日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

ドコモ副社長発言のiPhone投入「今でしょ!」感

2013-08-28 | ビジネス
NTTドコモの坪内副社長が、SankeiBizのインタビューに答えiPhone取り扱いに関して、「態勢は整った。いつ出すかが問題」と発言し話題になっています。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/130826/bsj1308261001007-n1.htm

「もうそんな話どうでもいい」と一部読者からは辛らつなコメントをいただきそうな気もしますが、ドコモのiPhone取り扱いは引き続きその動向によって業界シェアに大きな影響を及ぼす可能性のある問題であり、拙ブログとしてはこれまでこの問題を追い続けてきた立場上からも再度触れずにはおけないところであります。今回の注目は坪内社長の、今までのドコモとは明らかにトーンが異なる「態勢は整った。いつ出すかが問題」発言の真意です。

◆「態勢は整った」について
拙ブログでも何度となくiPhone取り扱いの問題点を取り上げてきましたが、やはり表向きの「態勢」とは、携帯メーカーを減らしiPhone取り扱いに向けiPhoneに向けたシェアの整理をしておきたいという点がその最大のものであったと思います。2~3年前のiPhone一人勝ち的な風潮における国内弱い者連合の状況下でドコモがiPhone取り扱いをスタートするなら、国内メーカー総倒れにもなりかねない状況にあったわけで、できれば2~3社にやんわり引導を渡したい。その意味においてドコモが初めて打ち出した「ツートップ戦略」は、メーカー淘汰の呼び水になりました。

もちろんこの戦略が可能になった背景には、アベノミクス効果による急激な円安傾向が大手家電、IT各社の救世主になったという業績の好転があります。ここぞドコモにとってメーカー淘汰をするには千載一遇のチャンスとばかりに、「ツートップ戦略」というこれまでのメーカー各社との蜜月関係に一方的にな終止符を打つ、ある意味非常にエゲツない戦略を打ち出したわけです。結果、NECのスマホ撤退、パナソニックの新機種凍結といった形で思惑通りの展開になったのです。

もうひとつの「態勢」は、アップルが要求しているドコモにおけるiPhoneの販売ノルマの件です。そのシェアは5割というのがもっぱらですが、ドコモ側が公言してきた可能シェアは2~3割。しかしツートップ戦略によりツートップの販売比率が全体の6割を超えるという予想以上の淘汰伸展がドコモに譲歩の余地を生んだと見ます。またiPhoneに一時期の勢いがなくなったアップルにも多少の譲歩はあっても不思議ではなく、ドコモのアッパーライン3割とアップルのロウワーライン5割の間の数字に両社が歩み寄ることで、アップル側の要求に応える「態勢」が整ったと見るのが自然ではないでしょうか。

さらに冬の戦略として予定されている「スリートップ戦略」からは、サムスンのギャラクシーが外れる予定とか。そもそもiPhoneを持たないドコモが、その対抗商品として世界シェア№1のギャラクシーをツートップに据えたわけで、本丸iPhoneが手に入るならギャラクシーはお役御免。さらに、海外製品シェアの「態勢」から考えても、iPhone導入後もギャラクシーをトップラインアップに据え続けることはむしろデメリットであるわけです。ここにきてのいきなりの“ギャラクシー外し”は、iPhone導入の「態勢」をにらんだ複線とみるのが妥当であるように思います。

◆「いつ出すかが問題」について
さて上記のような「態勢」が整ったとすれば、「いつ出すかが問題」という発言は額面どおりに「すぐには難しい」と受け取っていいのでしょうか。「態勢」が整っているのならすぐにでもやりたいのがドコモの本心のハズです。

ドコモが取り扱い開始時機を考える場合の「問題」は、①他メーカーへの配慮、②今後のスケジュール、③他通信キャリアへのけん制、でしょう。①および②に関しては、過去のアップルの新製品投入時期をみると6月か9~10月です。6月はボーナス商戦真っただ中、9~10月はボーナス商戦まで若干余裕のある時期であり、既存メーカーへの配慮をするなら9~10月秋の投入がベターのハズです。今回を見送りもし次の「iPhone6」発表が6月ならボーナス商戦ど真ん中であり、もし9~10月なら1年先になってしまいます。こう考えると、「いつ出すかが問題」の発言真意は、「問題はあるけど、今やりたい」ではないかと思えてきます。

さらに③。ドコモのiPhone取り扱いが与える利用者へのインパクトはさておき、iPhone販売で先行するソフトバンク、auにとっては由々しき事態であることは間違いありません。ドコモとすれば、相手に迎撃に向けた準備期間を与えることなくできれば寝首をかきたいわけで、「いつやるの?」に対するこのところの死んだふりから一転いきなりこの9月に「今でしょ!」と立ち上げるのが戦略的にもベターであるように思えるのです。

このように、坪内副社長の「態勢は整った。いつ出すかが問題」発言を読み解いてみると、今回のiPhone5S発表時に合わせたドコモのiPhone取り扱いがかなり濃厚なのではないかと思えるわけです。この問題を毎度追いかけている日経新聞が「今回は見送られる公算」と報道している点も、「買うと来ない、買わないと来る」下手な競馬予想のようでまたまたハズしてくれるのではないかと。果たして「いつ売るの?」「今でしょ!」となるのか否か、9月10日新型iPhoneの発表を待ちましょう。

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1 コメント

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ドコモの自尊心を無くした迷走 (diahills)
2013-09-04 18:02:13
 ドコモ副社長が、これまで国内メーカーを応援してきたという発言から、ツートップ戦略の目的は筆者が指摘されるiphone発売の下地均しで正しいような気がする。
こうしたドコモの動きが、果たして本当に正解なのかという疑問を感じる。その第一理由は、今後もアップルが最高機種を市場に供給し続けることが出来るかという疑問。特に、スティーブ・ジョブズがこの世を去ったことを考えると、甚だ疑問である。第二は、冒頭の坪内発言からの反発である。この言葉からは、一方的にドコモがメーカーを応援してきたいう驕りが感じられる。説明するまでもなく、ドコモもメーカーから応援を受けている立場でもある。又、日本国やユーザーからもである。そして、ツートップから外れたメーカーは、特に怒りを覚えるだろうし、多くの日本人は恩を忘れたドコモに反発心を抱くだろう。おそらく今後、ツートップから外れたメーカーとその家族、そして反発心を抱いた多くの日本人から、怒りのドコモ解約が急増すると先読みする。
 さて、ツートップには別の負の遺産が存在する。ドコモからはアップル導入の下地均しの長所だが、短所に独占禁止法の疑いが有る。パナソニック、NECからの訴訟も起きかねない状況と読む。当然、訴訟の前に国会でもドコモのツートップが問題になるだろう。そうなれば、ドコモの加藤社長の辞任の虞もある。何れにせよ、ドコモは白戸家の朴李宣伝を堂々と広告していることから、通信トップ企業の威厳も無い。有るのは、焦りと他社の真似だけである。したがって、間違いなくアイフォンを扱えば、一人負けから脱出出来ると考えているのだろう。しかし、ドコモの問題は、アイフォンを発売していないことでなく、オリジナルを創造する心が足りないことに気付くべきであろう。

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