パピとママ映画のblog

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ソング・オブ・ザ・シー 海のうた ★★★

2016年10月13日 | アクション映画ーサ行
第87回アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネートをはじめ、数々の映画賞を賑わせたアイルランド発のファンタジー・アニメ。アイルランドの神話をベースに、幼い兄妹の大冒険を素朴にしてファンタジックな映像美で描き出す。監督はアイルランド出身で本作が長編2作目となるトム・ムーア。
あらすじ:海辺の灯台の家で父と幼い妹シアーシャと暮らす少年ベン。母親はシアーシャが生まれてすぐに姿を消してしまったことから、彼はいたずらっ子の妹に優しくすることができない。

やがて6歳の誕生日を迎えたシアーシャは、父が隠していたアザラシの妖精セルキーのコートを着て海で優雅に泳ぎ回る。それを兄妹の祖母に見られてしまい、2人は町へと連れて行かれてしまう。ところがセルキーだと気づかれたことで、シアーシャは魔女のフクロウに狙われ、連れ去られてしまう。ベンは妹を救うために過酷な冒険へと旅立つのだったが…。

<感想>アイルランド発のアニメーション作品。とても美しく息を呑むような映像美に、太古の息吹を思い起こすような躍動感と、愛に満ちたヒューマニズム。
アニメと言うよりも光のアートを観ているような感覚である。珠玉は兄が妹を探すために妖精の光る髪をたどって暗いトンネルの中を行くシーン。彼を取り巻く光の粒子はそのまま被写体を照らすライトとなり、観る者の視点を誘導するのだ。
暗闇に降る雨の描写もしかり、リアリズムとは違う幻想的な照明の使い方は美しく、それ自体が見どころとなっている。絵柄は平面的な線画で構成されているのですが、そのタッチで描かれた男女が口づける時に、2人の唇が1本の線になるのは、線描ならではの醍醐味。
実写や3Dでもない平べったいこのアニメーションに、何故にそこまでの力があるのか。ですが、人間の芯にある何かを震わせることは確かであります。心を揺さぶられる思いがしました。トム・ムーア監督の作品は初めてですが、ポスト・ジブリと称される、自身の制作会社「カートゥーン・サルーン」が、手掛けている。

物語は、アイルランドの神話や口承文学を基にしたファンタジーで、幼い兄妹の大冒険が描かれています。海ではアザラシ、陸では人間の女性の姿をとる妖精セルキーの母と、人間の父親との間に生まれた兄と妹。冒頭にて、小さな島の灯台守である大柄で静かな男と、白い服に長い髪の曲線的な女、モコモコした巨大な犬に、表情豊かな少年が登場する。既に不思議な空気を感じるのだ。

古い歌や巻貝の笛などに、その先の運命を変えていく予兆が見え、湿度は高い。案の定、少年の母親である白い女が早々に出奔する。消えたのか、死んだのか不明ですが、二人目の、少年の妹を出産した直後である。

ゆえに、一家にとっては長女の誕生日と妻の命日は同じ日となるわけ。しかも、その娘は6歳にになっても口が利けないのだ。子供のためのお伽噺としては、楽し気というより薄暗い感じがする。
しかし、だからこそ後に続く謎解きと、冒険の物語が宝石のごとく輝くのですね。妹を思う少年の活躍にすっかり引き込まれてしまいます。また、言葉を発さない少女の真の姿は神秘的で、初めて歌を歌うシーンには、深い感動さえ覚えます。
監督は「アニメはキャラクターがシンプルなので、自分自身を投影できるアバターになる。はっきりとした誰かではなく人間性の一面として表現している」と語るのだ。人物の造形がどこか日本の昔の漫画ふうなのも親しみがわきます。全体に落ち着いたトーンで、派手に盛り上げようとすることもなく、淡々と進んでゆく。アイルランド民話と伝説が基になっているのですが、家族の物語は妙なリアリティがあって、ファンタジーとのバランスがちょっと独特なのも良かった。
なるほど、この美しい物語も観る人ごとに、ツボにハマルポイントが変わるのだろう。テンションの高いエンターテインメント性で圧倒するアメリカのアニメ作品とは、目指す場所が違うのですね。

語り部によって伝えられる神話であり、受け取る側の想像に委ねられ、後世へと語り継がれてゆく。そんな包容力のある物語だと思います。何故か子供よりも、大人の琴線にも触れておりホロリとさせてくれます。
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