パピとママ映画のblog

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エル ELLE ★★★★

2017年10月11日 | アクション映画ーア行

『ピアニスト』などのフランスの名女優イザベル・ユペールと『氷の微笑』などのポール・ヴァーホーヴェン監督が組んだ官能的なサイコスリラー。『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』の原作者フィリップ・ディジャンの小説を原作に、レイプ被害者の女性が犯人を捜しだそうとする姿を描く。『ミモザの島に消えた母』などのロラン・ラフィットや『愛されるために、ここにいる』などのアンヌ・コンシニらが共演。欲望や衝動によって周囲を巻き込んでいく主人公を熱演するイザベルに注目。
あらすじ:ゲーム会社の社長を務めるミシェル(イザベル・ユペール)はある日、自宅で覆面の男性に暴行されてしまう。ところがミシェルは警察に通報もせず、訪ねてきた息子ヴァンサン(ジョナ・ブロケ)に平然と応対する。翌日、いつも通りに出社したミシェルは、共同経営者で親友のアンナ(アンヌ・コンシニ)と新しいゲームのプレビューに出席する。

<感想>イザベル・ユペール、初めてこの女優に強烈な印象を与えられたのは、ミヒャエル・ハネケ監督作品「ピアニスト」だった。その彼女がこの上なく優雅に“変態”を演ずる。しかもあの「氷の微笑」「ブラックブック」のポール・ヴァーホーヴェン監督が組んで。そして案の定、彼女は素晴らしかった。

映画はいきなり、ユベールが家に侵入してきた覆面男に暴行されるシーンから始まるとはこの監督らしい。暴行され傷を負っても平然と割れたグラスの破片を集め、寿司の出前を注文し、アパートを借りる相談にやってきた息子のヴァンサンと何事もなかったかのように話す。何度かフラッシュバックが描かれるあたり、彼女は決して動揺していないわけでもないらしい。ただ何らかの理由によって、彼女は自分自身に対しても動揺を抑え込む習慣が身についているのだろう。

ミシェルがカフェで食事をしていると、見知らぬ他人が彼女のテーブルに残飯をぶちまけ、“クズ“と罵って去って行く。何事かと思えば、理由があったのですね。それは、ミシェルの父親はナントで、27人の犠牲者を出した連続殺人犯として服役中だったからなのだ。彼は再審請求を繰り返し、その度に世間は、あの忌まわしい事件を思い出す。事件現場に立ち尽くす犯人の娘、ミシェルの姿が大きく報道され、事件の象徴となったわけ。
以来、彼女は屈辱に適応し、立派な“クズ”の一人となった。今や彼女はゲーム会社のCEOとして、怪物が触手で女性をレイプするようなアダルトゲームを作っている。社員の多くから憎まれながら。

70代の母親は、彼女の金で美容整形を繰り返し、若い愛人との結婚を夢見ている。それに、息子はニート同然で、性に奔放な若い女とくっついて、彼女の出産を機にやっと働き出した。しかし、生まれた子供は顔が黒い息子の子どもではない。それでも、父親として育てると言い切る。
ミシェル自身は、親友のアンナの夫との不倫関係をダラダラと惰性で続けているし、だが、彼女は反省などしない。彼女は自らの欲望を肯定し、思春期の少女のように相手を挑発するのだ。いかなる権威にも力にも屈せず、コントロールされないこと。

全篇に渡り、悪意に満ちたブラックジョーク満載。フランスを舞台にしてやりたい放題のイザベル・ユペールは60(1953年生まれ)代ですから、20年前ならいけるのにと思ったのだが、本人は美容整形でもしたのか、エロティック・サスペンスに挑んでも違和感がないほどエロっぽいんですから。アメリカの女優が尻込みをしたと言う、異常なまでのセックスシーンをユペールが体当たりの好演には、役者根性を見せて立派でした。
本作の底には、カトリック教会への痛烈な批判があり、この点について触れるために、現代社会における宗教の影響も盛り込んだ、ラストシーンで、「カトリック教会に対する皮肉や批判をこめて、いかにそういうことをしてきたかを、隠蔽してきたかということを。
カトリック教会が“変態”を生み出した。つまりはそういうことなのだと。映画の中盤、ミシェルがパーティの最中に、まるで世間話のように告白を始める。父親が敬虔なクリスチャンで、近所の子供たちの額に十字を切ってあげていたことを。一部の親たちからは抗議されて、父親はその仕打ちへの復讐として凶行に及んだことを。その後帰宅した父親が、家具を燃やし初め、焼け跡に灰まみれで立ち尽くす少女、ミシェルの写真が新聞に大きく載ったことも。

つまり、彼女を襲ったレイプ犯人は、向かいに住む銀行員のパトリックだった。妻は敬虔なカトリック信徒で、パーティ中でもローマ法王のミサ中継をTVで観たがるし、挙句にはミサに参加するために夫を置いてローマに旅立ってしまう。カトリックにおける離婚や避妊、中絶の禁止といった抑圧が、犯人パトリックの性癖(女性が嫌がらないと興奮しない)に影響を及ぼしていた可能性が大きいと思われる。
ですが、最大の問題は、ミシェルの欲望であります。本作が犯人捜しのミステリーだったのは中盤までで、パトリックが犯人と分かって以降も、彼女は彼と関係を続ける。覆面をしてレイプするという状況が必要とあれば、それすらもゲームとして受け入れるという貪欲さには恐れ入った。

だから、ミシェルがパトリックを憎むどころか、性的対象として受け入れるという、つまりは、犯人を捕まえて司法に委ねることもしたくない。自らの身体を利用してパトリックをコントロールすることを。毒をもって毒を制止、変態をもって変態を倒し、最後まで彼女の手の平の中にあったことを。ヒロインをはじめ彼女の母親、息子とその妻、会社の同僚、別れた夫、いずれもアブノーマルで好感の持てる人物は一人もいない。こんな人間関係の醸し出すサスペンスが何とも強烈で面白い。
しかし、このゲームも、息子ヴァンサンがパトリックを撲殺して終了してしまう。この結末すらミシェルの予想にあったとするのは、考え過ぎるかもです。
映画のラストでは、カトリックの禁忌の一つである、ミシェルとアンナの同性婚をほのめかして終わるのも良かった。
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