パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

博士と彼女のセオリー ★★★★

2015年03月16日 | は行の映画
車椅子の物理学者スティーヴン・ホーキング博士の半生を描いた人間ドラマ。将来を嘱望されながらも若くして難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症した彼が、妻ジェーンの献身的な支えを得て、一緒に数々の困難に立ち向かっていくさまをつづる。監督は、第81回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作『マン・オン・ワイヤー』などのジェームズ・マーシュ。ホーキング役に『レ・ミゼラブル』などのエディ・レッドメイン、妻ジェーンを『あなたとのキスまでの距離』などのフェリシティ・ジョーンズが演じる。

<感想>まずは、天才物理学者であるスティーヴン・ホーキング氏を演じたエディ・レッドメインが、第87回アカデミー賞主演男優賞に輝いたことにおめでとうといいたい。実話なんですねこれは、本作を観るまでは、彼の私生活や心の在り方には、殆どイメージがわかなかった。

1963年にケンブリッジ大学で出会ったスティーヴンとジェーン。キュートな理系男子と聡明な女子学生は、一目惚れにも近いテンションで恋愛に突入する。その勢いは、彼の研究にもひらめきをもたらすのである。だがそんな絶頂期にまさかの病気、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し、余命は2年と宣告される。

そこからが凄いのだ。鬱状態のスティーヴンに対し「皆で力を合わせて病気と闘おう」と、全く怯まず強気なジェーン。そんな彼とためらいもなく結婚し、伴侶、介護者として、そして3人の子供を育てて、人生を進めていく。26年間を共にした。
その後、円満に離婚して、ジェーンはホーキングの介護に協力しながら実質的な第二の夫となっていたジョナサンと再婚して、ホーキング博士は、エレインというベテラン介護師が世話をすることになるという。気付けば既に、余命宣告の時など越えてしまっていたのだ。
病気の進行と闘いながら、ブラックホールの特異点定理やホーキング放射など、世界にその名をしらしめる偉業を成し遂げ、現在72歳ながらも、彼が研究に身を捧げていることをこの映画で知るのが事実だろう。

恋愛と介護は両立しない。恋愛という物語が、恋とも友情ともつかない人と人との結び合い、もたれ合い、思いやりの日々が、特別大きな波乱や愁嘆場もなく進行していく。その間のスティーヴンは杖から車いすへ、電動車椅子へ、そして肺炎を併発して発生装置を装備した最新の車椅子へと乗り換えていく。

障害と闘う人の姿をコメディアンに例えるのは失礼かもしれませんが、杖をついて歩く姿がどこかチャップリンのようにも見えた。何となくそう見えたのだが、銅像に抱かれている姿が「街の灯」そのままだし、声を失ったスティーヴンが機械の声を得て、ラストのスピーチはサイレント期の声のないコメディアンだった「独裁者」の演説の映画記録を呼び起こしたからである。
そして、車いすにとって大敵なのは階段なのに、いやだからこそというべきか、この映画は階段にとことんこだわるのだ。

若きホーキング博士が、2階から背中でずり落ちてくる階段。幼い息子が階段の遊び場で見下ろしているシーン。父親が、車いすを無理に引きずり上げる庭の階段では、昔は身障者に対しての住宅事情もなく介護する人たちの苦労が忍ばれる。
ホーキング博士のメガネをジェーンがスカートで拭くのが、妙に女っぽくて、何だったか思い出せなくて、そういえば後からのエレイン介護師も、彼のメガネをスカートの裾で拭いていたっけ。

ラストのスピーチ会場での、前列の女性が落とした真っ赤な1本のペン。「2001年宇宙の旅」では、1本のペンを浮かせるだけで無重力を表現したが、この映画では1本の赤いペンの落下で、ホーキング博士の全人生を表現しているかのように見えた。あのとてつもない時間論を立ち上げた男は、1本のペンを拾ってあげられない男だったのだ。

スティーヴンとジェーンの長いラブストーリーは、気高くも美しいと同時に、一般の恋愛同様に、いやそれ以上に果てしなく困難な道であったことも描かれています。博士にそっくりだといわれたという、エディ・レッドメインの繊細な演技が光る作品です。難しい肉体表現だけではなく、博士の熱意も楽観的思考も、気取りのないチャーミングさも、あますところなく見せてくれているので、受賞は間違いなかったでしょう。
2015年劇場鑑賞作品・・・53 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング



この記事についてブログを書く
« イントゥ・ザ・ウッズ ★★★ | トップ | 風に立つライオン ★★★★ »

は行の映画」カテゴリの最新記事