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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

3月22日・丸山眞男の看破

2017-03-22 | 思想
3月22日は、仏国のパントマイマー、マルセル・マルソーが生まれた日(1923年)だが、政治学者、丸山眞男(まるやままさお)の誕生日でもある。

丸山眞男は、1914年に大阪で生まれた。父親は新聞記者だった。
7歳のころ、東京に引っ越し、旧制一高生だった19歳のとき、唯物論研究会の集会に出て逮捕、拘束され、取り調べを受けた。当時、特高警察に目をつけられていたマルクス主義の運動とは丸山は無縁だったが、その集会に出ていたのは大学生や社会人ばかりで、高校生の出席者は2人だけだったために、かえって大物と勘違いされたのだった。
東京大学法学部を卒業した丸山は、同学部に残り、研究者の道を進んだ。
30歳のとき、同学部助教授だった丸山は召集され、陸軍二等兵として出征。広島に原爆が投下されたときは、投下直下から約4キロメートルの地点にいて被爆。原爆爆発のときは、戸外に整列して部隊参謀の朝の訓話を聞いている最中だった。放射能については無知で、投下の翌々日には爆心地を丸山は歩いたという。
戦後は、東京大学教授として、日本政治思想史を研究しながら、戦後民主主義を代表する知識人として、ジャーナリズムの舞台でも発言を続けた。
マックス・ヴェーバーの影響を受けた近代主義者の学者で、戦後の天皇制を批判し、安保闘争を支持し、果敢に論戦の矢面に立った。
1996年8月15日に没。82歳だった。ちなみに、彼の母親は終戦の日、1945年8月15日に亡くなっており、母子は同じ日に息を引き取ったことになる。著書に『日本政治思想史研究』『現代政治の思想と行動』『日本の思想』など。

丸山眞男はこう書いている。
「大日本帝国における天皇の地位についての面倒な法理はともかくとして、主権者として『統治権を総攬』し、国務各大臣を自由に任免する権限をもち、統帥権をはじめ諸々の大権を直接掌握していた天皇が──現に終戦の決定を自ら下し、幾百万の軍隊の武装解除を殆ど摩擦なく遂行させるほどの強大な権威を国民の間に持ち続けた天皇が、あの十数年の政治過程とそのもたらした結果に対して無責任であるなどということは、およそ政治倫理上の常識が許さない」(「戦争責任の盲点」『丸山眞男セレクション』平凡社)

丸山眞男は、日本人の自己欺瞞とリアリズムの欠如を指摘し、グルー元駐日大使のつぎのようなことばを紹介している。
「日本人の大多数は、本当に彼ら自身をだますことについて驚くべき能力を持っている。……日本人は必ずしも不真面目なのではない。このような義務(国際的な)が、日本人が自分の利益にそむくと認めることになると、彼は自分に都合のいいようにそれを解釈し、彼の見解と心理状態からすれば全く正直にこんな解釈をするだけのことである」(「軍国支配者の精神形態」同前)

日本人にとっては耳が痛い意見だけれど、丸山眞男の言う通りである。
(2017年3月22日)



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