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初めての体験~入院の立ち合い~

随分前のことになるが、昨年の9月、母が入院して、
生まれて初めて手術の立ち合いをした。

日曜日、実家のある愛知県の弟宅に泊まって、
朝、弟に出勤がてら最寄りの駅まで送ってもらう。
普段より早起きだったからやたら眠い。

すぐ実家に向かってもいいが、早く着き過ぎて父が寝てても面倒。
喫茶店で時間をつぶすよりは、電車の中で寝た方が安上がり。

どの線に乗ろうか、通勤客が行き交う名古屋駅をうろうろ。
車窓のきれいな中央線を選んで乗ってみたものの、
思ったほど時間もないことがわかり、近郊の春日井市で引き返す。

車中では、手術が早く終われば、県内の日帰り温泉に行こうと、
スマホで調べたりして寝ることもなく1時間が過ぎた。

実家は、私鉄沿線で、駅まで歩いて15分強はかかる。
じりじりした残暑の中、汗を吹きながら、
少し遠回りしてケーキ屋でお見舞いのお菓子を買って行ったから、
さらに時間が経過。
実家では、庭にある犬の墓を参り、父の顔をみて、
庭のいちじくがなっていたら、もらおうとチェック。
あにいく、まだ硬くて小さすぎて、期待はずれ。

実家から歩いて駅に戻ると、珍しく駅前にタクシーが止まっていた。
予定していた電車に間に合わず、このままだと、
1時までには来るように言われていたが、ぎりぎりだ。
タクシーに乗ろうか、一瞬、迷った。
でも、2駅先の病院の最寄駅から乗った方が安いし早かろうと駅に入ってしまった。

電車に乗ろうとして、ふと母のメールに気付く。
手術が1時間早まったとのこと!
焦ったが、どうしようもない。

駅からタクシーに乗って、病院に着いたのは、結局1時過ぎ。
どちらにしても、手術前には間に合わなかったという大失敗。

ベッドがなく、ぽっかり空いた病室で、
ぼんやりと椅子に座って、本を読んだりして待つこと数時間。
手術が終わったという連絡があり、
それからまただいぶ経って、母がベッドごと、看護師さんに運ばれて帰ってきた。

さすがにしんどそうで、いろいろ管もついて、
寒い、寒いと連発して、首回りに布団を寄せてあげたりしたが、
何をやったらいいのかよくわからない。さして何もせぬまま、病人から
「駅から実家までタクシーで行って、タクシー待たせて、
そのまま病院に来たらよかったのに、抜けてるわ」とお小言を言われ、
「明日も仕事だから早く帰りなさい」とせかされて、
握手をして病室を出た。
母によると、お見舞いの時は、また会えますようにと握手するものらしい。

病院を出ると、すっかり暗くなっていて、月が出ていた。
帰りのタクシーは女性の運転手。
親の入院で大阪から病院まで通って来る娘さんがいると快活に話してくれた。
どこか遠くにいる同志を応援したい気持ちで、タクシーを降りた。

結局、病院に行ったのはあの1回だけで、
あとは、お見舞いも退院の付き添いも、弟夫婦にまかせた。

あのときのことを思い出すと、
母にしたら、万一に備えて遺言でも伝えておこうと考えていたかもしれない。
遅れた私に、何やってるのと怒ろうにも、あきれた気持ちだったろう。
私自身も、自分ののんきさ加減と阿呆さに、開いた口が塞がらない。
タクシーなんて元々乗り慣れないから、と言い訳にしたいが、
これからは、迷ったらけちらずタクシーに乗ることにしよう。

今では、母もすっかり元気になり、杖もなく歩けるようになって、
あのときの失敗も感慨深い思い出の一つである。

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