パピとママ映画のblog

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あなたを抱きしめる日まで ★★★★

2014年03月19日 | あ行の映画
10代で未婚の母となり幼い息子と強制的に引き離された女性の奇跡の実話を、『クィーン』などのスティーヴン・フリアーズ監督が名女優ジュディ・デンチを主演に迎えて映画化。ジャーナリストのマーティン・シックススミスによる「The Lost Child of Philomena Lee」を基に、50年前に生き別れた息子との再会を願う母親フィロミナの姿を描く。彼女の息子捜しを手伝うマーティン役には、本作のプロデューサーと共同脚本も務める『マリー・アントワネット』などのスティーヴ・クーガンがふんする。
<感想>かつてアイルランドのカトリック修道院が、金銭と引き換えに、未婚の母の子供を養子に出していたと言う。この真相を取材したイギリスの元ジャーナリストによるノンフィクションを原作に、生き別れた母子をスリリングかつハートフルに解き明かしていく人間ドラマである。

映画の中で、この元ジャーナリストを演じるスティーヴ・クーガンは、脚色とプロデューサーも務めている。監督は『クィーン』などの名匠スティーヴン・フリアーズ。大女優ジュディ・デンチが、つらい過去を秘めながらあつい信仰を持ち続ける普通の主婦を演じているのも素敵ですね。

物語は、主婦のフィロミナには50年間隠し続けていた秘密があったのです。それは1952年のアイルランド。心ときめくままに身をまかせた男性の子供を、未婚で身ごもってしまった彼女は、10代で家を追い出され修道院に入れられる。そこでは、出産の面倒を見る代わりに、同じ境遇の少女たちが過酷な労働を強いられていた。息子が生まれアンソニーと名付けて、我が子に会えるのは1日1時間だけ。

そして、3歳になった時、アンソニーは突然養子に出される。今になってようやくこの事実を打ち明けられた娘のジェーンは、BBCの元ジャーナリスト、マーティンに話を持ちかけます。最初は三面記事的なネタに難色を示すマーティンだが、元ジャーナリストから政府広報担当となるも、スキャンダルに巻き込まれて職を追われた彼にとっては、記事が成功すれば再起のチャンスになるかもしれないと、こうして話は成立する。

フィロミナとマーティンとの息子捜しの旅が始まるのです。性別や世代はもちろん考え方も社会的背景も、まったく異なる二人のコンビが何とも面白い。30年間、看護婦として働き、質素だが地に足のついた暮らしをしている彼女は、真っ直ぐだけど夢見るところがあって、ロマンス小説がお気に入りなんです。
一方、マーティンは、オックスフォード出のエリートで、贅沢を知り世知にたけており、洗練された皮肉屋でもある。マーティンの辛辣を時に笑い、時に叱るフィロミナ。彼女の無邪気な振る舞いに、目を丸くするマーティン。この噛み合わないやり取りが、漫才のようで可笑しいのである。
実はマーティンは、かつてはカトリックだったという接点にも注意したい。今はすっかりと信仰を失ってはいるが、カトリック修道院の悪行が招いた悲劇を暴くことは、彼にとって決して唐突なテーマではなかったはず。

本作に於けるカトリック教会への批判的側面は強い。それは、若き日のフィロミナが収容された“ランドリー”と呼ばれる、未婚で子供を産んだ娘たちを強制労働させた修道院施設の在り方、修道院による養子斡旋といった歴史的な事実への攻撃など。あるいは、修道院の中のシスターたちの女性に対する処女崇拝への疑問もあるだろう。

だが、本作には、裁きや怒りがあるだけではない。やはり最も興味深いのは、フィロミナという女性の存在である。彼女の生活感たっぷり、慎ましく、チャーミングな彼女は、親しみやすい普通の女性。一方では、若い頃に知った性の快楽に肯定的なのが面白い。
そして、見つかり、分かる自分の息子がゲイだったという事実も。それが災いしてか、エイズで亡くなっていたとは。彼女はこのことも自然に受け入れている。それにしても、息子が立派な弁護士という職業で、大統領の仕事も引き受けていたという成功者で有ったと言うことも。彼女は、自分の息子を誇りに思うことでしょう。

50年経って、訳あって養子に出してしまった息子に会いたい思うのは、母親の身勝手かもしれない。長い年月が経過して、息子の方からでも母親に逢いたいを思うのが理想なのに。それが叶わなかったのは、息子がどうしても母親のことを許していなかったのかもしれませんね。
しかしながら、最後に二人が辿り着く息子の居場所が、アイルランドの修道院だったとは。すでに母親のことを許していて、母親の近くで眠りたいという願いからなのでしょう。これは、母親なら、女性として、どんな事があろうとも、子供とそんな形で別れたのなら、一度ならずとも何度でも探し当てて逢いに行くべきでしょう。最後に、この締めくくりに、安堵感と嬉し涙が込み上げてきて、構成の素晴らしさに胸のつかえも取れました。
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