パピとママ映画のblog

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わたしは、ダニエル・ブレイク★★★★

2017年03月22日 | アクション映画ーワ行
『麦の穂をゆらす風』などのパルムドールの常連ケン・ローチ監督がメガホンを取り、社会の片隅で必死に生きようとする男の奮闘に迫る人間ドラマ。病気で働けなくなった主人公が煩雑な制度に振り回されながらも、人との結び付きを通して前進しようとする姿を描く。コメディアンとして活動しているデイヴ・ジョーンズらが出演。ローチ監督にパルムドールをもたらした力強い物語に震える。
あらすじ:59歳のダニエル(デイヴ・ジョーンズ)は、イギリス・ニューカッスルで大工の仕事に就いていたが、心臓の病でドクターストップがかかる。失職した彼は国の援助の手続きを進めようとするが、あまりにもややこしい制度を前に途方に暮れる。そんな中、ダニエルは二人の子供を持つシングルマザーのケイティと出会う。

<感想>ジミー、野を駆ける伝説」(2014)で監督業から引退を表明していたのだが、80歳になる彼がその宣言を撤回してまでどうしても伝えたいことがあると、制作したのがこの作品。カンヌ映画祭で2度目のパルムドールを受賞したという事実こそを、まずは評価したい。
それはこの主人公である59歳のダニエル・ブレイク。最愛の妻を亡くしたばかりの大工のダニエルは、心臓病で医者から働くことを止められているのに、仕事をしなければ食べていけない。生活に必要な支援を受けるために役所に行くと、本当に病気で仕事ができないのか審査される。様々な質問に答えるものの、何かちぐはぐなやりとりである。「問題は心臓病だ」と言っているのに、「腕は上がりますか、帽子はかぶれますか」と質問される。審査をする側は、決まった質問を次から次へと並べ立てて、身体の不調を訴えるダニエルに対して、「ちゃんと答えてくれないと審査に影響しますよ!」とダニエルを厄介者扱いをしているようにしか思えない。

審査の結果の通知が来るのも時間がかかる。確認したいと電話をすれば、録音の機械の音声が応答するばかり。それに、役所での仕事の効率化は分かるが、「申請、照会はオンラインで」と言われた時点で、ダニエルみたいなアナログな人間はハジカレルのだ。
どうして、ダニエルは医者の心臓病の診断書を役所に提示しなかったのか。それにしても、役所というところは、パソコンの出来ない老人に対して不親切であり、手のひらを返したように追っ払うのだ。書類を提出するのに、すべてパソコンで打たなければならないなんて。日本でもそうなのだろう。

「就労可能で手当ては休止」と職業安定所で烙印を押されてしまう。そこで出会ったのが、2人の子供を抱えるシングルマザーのケイティ。彼は何度も彼女と一緒に手を携えては、難局を乗り越えようとするのだが、・・・。それに、2人の子供がいるシングルマザーのケイティは、難民かそれともイギリス国民ではなかったのか?・・・彼女は父親が違う子供を2人産み、その父親から養育費を貰うように申請できるのに。

だから、2人の子供を抱えて家賃の高いロンドンでは暮らせず、この地へ来て福祉施設の世話になることになる。だが、彼女にも国の制度は冷たかった。雨露をしのぐアパートは与えられたけれど、食べていくのにお金がない。無料のフードバンクの行列に並ぶケイティは、子供たちに食べさせて自分は何日も食事を口にしてないのだ。やっと順番が回ってきて、缶詰や野菜にパン、スープにパスタソースなどたくさんの食べ物を袋に詰める。だが、余りに空腹なのでパスタソースの缶詰を飲んで倒れてしまうケイティ。

これがイギリスの現実なのか、いや日本だってこのようなシングルマザーがたくさんいるはず。そう変わらない現実があることを忘れてはならない。彼女がお金のために、売春まで手を染めてしまうのは残念だが、そのことも、ダニエルが仕事場まで行って説き伏せるのだが、若いケイテイにはそれしか選ぶ仕事がなかったのだろう。

さて現実は、そこから浮かび上がるのは貧困と病に打ちひしがれてもなお生きようとする、いや生きねばならぬ庶民の悲痛な叫びであり、矛盾した制度と過酷な現実に追い詰められた福祉社会であります。誰のための社会保障なのか?、困り切って助けを求める市民に、申請、審査、認定、不服申し立て、支給停止、などと様々なハードルが立ちはだかるのだ。

その初老のダニエルが、ついに堪忍袋の緒を切らす後半のクライマックスでは、観客は誰しもが言葉を失うに違いない。「私は、ダニエル・ブレイク。税金を支払い今まで働いて来た。なのに役所は病人に対して、親切に対応してくれず、挙句に働けと職業の斡旋をすると言う。正当な扱いを要求する」と、社会福祉事務所の壁に抗議の叫びを描き、声高らかに公衆の前で叫ぶのだ。
その落書きをしたことや、ダニエルに対して警察で取り調べがあるも、トイレで心臓病で亡くなるという結末に愕然とする。
その主張のあまりの救いのなさに、たじろぐ思いをする人がいるかもしれないが、名もなき一市民ではなく、名のある一人の人間として、この人間の尊厳こそが、ケン・ローチの終生のテーマであることを、改めて感じさせる名場面でした。
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