パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞、未公開DVD、お気に入り自己所有のビデオ・DVDの感想などネタバレ有りで記録しています。

午後8時の訪問者 ★★★

2017年05月10日 | アクション映画ーカ行
「息子のまなざし」「サンドラの週末」のジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督が、一人の身元不明少女の死の真相を探る若い女医を主人公に描くヒューマン・サスペンス。少女の死に責任を感じ、その足取りを辿る中で自らも思いも寄らぬ危険に巻き込まれていくヒロインの運命を、現代の様々な社会問題を背景にスリリングに描き出す。主演は「水の中のつぼみ」「メゾン ある娼館の記憶」のアデル・エネル。
あらすじ:有能な若き女医ジェニー。今は小さな診療所勤めだが、間もなく大きな病院へ好待遇で迎えられる予定。ある晩、診療所の呼び鈴が鳴るが、診察時間は過ぎているからと、研修医ジュリアンがドアを開けようとするのを引き止める。翌日、警察が来て、近くで身元不明の少女の遺体が見つかったと知るジェニー。昨晩の監視カメラには、呼び鈴を鳴らす少女の姿が映っていた。あの時、ちゃんと出ていれば少女は死ななかった、と自分を責めるジェニー。罪悪感から携帯にコピーした少女の写真を手に、名前も分からない彼女の身元を突き止めるべく自ら聞き込みを始めるが…。

<感想>今作では、郊外の小さな診療所の女医が主人公で、主人公のジェニーに、アデル・エネルが演じている。医者が診察時間が過ぎていたので、診療を断る。そのためにトラブルに巻き込まれてゆく。翌日見つかった少女の遺体。救えたかもしれない命に起きた真相を、主人公である若き女医が探り始める。
医師と刑事と修道女を合わせたような彼女は、罪悪感と正義感に突き動かされ、究明をやめないのだ。

診療所に来る患者は、低所得者層が多い。一人暮らしらしい老人もいるし、移民もいる。ジェニーは患者に思いれすることなく、ビジネスライクに治療を行ってゆく。ならば、住民たちの社会的状況と移民の問題を、ドキュメンタルに描くことも可能なはずなのに。
ジェニーは、その事実にショックを受ける。あの時、中に入れていれば、少女は死ななかったかもしれない。ジェニーは、罪の意識にかられ、少女の身元を探ろうとする。

死んだ少女はアフリカからベルギーにやってきた移民で、生活のために売春婦をしていたことも分かってくる。ベルギーの街には、日常的に黒人たちの姿が見える。自分は弱い立場の人間に冷たく接してしまった。その罪の意識が、ジェニーを苦しめる。

だから忙しい時間の間を縫って、少女が何者か知ろうと、さまざまな人間たちに尋ねて歩く。彼女は実によく電話をしている。それがかえって正規に入国していない移民たちの不安をかきたてるのだ。

そして、事件の核心に迫るサスペンスに加え、その過程における、彼女の心理の変化がもう一つのサスペンスとなっているようだ。現在勤務している小さな診療所は、老人の医師で病気でもあり、この診療所を閉めてしまおうと思っている。研修医ジュリアンも故郷へ帰ってしまうし。
ですが、時間外に診療所に来た人間の診察を断ったことは、法律的には咎められることはない。ただ、なにもしなかったことに対して、彼女は良心の呵責を感じるからである。ということは、この作品は、謎解きサスペンスではないのだ。
主人公の女医が、人の命を救う職業に就いているはずなのに、何故にあの時ドアを開けなかったか。それで、彼女の命を見捨ててしまったこと。それが、ジェニーの心を突き動かすのですね。
暴力に向き合う物語でもあり、ダルデンヌ兄弟の軽やかで懐の深い野心作でもあります。

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