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元ゲームプランナーという、しがない肩書きだけが取り柄のゲームブログ。生ラジオの告知が中心で、たまにテキスト対談を更新中!

週一ゲームアナリシス vol.4 - なぜ『逆転裁判5』は発売されないのか?

2011年03月12日 07時52分33秒 | 【旧】コンテンツ集

●= 今回のテーマ : なぜ『逆転裁判5』は発売されないのか? =●

ゲームボーイアドバンスから始まり、DSや携帯アプリ、Wiiウェアなど幅広いプラットフォームで展開される『逆転裁判』シリーズ。推理ゲームとしての面白さに加え、裁判所を舞台にするという新しい要素や、個性的なキャラクターの面々なども魅力的です。
今も、派生作品として『逆転検事』シリーズが発売されたり、コラボレーション作品として『レイトン教授VS逆転裁判』が開発中だったりと、元気いっぱいなシリーズ作品…に見えます。

しかし、よくよく考えてみると…派生作品は色々と発売・発表されているのに対し、本編であるシリーズ作品は2007年に発売された『逆転裁判4』が最後。発売されてもうすぐ4年が経つわけですが、続編となるであろう『逆転裁判5』が発売される気配は、全く感じません。
4から新主人公であるオドロキくんを起用して、彼の新しい物語はまだまだこれから…というところで、止まってしまっています。

ネット上では「4が面白くなかったから」の一点張りなようですが、それを言うだけなら簡単です。
もう少し深くまで突っ込んでみましょう。



◆-- 『逆転裁判4』での「テコ入れ」 --◆
まずは、わりと有名な話から。
『逆転裁判』シリーズは、1~3まで「成歩道 龍一(ナルホドくん)」が主人公のシリーズを続けており、4からは全く新しいシリーズとして始めていくという考えでいました。
しかし会社側からは、「まったく新しい物語にするべきだ」という意見を受け入れるのと引き換えに「2つの条件」を満たすようにも言われていたそうです。

逆転裁判4 公式ブログ - 『主役交代』
この公式ブログによると、条件は下記の通りです。
・「前作までのキャラ(少なくともナルホドくん)を入れること」
・「●●●●●を扱うこと」

●●●●●については、プレイした人なら分かりますね?個人的にこれは、1つの新しい試みとしては別にいいと思いました。
問題なのは、もう1つのほうです。「まったく新しい物語にするべきだ」という意見を受け入れる条件なのに「前作までのキャラを入れろ」って…すでにムジュンしてますよね。前作のキャラを入れるというだけで「まったく新しい物語」にとっては足かせになるわけでして。
条件を飲まなかったら「まったく新しい物語にするべきだ」という意見が却下されるので、なかなか反論できなかったのだと思いますが…その条件を飲んだが故に、100%思い通りのシナリオを作ることは、その時点で難しかったような気はします。

そして何より、今後もオドロキくん(4の主人公)を中心とした物語は書くつもりだったんだと思うんですが、その場合、必然的にナルホドくんも付いてくることになるわけです。
そうなってくると、ユーザーとしてはナルホドくんの周りに「かつて存在したキャラクターたち」の行方がますます気になったりして、より面倒なことを考えないといけなくなったわけです。ナルホドくんを登場させていなければ、もっと純粋にシナリオを構成できていたハズなんですが…予想外の要素を入れたばかりに、それが後々の作品にも影響を与えることになったと思います。


◆-- もう『逆転裁判5』を作る気はない? --◆
『逆転裁判4』は、シリーズ作品としては初めて50万本以上を売り上げ、シリーズ作品としてようやく開花したわけですが…一方で、ネット上では非難が相次ぎました。
細かい部分もあるでしょうが、大体は「ナルホドくんの落ちぶれた姿」が非難のマトになっており、まさに会社側の条件が裏目に出てしまったとしか言いようがない状態でした。


そして、『逆転裁判4』を発売して3年後。このシリーズ作品のディレクター兼シナリオを手がけていた巧 舟(たくみ しゅう)氏は、逆転裁判の続編ではなく、全く新しい作品『ゴースト トリック』を発売しました。
『ゴースト トリック』自体は大変楽しく遊ばせていただいたんですが、同時にちょっと不安が頭をよぎったのです。もう『逆転裁判5』を作る気がないのでは?と。

私がふと思い浮かんだのは、2つの可能性です。

|-- 自分の書きたいシナリオが書けなくなった --|
私は巧 舟氏のことをそこまで詳しく知っているわけではないですが、あの人は何となく「書きたいと思うシナリオを書く」という人のような気がするんです。
そんな巧氏にとっては、今回のテコ入れに相当悩まされたんじゃないでしょうか?「前作のキャラを登場させないといけない」という時点で「まったく新しい物語を」というのが破綻してしまい、しかもそれを後々のシリーズ作品でも引きずっていかなくてはいけません。…だったら、もう作らないよ!って。なんか、あの人ならそう言いそうな気がするんです(笑)
そして、『ゴースト トリック』で全く新しいアドベンチャーゲームを発売。一応、つじつまは合っているように思います。

|-- 責任をとって離脱? --|
『逆転裁判4』は成果としては充分でしたが、ネット上での非難が著(いちじる)しいことになっていました。そこで、ディレクターである巧氏が責任を取ってプロジェクトから離脱した…ということも考えられそうです。会社側がそう命じたか、もしくは巧氏が自主的にそうしたのかまでは推測できませんが。
その巧氏は『レイトン教授VS逆転裁判』で再びシナリオに関わっているので、責任を取らされたという可能性は少ないかもしれませんが…もしかしたら、レベルファイブからの要望だった可能性もあるわけで。まあ、この内部情報については、考え始めるとキリがありませんね。



◆-- 『逆転裁判』から『逆転検事』へ --◆
仮に、上記の理由で巧氏がシリーズ作品に関わらなくなったとしても、他のメンバーがその立場を引き継いで続編を作ることも、可能だったとは思うのです。しかし、実際『逆転裁判4』の後には、派生作品として『逆転検事』というのが発売されました。『ゴースト トリック』よりも先に発売されています。

これはあくまで私の仮説でしかありませんが…巧氏がいなくなった開発チームは「私達は私達のやりかたで、このシリーズ作品の魅力を別の方向から引き出す」と考えたのではないかと思うのです。
巧氏によるシナリオの構築は、ある意味「感性あってのもの」というところがあり、それを他の人が引き継ごうとしても、それを超えることは容易ではありません。それなのに、単純に続編を発売するだけでは、結局のところシナリオの面などで過去作品と比べられて、劣って見られる可能性が高かったような気がします。
だからこそ軸を変えて、シナリオの構築で及ばない部分はゲーム制なりキャラクターなりでカバーしていったほうが、結果的に良い流れを作れるかも…という狙いだったのではないでしょうか?

もし仮にそういう狙いだったとすれば、その狙いは概ね当たっており、『逆転検事』シリーズも全体的に高い評価を得ています。

一方で、ごく一部では「やっぱり巧氏に及ばない」という意見もあるようで、私もまあ…あくまで「どちらかというと」というレベルでしかありませんが、オリジナリティや推理ゲームとしてのクオリティは、やはり『逆転裁判』のほうが魅力的だったようには思います。

…いや、別に今の開発チームがダメだというつもりはありません。よく頑張っていると思いますし、『逆転検事』シリーズもかなり楽しませてもらっています。
感性なんて人それぞれなわけですから、そこを理由に作品を否定されても…作る側としては「じゃあどうしろと?」って話です。


◆-- 『逆転裁判5』が発売される可能性は? --◆
まあ、ゼロではないでしょう。そんなの、どのシリーズ作品だってそうです(笑)
少なくとも私は、4も充分に楽しめたので続きを期待しているんですが…どうでしょうね?

5を作るとした場合、オドロキくんのシナリオを続けるか?いっそ、割り切って5からまた新しい物語を考えるか?まずそこから考えなくてはいけません。いっそ、10年後のオドロキくん!とか言ってしまって、ナルホドくんをムリヤリ出さないようにするのも手かもしれません(笑)
かといって、ここでまた「新しい物語を」というと、またテコ入れが発生するかもしれませんからね…。なかなか、続編を作るには大きな決断が必要そうです。

ま、これがプロのクリエーターの難しいところなのです。



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※せっかくなので追記(2012/01/30 07:30)
『逆転裁判5』の発売が決定しましたね。
タイトルロゴにオドロキくんがいないのが気になりますが…どういった内容になっているのか?
楽しみにしたいですね。
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関連記事 :
DS『逆転裁判4』 インプレッション(2007/04/15)
DS『逆転検事』 インプレッション(2009/06/04)
DS『逆転検事2』 インプレッション(2011/02/08)

前回の記事 : なぜヨッシーはキノコを食べなくなったのか?
前々回の記事 : 『モンスターハンター』のカメラ視点

その他の「週一ゲームアナリシス」の記事は、こちらからどうぞ
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14 コメント

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続編希望 (土星産の卵)
2011-03-18 11:53:58
>落ちぶれた成歩堂

そういえばうちの妹は逆転のファンなのですが、4だけはプレイすらしていないんですよね・・・。「成歩堂が弁護士辞めたって設定を聞いてやる気がなくなった」だとか。
『順当に弁護士としてのキャリアを積んでいった成歩堂が、部下として王泥喜を雇う』・・・というシナリオにしたら・・・普通過ぎてつまらなかったんでしょうね。

個人的に4は最終話のオチ(真犯人へのトドメの刺し方)が気に入らなかったくらいで普通に楽しめましたし、伏線もチラホラあって続きが気になりますし、是非続編を作って欲しいですね。

・・・無理なのか、やはり。
返信する
私もです (partygame(管理人))
2011-03-18 15:47:27
>土星産の卵さん
「全く新しいシナリオ」を目指していたので、いわゆる1でいう千尋さん(成歩道の師匠)と同じポジションにはしたくなかったでしょう。
そして、悩んで悩んで…結局、この形になったということでしょう。

まあ、巧氏が作る気があるか、あるいは誰かが引き継ぐ気があるか。どちらかがあれば続編の可能性はありますが、今の流れを見ていると…どうでしょうね?って感じです。
返信する
いつ出るのやら (待ち人来たらず)
2011-08-25 22:45:53
逆転4で気に入らなかった点。
・ナルホド君の扱い(+旧キャラの扱い)
・XXX制度

どっちもお偉いさんからの条件だったというところからも、タクシューに好きに作らせるのがベストなんだろうなと思いました。
逆転5が他の人のシナリオで出たら、たぶん面白くなくなってるんだろうなとも思うので、自由な設定で作らせてほしいとこですね。
返信する
Unknown (partygame(管理人))
2011-08-25 23:10:49
>待ち人来たらずさん

”巧氏の好きに作らせる”という意味では、『ゴーストトリック』や『レイトン教授VS逆転裁判』なんかがそれにあたりますね。
ゴーストトリックは完全新規ですし、コラボのほうもナルホドくんと真宵ちゃんが出ていれば、後はどうとでも設定できるので。

こういうのを見ていると、巧氏は『逆転裁判』の本編から距離を置く位置で関わることで、自由なシナリオを書けているとも言えるわけです。
結局のところ「続編」としてではなく「新作」として提供できる環境のほうが、望むものに仕上がりやすいのかもしれません。
まあ、あとはタイトルを「5」にしないという手段くらいですかね。

個人的には、まだまだこれからというオドロキくんの成長がこんなところで終わることが、なんとも不憫でならないです。
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まだ4はやっていませんが・・・ (灯火)
2011-11-29 20:54:30
ネットなどの評価を見る限りでは、4は不評が多い作品のようですね(別にそれで4をプレイしていないというわけではなく、単なるお金の問題です;)。しかし、私としても逆転裁判シリーズは続いていてほしいと思います。
4が不評でも、5、6で挽回すれば、
「4を最初にやったときには“えっ?”って思ったけど、今思えば、4あっての5、6だから、結果的には良かったよね」
となるのでは、と思うのですが。
是非、5を出してほしいですね。
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Unknown (partygame(管理人))
2011-11-29 22:04:24
>灯火さん
作り手や売り手としては、この状況での5の発売は、相当勇気がいるんだろうな~とは思います。
私の仮説でもお話しましたが、今のチームは『逆転検事』でシリーズ作品の方向性を見いだしていますし、会社的にも、これだけ期間を話して5を発売してもな~みたいなところが、あるような気がします。

とはいえ、最近はボンヤリを派生作品を出しつつ、少し期間を空けて本編を発売したら、わりといい売上が出ているようなシリーズ作品もありますので。
その期間を伺っているとしたら嬉しいですが…まあ、どうでしょうかね?
返信する
いつか出ると期待してます (kuma9053)
2012-01-08 00:53:40
やはり個人的にはキャラの魅力とかユーモア性とか考えると巧舟氏の方が(逆転検事と比べ)勝っていたと思います。
仮に5が出るとして、いま続編がなかなか出ない理由が「4の主人公を変更したことによる不人気」だとしても、流石に5を成歩堂くん主人公で出すわけにはいかないでしょう。だとすると、4の伏線回収も兼ねて王泥喜くん主人公でいくでしょうね。伏線が回収しきれていない中途半端な状態で本編打ちきりはないでしょうから、続編は出ると思います。ただ、その「5」で人気が出なかったときにすぐ打ち切れるように、5でシリーズを終了出来るような内容にしておく、ということは予想出来るのではないでしょうか?
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期待に応えて欲しいですね (partygame(管理人))
2012-01-08 23:25:50
>kuma9053さん
5が出たら、できればオドロキくんを続けて起用して欲しい気持ちは、私も同じです。

ただ、「伏線が回収しきれていない中途半端な状態で本編打ちきりはない」という考え方は、遊び手にはあっても、作り手としてはあまりなかったりするのが哀しい現実です。
他の作品でも、それとなく伏線を散りばめるだけ散りばめて、でも成果が良くなかったので次は出ない…なんてことが多かったりします。それに、極端に言ってしまえば、4でも一応は一区切り付いているので、あれで終わりにもできてしまいますし。

まあ、ちょっとひねくれたことを言っちゃいましたが、逆転検事もそれなりに定着してきているいま、逆転裁判5を発売するということが、それだけ思い腰を上げることであるのは間違いないということです。
しかし、一方で待ち続けている人がいることも分かっているでしょうから、いつか、どんな形でもいいので期待に応えて欲しいものですね。
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Unknown (ginshu)
2012-01-10 16:57:59

私は落ちぶれたなるほど君好きですよ。

見た目こそああだけど
7年間がんばっていましたし(4参照)
4をやってもっと好きになりました。

是非、5も続けてほしいです。
弁護士復活して、おどろきくんと
がんばってくれたらうれしいですね
まよいちゃんやはみちゃんの大人になった姿も見てみたいですし
監督さんにはがんばってもらいたいです
返信する
Unknown (partygame(管理人))
2012-01-12 09:32:36
>ginshuさん
ginshuさんのように、物事をポジティブに捉えられる人ばかりだといいのですが。大抵の人は、印象が悪くなるというか、印象がただ単に変わるだけでも「え~」ってなったりするくらいなので。なかなか難しいものです。
そういう意味では、真宵ちゃんとかの今を見たい気持ちも、大きい人は大きいですし、ナルホドくんの印象が悪かった人によっては、どうせ真宵ちゃんも…とか思っているんでしょうね。

結果がどうあれ、そういう空気を作ってしまったのは事実なので、そういった中、続編を発売するのはかなり辛いでしょうが…ここはひとつ、待っているファンのためにも、ひと踏ん張りして欲しいものですね。
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