パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞、未公開DVD、お気に入り自己所有のビデオ・DVDの感想などネタバレ有りで記録しています。

アーティスト ★★★★

2012年04月11日 | アクション映画ーア行
1920年代、映画がサイレントからトーキーへと移行する時期のハリウッドを舞台に、サイレントの大スターとトーキーの新進女優の恋物語を情感豊かに描くモノクロサイレント映画。出演は、本作でカンヌ国際映画祭男優賞受賞のジャン・デュジャルダン(「ブルー・レクイエム」)、「ブラウン夫人のひめごと」のベレニス・ベジョ。

あらすじ:1927年、サイレント映画全盛のハリウッド。大スター、ジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、共演した愛犬とともに新作の舞台挨拶で拍手喝采を浴びていた。熱狂する観客たちで映画館前は大混乱となり、若い女性ファンがジョージを突き飛ばしてしまう。
それでも優しく微笑むジョージに感激した彼女は、大胆にも憧れの大スターの頬にキス。その瞬間を捉えた写真は、翌日の新聞の一面を飾る。写真の彼女の名前はペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)、未来のスターを目指す新人女優だった。
映画会社キノグラフでオーディションを受けた彼女は、愛らしい笑顔とキュートなダンスで、ジョージ主演作のエキストラ役を獲得。撮影後、楽屋を訪ねてきたペピーに、ジョージは“女優を目指すのなら、目立つ特徴がないと”と、アイライナーで唇の上にほくろを描く。

その日を境に、ペピーの快進撃が始まる。踊り子、メイド、名前のある役、そして遂にヒロインに。1929年、セリフのあるトーキー映画が登場すると、過去の栄光に固執し、“サイレント映画こそ芸術”と主張するジョージは、キノグラフ社の社長(ジョン・グッドマン)と決別する。
しかし数か月後、自ら初監督と主演を務めたサイレント映画は大コケ。心を閉ざしたジョージは、心配して訪ねてきたペピーすら追い返してしまう。それから1年。今やペピーはトーキー映画の新進スターとして人気を獲得していた。一方、妻に追い出されたジョージは、運転手クリフトン(ジェームズ・クロムウェル)すら雇えなくなり、オークションで想い出の品々を売り払う。
執事にその全てを買い取らせたペピーは、ジョージの孤独な背中に涙を流す。酒に溺れるジョージは自分に絶望し、唯一の財産であるフィルムに放火。愛犬の活躍で救出されたジョージの元へ駆けつけたのは、変わらぬ愛を抱くペピーだった。“銀幕のスター”ジョージを復活させる名案を携えて。(作品資料より)

<感想>全編ほとんど台詞なしのサイレントで、しかもモノクロ。劇中劇でジョージが主役を演じるのは、フェアバンクスの「怪傑ゾロ」シリーズを思わせ、チャップリンの名作やSFの元祖「メトロポリス」など、サイレント映画へのオマージュ満載。ジョージのモデルは伝説のスター、ダグラス・フェアバンクス。
一切台詞が使えないので、俳優たちは表情の変化や身振り手振りで感情を伝えている。その豊かな表現力に感心!特にジョージの眉に動きが絶妙。その完成度の高さが評価され、今年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞他計5部門の栄冠に輝いた話題作。
作品賞がフランス映画にもたらされるのは初の快挙だが、ハリウッド黄金時代を描いたことで、多くの映画人から支持されたのですね。

サイレントからトーキー映画に移る1920年後半を舞台に、落ちぶれていく映画界の大スターと新進女優のドラマが、切なくもロマンチックに展開する。名作へのオマージュも盛り込まれるが、余計なことを考えなくても素直に感動できるのが本作の魅力。
キャストの名演技も光る中、天才ワンコのアギーがジョージと一緒に映画に出演し、撃たれて死ぬフリなど、様々な名人芸をこなす天才犬。ジョージのピンチにも思わぬ大活躍には、観客を虜にするはずですね。
サイレントというシンプルな技法が、ラブ・ストーリーを語るのに適しているのだと思う。あえて古きよきモノクロ&サイレント映画のスタイルを徹底して、役者の表情と動きと音楽というシンプルな要素が、多くの感情を伝えているのが読み取れる。
斬新な試みではあるけれど、進化していく世界に人間がどう順応していくかという現代的なテーマが見えて、サイレントを現代に甦らせた本作品は、台詞のない映像だけで、飽きさせずに1時間以上の物語を見せること。

劇中で見せるペピーが、ジョージを思う気持ちを表すロマチックなシーンでは、ジョージの洋服が掛けられているハンガーを相手に抱きしめる場面とか、フランス俳優陣の中に混ざってジョン・グッドマン演じる映画会社社長や、運転手のジェームズ・クロムウエル。それにペピーがエキストラとして出番を待っている時に、隣の席にマルカム・マクダウエルが少ない出番で光っていました。ラストの主人公ジョージと新人女優ペピーの華麗なタップダンスが見ものですね。

観客は現実から少し離れた“サイレント”の世界を、子供に返ったような純真な目線で受け入れようとするでしょう。それは作品の世界に素直に入っていけるんですね。トーキーでは滑稽に見えるポエティックなシーンも、映像だけならすんなりと見られる。それがサイレントの利点ですもの。
サイレントは、1920年代で幕を閉じた古いイメージがあるけれど、その後も騒々しい音を排除した自分自身の声を見つけている。サイレントは単にセリフを抜き取った“欠如の映画”ではなく、セリフがないからこそ観客の心に直接響き、純真にイメージを受け取れる「可能性が広がる映画」だと思います。
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