こないだの一件で、カフェのアルバイトは私も含め3人になってしまった。トライアルの時に一緒だった優しくて働き者のスペイン人の女の子。週末しか働けないデンマーク人で大柄な女の子。もちろんこれだけでは足りないので昼間はオーナーたちカップル二人で頑張っていた。5時にカフェに入ると疲れた二人とバトンタッチ。厨房には人がいるがフロアは一人で働く日がほとんどだった。お酒、パン、コーヒー豆なんかの補充をしながら接客。英語はまだまだで一度では聞き取れないこともしばしば。お客さん&厨房にも迷惑をかけながら頑張る。接客以外で難しいのはエスプレッソマシーンを使うこと!微妙なミルクの温度変化を覚えて美味しい泡を作るのは思ったより難しい。カプチーノがラテになることしばしば。
のんべえのイギリス人。夕方からちょっと一杯!というお客さんも多く振り回されることもある。ワインやビールならば言われたものを出すだけで簡単だが、カクテル、スコッチを出すのは難しい。一人で店にいる時に限って、「ブラディマリー!」なんて注文が入る。「なんじゃそっれ?」と私がきょとんとしていると、お客さんが作り方を教えてくれる始末。「寛大なお客様ありがとう!」パブだと夕方多くてスタンディングになってしまうから、この時間静かなカフェで、まったりとお酒を飲みたい人がたまに入ってくるようだ。
そんな日が続き、私は日に日にいろんなことを覚え、最初は恐怖だった店で一人状態も数週間後には慣れていった。オーナーも、「一人で出来るのならばチップも一人で貰えるし、頑張って!」という感じ。確かに、忙しい週末の5時から一人で入り、忙しくなるとオーナー達が手伝ってくれるとなんとか店は回る。超がつくほど忙しく走り回っても、一日のチップだけで、半月分の家賃が払えるほど貰える日などあると、また頑張ろうと思う日々であった。
カフェの仕事は午前9時〜午後5時までと、午後5時〜閉店まで(だいたい11時くらい)の2シフト。私は午後1時まで学校があるので、5時からのトライアルを受けることになる。少し家でお昼寝をしてメニュー表のチェックをし、5時前に着くようにバスに乗る。歩いても20分くらいだがバスパスがあるのでバスで移動だ。カフェに入ると先日会った日本人女性のパートナーだという男性が現れた。彼はジョンという。実は二人でこのお店を経営しているらしい。彼は彼女よりだいぶ年は上のように思える。お店をやる前に二人で日本に1年くらい戻っていたこともあり、親日家でとてもやさしそうな人だ。お店を始めて1年ちょっとだが、日本人が働いた事はいままでなかったと話してくれた。厨房にはルーマニア人の男性二人が働いている。出稼ぎらしいが国ではレストランを経営しているそうだ。オナーのあけみさんが考えたメニューを彼が作っていた。
金曜の夜だけどアルバイトは私の他にスペイン人の女の子だけ。お店は午前10時から空いたままだから、何組かお茶のお客が残っていた。そんな中、夜に向けてのドリンク、パン類の補充、トイレの点検等、いくつかの仕事を教えてもらう。カフェといえどきちんと3コースランチ、3コースディナーを出す所でそのメニューは日替わりだ。大きな黒板にチョークでコースの内容を書くのも私たちの仕事だった。「金曜の夜だけど二人で大丈夫だろうか?」と思っていたら、やはり7時くらいからどんどん客が入ってきた。私に教えながらの仕事で彼女は大変なのに、にこにこと笑顔で仕事をこなす。私は注文もろくに聞き取れずパニックになること数回、しかし彼女は優しくフォローにまわってくれる。いよいよ二人ではとても・・・という状態になると二階にいたオーナーを彼女は呼んだ。(オーナーカップルは二階に住んでいる。)忙しくなると二人を呼ぶようになっているらしい。プロ3人と新人の私でお店はなんとか回った。たくさんミスもしたがスペイン人の彼女が、「わたしはすぐに慣れるだろう!」とオーナーに言ってくれた為採用となる。「彼女の助けがなかったらきっと無理だったろうな・・・。」なんとか合格したものの、次回からの不安がつきまとうトライアルの夜だった。
カフェに入ると綺麗なフランス人の女の子が出てきた。「アルバイトをしたいのだけれど・・・」とだけ言うと、彼女は「AKEMI〜」と厨房の方へ向かって歩いていった。(え?、今聞いたのは日本人の名前?)すると奥から小柄な30代半ばくらいの日本女性が、エプロンで手を拭き拭き現れた。思わず、「日本の方ですか?」と聞くとやはり日本人。彼女が面接をするようだ。二人でテーブルに座ると、飲食店でのアルバイトの経験、英語力、エスプレッソマシーンは使ったことがあるか、等と質問された。「とりあえずトライアルを受けてみないか?」と言われ金曜の夜に受けることにする。私はメニューの勉強をしておこうとそれを借りて、一つ疑問に思っている事を聞いてみた。「あの・・・オーナーは?」 すると彼女は、「私がオーナーです!」ときっぱり言った。彼女はシェフをしながらこのカフェを経営しているそうだ。お客はイギリス人しかいない現地のカフェを彼女が経営している。これはすごい事だし、私にとってはラッキーなのか?しかしその時の彼女は笑顔一つ見せず、疲れた印象だった。
旅行から帰ると早速現実に直面する。日本で作っておいたシティバンクの口座にはあと何週間か家賃を払える分のお金しかない。HP制作の仕事はのんびり進んでいるし、お金はまだまだ入りそうにないし、親にも頼りたくない!「アルバイトを探さなくては!」私は英語の上達も兼ねて現地人と話せるように、地元のカフェでアルバイトをしようと決心した。エスプレッソマシーンを使ってみたいという単純な動機もある。
まず家の近所、ANGEL駅周辺を探す。小さいがクッキーやマフィンと一緒にお茶を出すお店を発見。求人募集の張り紙はないが中へ入ってみる。オーナーを呼んでもらうと出てきたのは大柄な男の人だった。「今は募集してないけど空きが出たら連絡するよ!」見かけによらず親切そうな人だ。私は家の電話番号を紙に書き店を出た。まずまずの出だしだ!
もう1件、バスストップの目の前に張り紙を見つけた私は中を少し除き、エスプレッソマシーンを見つけると中へ入ることにした。
とうとうK子が帰る日が来た。私たちは早朝に起きてA君パパ、ママに別れを告げると急いでオックスフォードへと向かった!A君の提案で、「空港へ送る前にどこか観光しよう!」という事になり、比較的空港に近いこの大学の町に決まったのだ。4泊6日のハードスケジュールは最後までハードだ。彼のお陰でK子は普通の旅行者では移動できない距離、出来ない経験をしているようだ。
さてオックスフォードへ着いた。私にとっても初めての町だ。すれ違う人みんな頭がよく見えてしまうのは気のせいか?しかもイケメンさんが多い!建物は大学の他に教会も多く、運河には古い橋がかかり、花が咲き、絵本に出てきそうな風景にも出会える。「イギリスの田舎は素敵だ!」
この日は朝から天気が不安定(イギリスでは日常)、突然のスコールにショップで雨宿りをしたりした。町の中心には、店もパブもたくさんあって、観光客を含めたくさんの人で賑わう。私たちはこの日、初めてのパブランチをすることにした。A君とK子はマッシュポテトに大きなソーセージの一皿。私はサンドイッチだ。後で聞いた話だが二人はこのランチで食あたりになったらしい。
K子の便は夕方。空港での別れは悲しいが今日はA君も一緒の為、少しは気が紛れる。三人でハグした後、K子は元気に帰っていった。見送った後は二人ともどっと疲れが出たのか、無口だ。A君とは空港で別れる事になる。彼はまたこれから三時間ほど家までドライブしなくてはならない。私は地下鉄でウトウトしながら久しぶりのロンドンへ戻った。
お昼過ぎにはA君の家の広いお庭でアフタヌーンティーと洒落込む。紅茶とクッキーを外のテーブルに運び、青々とした芝生が広がる庭を眺め、澄み切った空の下、毎日こうした時間が欲しいと思った。「ロンドンの家にも庭があるといいのに・・・」しかし、今の家賃しか払えない私には無理な話である。ロンドンではインドアでのアフタヌーンティーを楽しむ事にしよう!
玄関を入ると、A君のパパとママが出迎えてくれた。K子はまず、日本から持ってきた菓子折を渡すと、初めて会う元彼両親に緊張気味にご挨拶。私はほんの4ヶ月ぶりだ。私が挨拶をすると、「英語が上達したわね〜!」とママから嬉しい言葉をかけてもらった。親しげな私たちに少し嫉妬するかわいいK子。さて今日もみんなで夕食だ。やはりここのママのご飯は最高だ。イギリス料理がまずいなんてここでは言わせない!
さて寝室だが、ここではもう川の字で寝る必要はない。特にシーズンでもないのでB&Bのお客さんはおらず、たくさんの部屋の中からそれぞれ好きな所をチョイスして寝ることにした。久しぶりにゆっくり眠れると思うと、今日も「グースか・・・」いつのまにやら眠りについていた。
家に一旦戻り、荷物をまとめると、ブランチを取りにショッピングモールに立ち寄る。地方のモールはイギリスに来て始めてで、女の子としてお買い物もしたい気もしたが、ここは我慢。夕方にはA君の両親が待つデボンへ着くスケジュールだ。A君と友達のK子は、彼女がまだイギリスに来て「フィッシュアンドチップス」を食べていないということでそれを食べ、私は軽くサンドイッチにした。モールのフードコートだったけどどちらも味は美味しかった。
また羊さんと睡魔と格闘しながら、車はデボンへと向かう。イギリスのスーパーも経験したいと、途中立ち寄り、K子は日本へのお土産の紅茶をたくさん買っていた。もう日暮れが早い10月、辺りは暗い中、私たちは、デボンのあのピンクのお屋敷に着いた。










