出発した日は、彼のフラットがあるブリストルに行き一泊する予定だ。彼はこの町で弁護士を目指し勉強している。 ロンドンを出ると、すぐに名物ひつじさんたちの登場である。いつまでも、いつまでも同じ景色に半分癒されながら、睡魔に襲われながらドライブは続く。ランチをとる為にイングランド西部、サマセットにあるバースという町に立ち寄る。バースはお風呂(bath)の語源になった町で有名なイングランド有数の観光地である。時間がなく、ローマ様式の大浴場を観光することは出来なかったが、日本でいうファミレスをカントリー調にしたようなレストランで美味しく食事をいただき、またドライブしてブリストルを目指した。A君のフラットに着いたのは夕刻。学校の友達とシェアしているフラットには何人か友達がいたので、一緒に紅茶を飲みながらリビングで少し話をした。1対1で話すのには慣れてきた私であったが、何人かのネイティブの中で話すのはまだまだ苦手で緊張する私である(もっと勉強せねば・・・)A君の部屋はかなりせまく、勉強机と布団二枚でもういっぱいである。あいにく今日はフラットメイトが外泊しない為、この部屋に三人で川の字で寝ることになるという。なんだかお邪魔なようで、複雑な心境の私であった。
新しく家に来た日本人2人も九州出身で、明るく、年も同じだった。お金がないので2人で私の隣の部屋に住むという。かなり狭くなるが、二人ともミュージックライターを目指していてお金は音楽に全てつぎ込んでいるという。日本人で心強い反面、家で日本語を話してしまうのはちょっと気になった。
帰国に旅行と一ヶ月近く学校を休んでいた私。久しぶりにクラスに入ると、1/3くらいの人間が変わっていた。その日の授業が終わると、他のクラスの日本人の友達がフランス人留学生C君を紹介してきた。友達はフランス通だったためC君とすぐに仲良くなったようだ。その友達はその日用事があり、ロンドンに来たばかりの彼を気遣い私に一緒に過ごして欲しいという。←優しい男である。暇な私は快くOK!私よりかなり年下の彼だったが感じがよく、日本に凄く興味があるようですぐに打ち解けた。英語はもちろんフランス英語、彼はよく無意識に会話の中にフランス語がまじる。私がきょとんとしていると「ごめん、ごめん」と何度も言っていた。サンドイッチを買って公園へ行き、まだ温かい日差しの中ランチをとった。ロンドンの中心を案内しながら歩いていると、ゲイストリートでは耳元で誘われたりして、顔を赤らめ戸惑うC君であった。私はというとロンドンに来て初めてスリにあった。というか未遂だったが・・・私たちは小さな店が連なるSOHOエリアでお店めぐりをしていた。私たちを付回している子供2人組の存在を2つ前の店くらいから知っていた。店を出ると彼らも追って出てくるという状況。私は彼らがリュックに手をかけた時、「今だ!」と思い突然振り返り罵声を浴びせるとスリ犯は慌てて逃げていった。と同時にC君もビックリである。彼は全く気づいていなかった。私はリュックを背負っていたし、身長が低いので狙われたのだろう。ロンドンの町には難民も多く、家族でのスリも多い。初日にしていろんな経験をしたC君は満足そうに帰っていった。私も久しぶりの学校で新しい友達も出来、ウキウキモードで騒がしくなった我が家へ帰っていった。
ベルギーから戻ると、翌日、友達は日本へ帰国せねばならなかった。最後の日は、日本人だらけのFORTNUM&MAISONでしこたまお土産を買ってたっけ・・・ここはいつもウインドウディスプレイが素敵で、ついつい通る度に足を止めて眺めてしまうが、中には入ったことがなかった。貧乏留学生にはスーパーの紅茶で十分だったので・・・
東京OLさんのバタバタ旅行だったけど彼女は「いいリフレッシュが出来た!」と帰っていった。
その後は母とロンドン観光の続きをした。王室好きな彼女の為、「バッキンガム宮殿」や、ダイアナ妃が住んでいた「ケンジントン宮殿」などを回った。バッキンガム宮殿は夏季のみ一般公開しているが、入場料が高くて有名である。しかし母はそんな事は気にせずお城の中に入れる事を相当喜んでいた。
私は地下鉄があまり好きでない為、母にもバスで移動してもらった。揺れるバスの中、2階まで上がるのはちょっと母には大変そうだったが、町並が良く見えるので楽しんでいた。そして都会の中にたくさんの緑があるロンドンの町を母は大変気に入った様子だ。
いよいよ母が帰る日が来た。帰りの飛行機は一人なのをずっと不安に思っていた母だったが、日本でビジネスクラスしか取れなかった為、搭乗口でチケットを見せるとVIPな入り口からさっさと行ってしまった。後で聞いたが、係りの人が機内まで案内してくれたそうで大変快適な空の旅だったそうだ。私はというと、日本に帰国してからずっと誰かと一緒にいた為、母を見送ると一人置いていかれたようで泣きそうになった。初めてこの空港に来た時みたいに一人ぼっちで不安で落ち込んだ。しかし、家に着くなりなんだかバタバタ騒がしい様子。「そうだった!」私が日本へ行ってる間に大家は日本人のルームメイトを二人も居れていたから・・・なんだか騒がしくなりそうな予感である。
最後の日は、世界三大ガッカリのひとつ、小便小僧!に行ってみたが、やはりがっかりだった。しかしバケツ一杯のムール貝(←美味しかった〜)を食べたり、王宮と国会議事堂が隣接するブッリュセル公園は美しく、私たち三人は好きなだけ腰を下ろしのんびりと過ごした。
行く前はちょっと心配だった、母親と友達と一緒に行くちょっと普通ではないこの旅は、予想以上にいい旅になった。普通なら勝手が違う外国という所は、イライラさせてくれる事や理不尽な事がよくある。しかし、食事も美味しく、人もやさしく、見る物も素敵な気持ちにさせくれる物で溢れていた。たぶん旅の中で無理な計画を立てたりせず、時間をかける所、かけない所、見たい物、どうでもいい物等、三人の意見が合ったのも大きい。
のんびりな旅もやはり帰りのユーロスターではぐっすり眠ってドーバーを横断した。
駅の周りは工事中だらけでお世辞にも綺麗な町とは言い難かった。さて、ホテルまで行くにはタクシーを捕まえなければならない。普通は駅にタクシー乗り場があるものだが見つけられず少し大通りまで歩き、流しのタクシーをようやく停めてホテルへ直行した。学生専門の旅行会社で予約したそれは、親切で内装は新しく清潔であった為ひとまず安心した。2泊3日の旅という事もあり、私たちは荷物を置くとすぐに町へ探索に出掛ける。歩くとすぐにアーケードみたいな通りがあり、露天でワッフルを買って食べながら(美味!)10分ほど歩いていくと「GLAND PALACE」はあった。夕刻から夜に変わる、空の色が一番綺麗な時に私たちはそこにいた。綺麗な空をバックに光輝くその広場に少しでも長く居たいとバーに入る。アール・ヌーヴォー様式の格調高い内装で落ち着く雰囲気だ。そこから見る広場も素敵でワインを飲む三人はこの場に居る幸せに浸っていた。
母の滞在は、東京の友達が遊びに来るのと重なってしまった。しかも友達は間違って私がイギリスに入るより一日早く航空チケットを取っていた為、私が教えた住所を頼りに一人で私の家に行き、私の部屋で一泊していた。イギリスは二度目の彼女だが、いつもその行動は大胆だ!そんな彼女もうちの大家を見て驚いた事は言うまでもない。
私の部屋に三人で寝るのは無理なので便の良い学校の近くのB&Bを帰国前に予約していた。ロンドンのホテルは高い。まぁなんでも高いのだが、こんなに払うのに風呂なしですか?と言いたくなる。しかし地下の食堂は天窓から朝陽が差し込む素敵な所♪朝食は種類も豊富で美味しく、三人共満足した。思わずゆっくりしてしまいたくなったが電車の時間があるのでそうも出来ない。「三人でイギリスを出てどこか行こう!」という事でベルギー旅行に行くことになっているのだ。「なぜベルギーに?」とイギリス在住の友達には聞かれたが、三人共行った事がなく、イギリスからそう遠くなくてご飯がおいしい所。となるとベルギーになった。おっと、小便小僧も忘れてはならない!そんな感じで仲良く三人でユーロスターに乗ってベルギーへ出発である。大陸へ渡るにはバス、船、ユーロスターと選べるが、滞在期間が短い彼女らの為、ユーロスターを選ぶ。最初は母も窓から見える羊さんに感動していたが、あまりにもその景色が変わらない為に眠気が出てきたようだ。しかしさすがユーロスター!あっという間に首都ブリュッセルに到着である。
サプライズ好きな私は帰国の日を一日遅く母に告げていた。玄関で「ただいま〜」と言うとびっくりした様子で走ってきた母にハグされた。母の挨拶が欧米化!している事にこちらが驚かされる!2週間ほど田舎でのんびりした私。おいしいご飯を毎日食べてちょっと丸くなった頃その日は来た。イギリスへ戻る日である。久々に会う友達にも癒されイギリスに戻るのが億劫になっていた私。しかし戻りは母を連れていくことになっていた。仕事をしている母は9月に遅い夏休みを1週間もらい憧れのイギリス旅行である。心配していた入国審査だが、帰国前にちゃんと学校からレターをもらっていたし、残高証明もある。ないのは帰りのチケットであるがなんなくきりぬけた。「ホッ・・・」女の子には甘いのか。後で帰りのチケットを用意しないで望んだ事を友達に話すと、「そんな事もあるのか・・・」と少々驚かれた。
半年で帰る予定の留学を一年に延ばす事にした。預金残高はあと20万くらい、お金は相変わらずない。しかし、少し家賃を滞納しても追い出されない家もある。友達も出来た。日本に待ち人←いないわけでもない・・・が、しかし、半年近くなってくると、「自分の英語ってまだこんなもの?」という現実を突きつけられる。「このままでは帰りたくない!よし、一度日本に帰ってからアルバイトをしよう!」と決心した。チケットはオープンを買っていたので日本行きはある。問題はロンドンへ戻る時だ。また入国の際に留学ビザの延長をしなければならないのでオープンチケットを再度購入しなければならない。しかしお金がない私は、航空会社のマイルが片道分はあったのでそれを使い、賭けに出ることにした。










