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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

9月30日・カポーティの不眠への挑戦

2014-09-30 | 文学
9月30日は、グラムロックのマーク・ボランが生まれた日(1947年)だが、『ティファニーで朝食を』を書いたトルーマン・カポーティの誕生日でもある。

トルーマン・ガルシア・カポーティは、1924年、米国ルイジアナ州のニューオリンズで生まれた。父親はセールスマンで、母親は17歳でトルーマンを産んだ。
トルーマンが4歳のとき、両親が離婚し、彼は母方の親戚の家を転々としながら育った。
子どものころ、この子は知能が低いのではないかとテストを受けに行かされたトルーマンは゛天才の折り紙をつけられて帰ってきた。
高校を中退し、18歳でニューヨークに出たカポーティは、雑誌「ニューヨーカー」の会計助手となった。が、すぐに引き算がまったくできないのがばれ、新聞の切り抜きをする部署へ転属になった。雑誌への企画や、演説の原稿を提供しながら、短編小説を書いた。
19歳のとき他社の雑誌に投稿した短編『ミリアム』でO・ヘンリー章を受賞。
2年ほどで会社を辞め、アラバマの親戚の家へ引きこもった。彼はそこで小説を書きだし、後にニューオリンズに部屋を借りて、さらに小説執筆を続けた。
そうして書き上げた長編小説『遠い声・遠い部屋』を23歳のときに発表。天才作家出現、と大評判になった。以後『夜の樹』『草の竪琴』『わが家は花ざかり』『クリスマスの思い出』『ティファニーで朝食を』を書き、42歳のときに、実際にあった殺人事件について綿密に取材調査した上で書き上げた『冷血』を発表すると、この作品は『風と共に去りぬ』以来と言われる大ベストセラーとなった。その後、長い沈黙をへて、社交界のゴシップに題材を得た『叶えられた祈り』を発表。一大センセーションとなり、ショックを受けた登場人物のモデルが自殺するなどの騒動を引き起こした後、1984年8月、カリフォルニア州ロサンゼルスの友人宅で、心臓発作により没した。59歳だった。

カポーティの『ティファニーで朝食を』は、拙著『名作英語の名文句』でもとり上げた。
自分は若いころからのカポーティ・ファンで、小説や評論を含めて彼の文章は、翻訳されているものはすべて読んでいると思う。どの作品も、それぞれ味わいがちがう傑作ばかりである。『ティファニー』と『叶えられた祈り』は英書ももっていて、ときどき拾い読みする。
文章の達人で、きれのある、とても密度の濃い文章を書く人だった。性格がすごく悪い人で、彼が来日したときは三島由紀夫がとても親切にしたのに、三島が渡米した際はカポーティはけんもほろろだったという逸話を聞いたことがあるけれど、彼が文章の天才だというのは素直にうなずける。

どこに書いてあったか、うろ覚えの記憶で書くのだけれど、眠れないという人に会うと、自分はかならず以下の話を伝えることにしている。
若いころ、カポーティは不眠症で悩んだことがあった。どうしても眠れないカポーティは、いろいろ記録を調べた結果、人類史上いまだ不眠のせいで死んだ者はいないということを知った。「死因、不眠症」という例はない、と。
そいつはおもしろい。ならば、どこまで眠れないか起きていてやろうじゃないか。「人類初の不眠症で死んだ男」。いいじゃないか。そう考えて、ずっと起きていることにした。そうしたら、4日くらい起きていたら、どうしても眠くなって、寝てしまったそうだ。
「あなたがこれから先、どんなたいしたことをしでかすかわからないけれど、案外そうたいしたこともしでかさないまま死んでしまうかもしれない。それを思えば、人類初の不眠症で死んだ人になれたら、ちょっとしたものじゃないですか」
人にそうすすめながら、自分でも挑戦したい誘惑にかられるのだけれど、自分は目を閉じるとすぐに眠ってしまう性質で、残念ながらこの分野では自分は歴史に名を残せそうにない。
(2014年9月30日)


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