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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

6月9日・パトリシア・コーンウェルのリアル

2014-06-09 | 文学
6月9日は、ゴロ合わせで「ロックの日」。この日は「ナニワ金融道」のマンガ家、青木雄二が生まれた日(1945年)だが、「ミステリーの新女王」パトリシア・コーンウェルの誕生日でもある。

パトリシア・コーンウェルは、1956年、フロリダ州マイアミで生まれた。誕生時の名は、パトリシア・キャロル・ダニエルズ。彼女は『アンクル・トムの小屋』を書いたストウ夫人の子孫で、パトリシアの父親は、最高裁判所判事の事務をこなす法律家だった。パトリシアが6歳だった年のクリスマスに、父親は家族を捨てて出ていった。
彼女とその兄弟を連れて母親はノースカロライナ州へ引っ越した。母親はそこでうつ病になり入院したため、子どもたちはほかの家に預けられた。
パトリシアはテネシー州のキング・カレッジをへて、ノースカロライナ州のデイヴィッドソン・カレッジに移り、英文学を修めて、同大学を卒業。
卒業直後の24歳のとき、彼女は同大学の英文科の教授チャールズ・コーンウェルと結婚した。彼女の名はパトリシア・ダニエルズ・コーンウェルとなった。
新聞記者になったコーンウェルは、その後、警察担当の記者になった。
28歳のとき、彼女はバージニア州の州都リッチモンドの検屍局に勤めだした。同局で、コンピュータ・アナリストとして勤務しながら、警察でもボランティアで働いた。
33歳のとき、大学教授と離婚。そして34歳で犯罪小説『検屍官』を発表。
ヴァージニア州の女性検屍局長、ケイ・スカーペッタが主人公として活躍する同作品は、アメリカ探偵作家クラブの最優秀ミステリー賞、英国推理作家協会の新人賞を受賞して大ベストセラーとなり、コーンウェルは一躍ベストセラー作家となった。
以後、『証拠死体』『死体農場』など、スカーペッタの「検屍官シリーズ」や、『サザンクロス』『女性署長ハマー』などの「警察官アンディ・ブラジル・シリーズ」などを書き、世界的ベストセラー作家となった。

以前、テレビで、ヴァージニア州のリッチモンドに住んでいたころのコーンウェルの家を取材した映像を見たことがある。コーンウェルは、正真正銘の美人作家だった。彼女の住むリッチモンドは、何度か行ったことがあるけれど、かなり大きな街である。犯罪発生率も高い。
コーンウェルは、作者自身とかなり重なるキャリアをもつヒロイン、女性検察官スカーペッタを創造し、小説のなかで残虐な連続殺人犯と対決させたりしているけれど、そういう小説を書いて有名人となってしまった作者は、襲われる危険に備えて、つねに護身用のピストルを携帯していると言っていた。
米国だと、彼女の犯罪小説を読み、美しい作者の写真を見て、凶行を思いつく異常者というのはけっこういそうで、犯罪小説を書くベストセラー作家(しかも独身で美人)というのも大変だなぁ、と、現代犯罪のこわさをリアルに感じたのをよく覚えている。
彼女は50歳のときにハーヴァード大学の先生と再婚し、現在はマサチューセッツ州コンコードに住んでいるそうだ。いっしょに暮らす家族もでき、より安全な土地に移ったわけで、いまはもう彼女もピストルは携帯していないかもしれない。

コーンウェルの『検屍官』は、「ミステリーの女王」アガサ・クリスティの『オリエント急行殺人事件』とともに、『名作英語の名文句』でもとり上げた。
「女王」と比べ、「新女王」の小説は、ぐっと現代的で、こわくなった気がする。すくなくとも、自分にとっては、コーンウェルの小説はかなりこわい。
(2014年6月9日)


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