうか?
仮にこれから立体視のコンテンツがどんどん普及し、様々なコンテンツで子供たちが立体視をわりと簡単に見れる環境になったとしたら…”立体映像が当たり前”になり、逆に平面映像が受け入れられづらくなったりするのでしょうか?


それが見えてくるのは、まだまだ遥か先のお話です。


前回の記事 : ラスボスが弱いゲーム
前々回の記事 : マリオの”止まる演出”

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