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No599『プレイタイム』~めくるめくパリ~

飛行場の待合いの広い空間から始まる。
行きかう人々。いろんな足音。
なかなかユロ氏は現れない。
アメリカ人の女性ばかりの団体観光客が
引率にしたがって、にぎやかに出て行く。

前半は、ユロ氏がガラス張りの近代的オフィスを訪ね、
担当部長と話そうとするが、部長は忙しすぎて、
なかなか機会がなく、
探しても探しても、互いにすれ違いの連続。
これもまたやっぱり音がおもしろくて
笑いの連続。

隣のビルが展示場とかで、
冒頭のアメリカ人の団体観光客も見学に来て
さらに賑やか。

ユロ氏が、間違ってエレベータに乗ってしまい、
ドアが閉まったと思ったら、
次のシーンで
パッとビルの外観が映り、
灯りが灯った窓が、
ビルの上の方へ上がっていくのが映る。
今の大阪でも、あちこちのビルでエレベータの動きが
灯りでわかったりするが、これを先取りすること数十年前。
1967年の作品。

後半は、開店したての高級バー。
街でユロ氏が偶然出会った戦友が、ドアマンをやっている。
このバーにも、アメリカ人女性の団体観光客が訪れるのだが、
開店したてだから、
段差のライトは接触不良だし、
設計ミスの連続で、暑すぎたり、棚が落ちてきたり、
椅子の背もたれが王冠型でとがっているせいで
給仕が引っ掛けてズボンや上着を破ったり・・と
設計ミスのせいで、あちこちでハプニングの連続。

客もべらぼうに多く、凄い騒ぎで、
飲んだり食べたり踊ったり、ほとんど狂わんばかり。

団体観光客の中にアメリカ人のバーバラという美人がいて
店で演奏するバンドに代わって、ピアノを弾く。
ダンスやらで大騒ぎだった場内が、
しばし静まり返り、ピアノの美しい音色が響く。
音楽だけで、ここまで空気が変わるものかとびっくり。

ラストは、この団体観光客の乗った帰りのバスが発車する。
ユロ氏が、バーバラへの、お別れのプレゼントとして、あわてて買って、
なんとか、バスの出発寸前で、彼女の手元に届いたスカーフ。
車内でバーバラが包みから開けて、頭にかぶる。
パリの街の光景を線画にしたすてきなデザイン。

パリの真ん中の円形交差点には、
たくさんの車が連なっていて、バスも一緒に回っていく。
赤い風船を持った女の子や、歩道のいろんな人たちが
車窓から眺められる。
クレーンが上がったりする光景や、
真っ青な空に浮かぶ白い雲や、
車窓から切り取られたパリの街の光景があまりに魅力的で、
すっかり心奪われてしまった。

昼から夕方、夜へと、道路の電灯が灯っていく。
エンドロールの代わりに、真っ暗な画面に音楽が響く。
すてきな余韻に包まれた。

思わずタチの作品について書き綴ってしまったが、
短編3作品もすばらしい。

『左側に気をつけろ』では、
練習試合をやっているボクシングのリングの椅子の上に
ボクシングの教則本が置いてあり、
初めてリングに立ったタチ青年は、ルールを知らないから
それをみながら試合をする。

その教則本になぜかフェンシングの頁が混ざっていて、
タチがフェンシングの構えをして、
ガードが思い切りあいて、
相手のパンチをまともに受けたのには、
痛そうだけれど、思わず笑ってしまった。

短編の『郵便配達の学校』を観ていて、思い出したのだが、
昨夜ご紹介した『のんき大将』の中の
郵便配達の自転車が、乗り手がいないまま、
勝手に坂を下っていくシーンについて。
無人の自転車には、鈴がつけられていて、チリンチリンと心地よい音を鳴らしながら、
まるで生き物のように、一人で勢いよく動いていったのだ。
やっぱり、タチの映画の音はすごく魅力的。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 1 )
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コメント
 
 
 
私も頑張って (鼻田秀次郎)
2010-08-26 21:58:41
私も頑張って『プレイタイム』のことを書いてみました。『プレイタイム』のラストシーンは本当に好きですね。
 
 
 
ラストシーン (ぱらぱら)
2010-08-26 23:00:27
コメント、TB、ありがとうございます。
あのラストのガラスの角度を変えると・・・のシーン、思い出しました。よかったですね~。
1年に1回くらい、観たい感じです。
 
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