パピとママ映画のblog

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手紙は憶えている ★★★★・5

2016年12月28日 | アクション映画ータ行
「スウィート ヒアアフター」「白い沈黙」のアトム・エゴヤン監督が「人生はビギナーズ」のクリストファー・プラマーを主演に迎え、アウシュヴィッツを生き延びた老人の復讐の旅路を描いたサスペンス・ドラマ。70年前にナチスに家族を殺された主人公が、認知症による記憶障害に苦しみながらも、友人から託された手紙を頼りに復讐へと向かう壮絶な旅の顛末をサスペンスフルに綴る。共演はマーティン・ランドー。
あらすじ:90歳のゼヴ(クリストファー・プラマー)は、妻を亡くしたことさえ忘れるほど物忘れが進んでいた。ある日、彼に友人マックス(マーティン・ランドー)が1通の手紙を託し、家族を殺したドイツ人兵士への復讐(ふくしゅう)を依頼する。自分と同じくアウシュビッツ収容所の生き残りで体が不自由な友人のために、ゼヴは単身でリベンジを果たそうとするが……。

<感想>これが脚本家デビューだというベンジャミン・オーガストの紡いだ独創的な物語が、名匠アトム・エゴヤン監督の手により映画化された。それは、ホロコーストを題材にした作品は多いのだが、ナチスの蛮行や当時のアウシュビッツの惨状、ヒトラーの人物像、生き延びた者のサバイバル、戦後の裁判や当事者の発言から真実に迫るものなど、その手法は多岐にわたりもう出屈くしていると思われるのだが。
ですが、本作に見られるホロコーストはまったく違う視点で示されていた。しかも舞台が現代に絞って描き切っているのも凄い。70年前に家族をナチスに殺された90歳の主人公ゼヴを演じるのは、同年代のクリストファー・プラマーなのだ。

ユダヤ人のゼヴは既に高齢者施設にいて、初期の認知症を発症している。眠りから覚める度に記憶は失われ、死んだ妻を探す。そんな危い主人公が、車椅子の友人マックスの助けを借りながら、かつて家族を殺したナチスの兵士に復讐しに行くという物語。

身分を偽り逃げはせている敵の候補は4人いて、拳銃を手にいれ順に会いに行くのだが、度々自分がなぜ今ここにいるのかが分からなくなる。その都度、洋服のポケットを探って手紙に気づき、要件を思い出す。拳銃を入手したり、うっかり期限切れのパスポートでカナダへ渡ろうとしたり、ゼヴの旅はクリアしなければならないことが山ほどあるが、老人ゆえに無害という印象が、意外にもつまづかずに彼を核心へと向かわせていく。

リベンジ候補に会い、違ったらリストから名前を消していく方式だ。非常に重いテーマなのだが、何故かロードムービーのような趣もあり、「お爺ちゃん、大丈夫なの?頑張って」と応援したくなるのだ。泣けるのは、宿敵候補も超高齢なところで、他界しているケースや、同じ収容所だったことが判明して一緒に涙を流すケースもある。

また現代の反ユダヤに出会いヒヤリとする場面も、物凄い勘違いで自慢のナチ・コレクションをゼヴに披露する警官を演じるのは、ハンクことディーン・ノリスだ。これまた絶品のハマリ役であった。実際生き残っている戦犯は世界各地に潜んでおり、それを追求し続ける組織もあるそうだ。2016年、ある94歳の戦犯の罪が立証され禁固5年の刑を言い渡されたとも聞く。

この映画はまさに現在進行形のもので、復讐するものにとっては今が終末の時なのだ。法の裁きは寿命との兼ね合いを思うと、間に合わなさそうに思える。そんなスリリングな状況の中で、ピアノがあると昔覚えた曲を演奏するというような、時には焦点の合う体と意識が、それ故に、この映画のラストには鳥肌が立つような悲劇が待っていた。

久しぶりに脚本力を感じる映画だった。認知症の老人を手紙で誘導して、復讐へと向かわせるというアイデアが、ゾクゾクとさせる。しかもターゲットがナチスの残党というのが次のゾクゾク感であります。容疑者が4人いて、誰が本物の標的かの謎。それより彼らのもとに無事にたどり着けるかのハラハラ感も。その道中の趣向も含めて、串団子方式の構成の巧さ痺れた。
ゼヴは目的を達成し、悲哀に満ちたエンドロールが流れることを予測していたのに、それが最後の5分がとんでもないことに。86歳のクリストファー・プラマーの演技もお見事であり、こんな心臓に悪い展開になるとはまったくもって予想外。驚愕な結末に悲観にくれてしまった。
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