パパと呼ばないで

再婚した時、パパと呼ばないでくれと懇願した夫(おとうさんと呼んでくれ)大学生になった娘「おやじ」と呼ぶ。良かったのか?

街結君と太郎君30

2016年10月15日 | 野望
12月に入ってすぐにオレたちは推薦入学による合格通知を受け取った。
一日くらいは、勉強から離れて息抜きしても罰は当たらないよな。
でも、まだ受験一色のクラスメート達に遠慮してオレたちはひっそりと合格祝いをすることにして、オレんちに向かうことにする。
もちろん祝賀会会場は回転寿司。
電車に揺られながら太郎が言う。
「オレの乗り物酔いって、もしかしたらかあちゃんとの関係があったのかもしれないなあ。
電車や車にひとりで乗るってことはかあちゃんから離れるってことで、その不安からあんなに激しく酔って気持ち悪くなってたんじゃないかって思うんだ。
子どもだったんだなあ。
まちゆいが、オレを九州に連れて行ってくれたからオレは少し大人になれたんだな。
あ!大人っていえばさ!あれからしつこくかあちゃんに聞いたんだよ、マスターと章子ママのこと。
そしたらさあ!驚くなよまちゆい、章子ママ、ナベさんのことが好きらしいんだ。
で、マスターがキューピットになって、何だか今、いい感じらしいんだよ。」
えーーーーっ!と驚きながらも、そう言われれば、スマートで勉強してる章子さん、良くナベさんに大学の相談とかしてたし、ナベさんのおかげで苦手な物理が好きになったとかも言ってた。
案外、章子さんが陰のキューピットなのかも。
章子ママの恋の話で盛り上がったり、春休みにはばあちゃんに合格の報告に行こうか、いや、いっそ入学式にばあちゃん、来てくれないかなあとか、そんな話をしていると、電車が地下から地上に出て鉄橋を渡り始める。
太郎が「オレ、この地下鉄が地上にでてきて、すぐ川を渡るここ、好きだなあ。
やっぱ地下鉄って閉塞的だろ。
視界が開けて、川が見えて、遠くにあの観覧車が見えて。
いいよなあ~ここ。
あ、普通に車とか人とかの橋も平行してるんだな。
歩いて渡ってみたいなああの橋。帰りはあの橋歩いて渡って東岩町から電車乗ろうかなあ。」
「あの橋はさあ、聖岩橋っていうんだ。聖新町と東岩町をつなぐ橋で・・・」と言いながらオレはあっと息を飲んだ。
九州のばあちゃんちの近くにある馬千橋。馬込町と千草町を結ぶ馬千橋。
まごめ町とちぐさ町でまちばし。
バブルで浮かれてる頃、まちおこしで呼ばれたおやじが提案したという馬千橋の建設。
小さな川だけど、この川のせいで分断されていた馬込町と千草町が、この橋のおかげで距離が縮まり、いまや共同主催で新しいお祭りまでできたくらいだ。
寂れかけてたそれぞれの街の商店街も、この橋で繋げる形にして長いメインストリートになっている。
まちゆいのまちは、東京と田舎を結ぶんじゃなくて、馬千橋のまち。足元固めろという意味のまちなんだ。
急に黙り込んだオレの顔を太郎が不思議そうに見てる。
オレは夕陽でオレンジ色に染まってる太郎の顔を見ながら、いつの間にか自分の名前が嫌いじゃなくなっている自分に気付いた。

春。桜が満開の今日。
中大のキャンパスへ向かう階段で記念写真を撮る。
もちろんカメラマンは亜美ちゃんだ。
スーツが似合い過ぎて・・・大学の先生みたいだ・・・とみんなが心の声でとどめていたのに、ストレートな太郎が「亜美ちゃん、かっこいいなあ。篠山紀信みたいだぜ。」
みんながぶーーーっと吹き出したところを亜美ちゃんが「もらったぁ!」とシャッターを押した。

             
ジャンル:
小説
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