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著書『誇りに思う日本人たち』
『ビッグショッツ』
『黒い火』ほか

3月8日・宮城音弥の冷静

2017-03-08 | 科学
3月8日は、「国際女性デー」。この日は『ゲゲゲの鬼太郎』のマンガ家、水木しげるが生まれた日(1922年)だが、心理学者、宮城音弥(みやぎおとや)の誕生日でもある。

宮城音弥は、1908年、東京で生まれた。両親ともに教師だった。
中学のころ「霊魂はあるのか」という問題について悩みだした宮城少年は、心理学を志すようになり、京都大学の哲学科に進み、心理学を専攻した。
大学卒業後、就職先のなかった宮城は、フランス政府の留学生採用の試験を受けてこれに合格。フランスのストラスブール大学に2年間留学した。フランスでは心理学者は医学も同時に専攻するのが常識で、犯罪心理学についての講義は刑務所でおこなわれたという。
帰国後は、慶応大学の神経科の助手として勤務。その後、昭和医専で臨床医学を学び、医師免許を取得。第二次大戦中は、慶応病院に医師として勤務しながら、海軍の技術研究所にも嘱託で勤めた。世間一般が食料難の戦時でも、海軍の研究所では食べ物が豊富で、彼は昼食に出たパンをポケットに隠して家族ために持ち帰った。
戦後、東京工大の教授となり、東大や教育大の講義もしながら、60歳の定年まで勤め上げた。定年退職後は、日本大学の歯学部の教授に就任した。
1952年の、翻訳小説『チャタレイ夫人の恋人』が、わいせつか否かが争われた「チャタレー事件」では、宮城は弁護側証人として出廷。うそ発見器による実験をおこなった実験データを示して、件の小説がわいせつとは認められない旨を論証した(でも、裁判では結局、わいせつであると判決された)。
論文、翻訳のほか、一般向けの心理学書を多く執筆し、日本に心理学を広く知らしめるのに功績があった。著書に『精神分析入門』『性格』『神秘の世界』『天才』『人間性の心理学』『夢』『日本人の生きがい』『日本人とは何か』などがある。2005年11月没。97歳だった。

宮城の著書で、最初に読んだのは、岩波新書の『天才』だった。本のなか、西洋の天才たちがつぎつぎと登場し、その異常ぶりが冷静かつ簡潔につづられていた。
「もっとも典型的な天才の家系の特徴は、性格的の遺伝的関係がありながら、その天才以外には天才と称せられるものが出現しない(集積しない)ところにある。
天才の家系は一つの立派な花を咲かすために、多くのムダ花を作る木に似ている。ゲーテもベートーベンも、バイロンもそうであった。
ゲーテの父はきまった職もない人で、晩年は動脈硬化による精神病にかかり、ゲーテのキョウダイの五人のうち、三人はコドモのときに死に、六歳まで生きた弟は、のろまで、わがままな性格異常児、オトナになるまで生きていた妹は精神病者であった」(『天才』岩波新書)

「オカルト」と聞くと、ヒステリックになって拒絶する学者はすくなくない。オカルトに理解のあった小林秀雄も、雑誌掲載時に書いたオカルト的な記述を、注意深く削除してから単行本化した。しかし、宮城は、料簡のせまい科学者ではなく、科学からはみだした分野の問題、たとえば霊魂や心霊現象、死後の世界、超能力、テレパシーといったことがらについても理解を示し、冷静に発言している。そうしたところも、尊敬に値する。
(2017年3月8日)



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