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a green hand

春風夏雨 岡潔

友人から朝日新聞の書評に岡潔の本が再版されるようになったと連絡をもらってからしばらくになる。
私の「人間の建設」以来この友人は岡潔に嵌っている。

私も数学教師だったK先生からの再びの紹介で赤茶けた古本を買い寄せて読んでいたところであり、そんな折の再版はうれしい話題であった。

今日も開いてみた。
ぐぐっと迫るものがあったのは、最後の方にある「愛国」である。
私は日本がすきである。から始まる。

私はこの国土の景色が好きである。
柔らかくて、こまやかで、変化にとんでいて、木の葉にもにおいがある。
私は外遊してこのくにを外から見た経験は一度しかないのだが、そのとき、フランスから帰って、電車で郷里の谷あいにはいると、ちょうど五月であったが、木の葉のよいにおいがした。
電車を降りて、峠〈和歌山県、紀見峠〉への道を歩くと、日はもう暮れていたが、むせるような甘い若葉のにおいがした。
フランスにはこのにおいがないのである。
私は自分のくにに帰ってきたのだという気がした。
 生えている植物はみな好きだし、咲く花もみな好きだし、木の葉の彩りの変化も好きである。
それにこのくにには四季のこまやかな変化がある。
四季みなよい。
照る日も、曇る日も雨の日もみなよい。
風の日もよい。
雨や風には四季によるさまざまの変化がある。
風趣を添える動物もよい。


ここまで読んで感極まった。
この感情も私の愛国なんだろうな~と思えた。

人の中心は情緒であるという岡潔。
自我は悪いとどうして教えない、戦後アメリカナイズされた教育に警鐘をならし、とてもこの国の将来を憂いて著作に励んだ数学者である。
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