パピとママ映画のblog

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帰ってきたヒトラー ★★★★

2016年07月21日 | アクション映画ーカ行
現代にタイムスリップしたアドルフ・ヒトラーが、モノマネ芸人と誤解されて大ブレイクしていくさまを過激な風刺で描いて世界的ベストセラーとなったティムール・ヴェルメシュの同名小説を映画化したドイツ映画。主演は舞台を中心に活躍するオリヴァー・マスッチ。監督は、これが日本初紹介のダーヴィト・ヴネント。
あらすじ:1945年に自殺したはずのアドルフ・ヒトラーが、なぜか2014年のベルリンにタイムスリップして甦る。やがて彼をモノマネ芸人と勘違いしたディレクターにスカウトされ、テレビ番組に出演することに。すると、ヒトラーが生きていたらいかにも言いそうな言葉で現代のドイツを斬りまくると、その“芸”の完成度が評判を呼び、彼はたちまち大ブレイク。しかも言っている内容も意外に真理を突いていると迷える現代人の心を捉え、いつしか再び大衆の支持を集め始めてしまうヒトラーだったが…。

<感想>20世紀最悪の独裁者アドルフ・ヒトラーが、なぜか現代にタイムスリップし、モノマネ芸人としてTVに引っ張りだこに、という笑いの中にピリリと毒気たっぷりの風刺を効かせた問題作であります。
悪名高いあのヒトラーが現代のドイツに生きていたらどうなるのか?・・もちろん1945年4月に自殺したという歴史的な事実でもあるのだが、もし、今ヒットラーが再来したら、意外にも人気者になり、強いリーダーシップを求める大衆は再び彼を選ぶのではないか、という何とも空恐ろしい不適なテーマを突き付ける喜劇である。

そっくりさんといっても、このヒトラーに扮する俳優をよく見ると、顔の輪郭も背格好も、我々がイメージするあのヒトラーとはかなり違うのだ。似ているのは斜めに分けた髪型と口髭くらいか。それでも人々は本物とは違うと認識していながらも、心のどこかでひょっとして、と妙な期待を抱いてしまうものらしい。

だから、モノマネ芸人として誤解されて引っ張り回され挙句に、ドイツ全土をめぐる旅に出たあとテレビ番組に起用されてスターになるわけ。ヒトラーがバラエティ番組に出演した際のひとコマでは、アメリカのバラク・オバマ大統領になりきった司会者の隣に立ち、威圧感たっぷりに視線を飛ばしている。

スタジオに登場したヒトラーは、司会者からの握手の求めにも応じず険しい表情で一瞥(いちべつ)。観客や番組関係者が固唾をのんで見守るなか、ひと言も発さずただじっと立ち続ける。沈黙することにより、その後に続く言葉のインパクトを高めるヒトラー流の人心掌握術が描かれると同時に、現代にやってきたばかりのヒトラーが早くもカリスマ性を発揮し始めていることが感じられる。

それに映像では、テレビのバラエティ番組に出演したことで注目されたヒトラーが、YouTubeで出演動画が拡散されたことによりあっという間に人気に火がつくさまが切り取られている。YouTuberが「戦争は最悪だけどあの芸人は絶好調だぞ」「とにかく彼をフォローするわ。要チェックよ」「彼の言い分には一理あると思う」とヒトラーを話題に上げ、番組を編集した“MAD動画”やファンによるアニメーション動画が流行、さらに“総統ファッション”まで登場するという“祭り”状態に発展する。(資料より)

やれやれこれではあの本物と同じではないかと憤慨している内に、この新ヒトラーは、歯に衣着せぬ直言でのし上がり、ついには日記の出版から映画の製作まで手掛けることに。ここまでくれば、「モンティ・パイソン」に通じる皮肉と風刺を込めたパロディー映画になっている。つまりは、あの「チャップリンの独裁者」と同じ系譜なのだが。

まさにわれらの内なるヒットラーであるからして、かつては彼を選んだドイツ人だからこそ作れた映画なのかもしれない。観ていて素直に笑える喜劇ではない。すべて、自虐的などす黒い笑いなのだ。ファンタジーとドキュメンタリーを織り交ぜたこの映画の世界が、現実になりつつある予兆を感じる。
アイデア勝ち、と見られても仕方ないほどの強烈な題材である。街頭の一般人とゲリラで接触させ、生の反応をとらえるリアリズムを演出するため、ヒトラー役には世間にあまり有名ではない舞台俳優が起用されているが、それによって完全なフィクションを前提とした場合の「ヒトラー」という人間の人格の掘り下げは叶わなかったように思う。

それにしても、あのヒトラーそっくりに民衆の支持を集めた国民的なヒーローへとのし上がっていくことに対して、何か不気味な時代の風圧を感じる。あのヒトラーが暗躍した同じドイツに今再び「ヒトラー的なもの」がじわじわと侵食しつつあるのではないか。ヒトラーとは怪物でも英雄でもない、一人の生身の人間であることをもう一度とらえ直してみる必要があるのではないかと。あの悪夢のようなカリスマを復権させないためにも。

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