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衆愚選挙

2017-07-09 22:37:16 | マスメディア
  豊田真由子さまによる秘書への暴行・暴言事件報道は実に面白かった。しかしその直前、運転していたトロそうな秘書が高速道路を逆走した事実はほとんど報道されていない。逆走は命にかかわることで、これがあるとないとでは状況は大きく異なる。反応は過剰であるが、逆走が事実であれば頭に血が上ることもある程度理解できる。

 その後、当の秘書は警察に暴行の被害届を出し、受理されたそうだ。ご丁寧にも予め用意した診断書まで添えてである。トロいどころか、ずいぶん用意周到な方とも見える。豊田氏に対するメディアの激しいバッシングに秘書氏は「正義は我にあり」と力づけられ、失意の豊田氏をさらに攻撃したとも映る。水に落ちた犬を叩く、執念の人である。しかし内輪の問題を警告もなしに週刊誌に告げ口する手法には疑問が残る。

 それはいきなり背後から切りつけて致命傷を負わせるような行為であり、きわめて後味が悪い。こんな人とは絶対に関わりたくない。その行為が私怨によるものでなく、大義名分があるというならばせめて名乗り出てはどうか。興味本位に騒ぐメディアと一緒になって、豊田氏を社会的に抹殺するという過大な結果を招くだろう。メディアは共犯だからか、秘書氏を非難する話は聞かれない。密告同様の行為が正当化され、面従腹背の人物がウヨウヨいるような世にはなってほしくない。

 最近、かつての「時の人」籠池氏の自宅にTBSの記者らが訪れ、籠池氏と歓談している様子が放映された。もはや容疑者どころか、有名人である。彼はしつこい人との定評どおり、安倍首相の都議会選挙応援演説に100万円をもって駆けつけたそうだ。そんな金があるのなら、踏み倒した建設会社に支払ってもよいと思うが、ずいぶん厚顔な人である。

 こうしたメディアの姿勢がモラルを低下させる懸念があることは前回述べた。さらにこうした姿勢が都議会選挙に大きな影響与えた可能性がある。自民大敗の原因を森友、加計問題と、豊田、萩生田、稲田、下村各氏の言動や行動に求める議論がある。そうかもしれない。しかしそんなことで選挙の結果が決まっていいものだろうか。つまり今回の都議会選挙からは各党が自らの政策を掲げて争い、それを都民が選択するという選挙本来の意味がなかなか見えてこない。

 端的に言えば、自民党の多くの失点が大きく報じられてイメージが悪化し、都民ファーストという得体の知れない党に票が流れたと見ることができる。民主党が勝利し、その後見事に馬脚を現した2009年の総選挙と似ている。どちらも冷静で賢明な投票行動とは言えない。結果を左右したのは負けた側のイメージ悪化であり、その裏には恣意的にそれを煽ったメディアがある。

 メディアは選挙の意味を失わせた当事者であるからか、こんな選挙が民主主義を危うくしているという問題意識を持っていないようだ。いや持っていても知らんふりをしているだけかもしれない。有権者が賢くなればメディアの扇動力は弱くなり、支配力も弱くなる。かつて「担ぐ神輿は軽くてパーがいい」と小沢一郎氏は言った(注)。この場合、担がれるのは首相ではなく、主権者と持ち上げられる有権者であるが。
 (注 海部俊樹議員を首相に担ぎ上げたときに言った言葉とされる)

 政治が劣化しているという議論があるが、その裏には選挙の劣化があり、さらにその裏に事実の報道より政治的野心を優先する新聞と、おもしろければ何でもよいとするテレビがあるように思う。これも民主主義のひとつの形態である。これを進化というべきだろうか。