忠実なる裏切り者(イスカリオテ)
ドリフターズのSSです。
「もしもイスカリオテ第十三課のアンデルセン神父がドリフターズの世界に飛ばされたら?」
そんなイフを題材とした短編で、ヒラコーファンなら一度は考えたであろうクロスオーバーです。
もう既に予想はされているだろう「黒王」の中の人と狂信者が出会った時。
イスカリオテは・・・迷わず銃剣を信仰の対象に銃剣を向けた。
「……『漂流者(ドリフ)』だったか……まあ良い……確かに裏切り者の名に相応しい男だな」
「黙れ、糞蝿(ベルゼバブ)の羽音のように耳障りな音を出してんじゃねえ、裏切り者を超える卑屈野郎!」
猫背気味に銃剣を構え、
アンデルセンの口から瘴気でも漏れているのではという笑みを浮かべている。
黒王は法衣の奥でどのような顔をしているかわからぬが、
指を前に出すと、魔法陣が目の前に現れて、そこから、大量のオークが飛び出してきた!
「死を!ユダよ……イスカリオテのユダよ。二度目の裏切りは許さんぞ」
唇の片方をゆがめて笑い、アンデルセンはぎらついている。
「舐めるな、裏切り者より劣る異教徒め!
貴様はもはや カトリックの主ではない!カトリックを裏切った、異教徒より醜い邪教徒だ!」
迫り来るオークを相手に、銃剣を再び十字に構え、アンデルセンは吠えた。
「我が名はイスカリオテ!イスカリオテ第十三課のアレクサンド・アンデルセン‼︎」
野獣の如き咆哮の後、
銃剣を十字に切りながら抜刀すると、
迫ってきた五体のオークたちが、
胴体や首を瞬時に切断され、切断された肉体が回転しながら血飛沫を吐き散らしていく!
「……帰るぞ、ラスプーチン」
黒王はそう言って魔法陣を潜ろうとすると、ラスプーチンが放っておいて良いのかと聞くが、
「裏切り者は……それに相応しい死を与える……神罰ですら生温いのでな……」
そう言うと、狼狽していたラスプーチンが、落ち着きを取り戻し、左手で顔の上半分を隠し、
「恐ろしい……黒王さま」
「行くぞ」
「おうせのままに」
二人が消えていく中、アンデルセンは戦い続けた。
神罰行う銃剣(バヨネット)を振りかざし、
ドス黒い鮮血の濃霧を作り上げ、生臭い肉塊を飛び散らし、
その恐ろしい濃霧の中で、異様な眼光と、哄笑する白い歯だけがその中で輝いていた。
「来いっ!化物‼︎カトリックの信徒を貴様共に殺させはしない!」
雄叫びをあげて戦う神父の背中で、
イス・リオーテの町の人々は、涙を流して、ひざまつき、カトリックの神に……いや、アンデルセンに祈りを捧げた。
自分たちを守ってくれる神がいたと。
慈悲と許しを求めれば応え、我らを導く神の使徒が、
迫り来る悪鬼相手に、それ以上の悪鬼となりて、魔人……いや、魔神のように嘲笑い、
刃こぼれも折れもしない銃剣が、次々とオーク達を倒していった……
神に忠実なる裏切り者の姿が、そこにあった。